未来へ進むとうほくリポート

Vol.15:森を知ることの大切さ

日本の森林の現状や課題がある中で、森の環境や役割を知ることで、森の視点から環境の大切さについて、株式会社アミタ持続可能経済研究所の汐見さんに伺いました。

日本には国土の68%もの森林があり世界でも有数の森林保有率を誇っているのに どうして森林保全の取り組みが必要なのでしょうか?

日本では森林と山という言葉が同じように使われます。実はこれは日本の特徴を良く表していて、日本の森は険しい山にあることが多いのです。狭い島国で限られた土地しかないため、平野は住む場所であり、身近な食料である農作物を作る場所。森林は開墾しにくい奥地に残されたのです。火山帯に位置する日本は、地形が急峻なため、開墾できずに森林として残された土地が多く、結果、緑豊かな土地が多く残っています。

  • 日本には国土の68%もの森林があり世界でも有数の森林保有率を誇っているのに どうして森林保全の取り組みが必要なのでしょうか?

    豊かな自然に囲まれている南三陸町・入谷地区

里から離れたところにある森林は一見美しく見えますが、中に入ると色々な問題が見えてきます。

例えば今、日本から里山がどんどんなくなっていると言われています。里山とは人里と奥山の中間の地域を指し、薪や炭の生産に向いているナラやカシが生えています。これら広葉樹は若いうちに伐られると切り株から芽が出てきて、また木になります(萌芽更新)。苗を植えなくてもまた木になるので、里山では繰り返し薪が簡単に取れます。このように人が常に若返らせている広葉樹林が里山であり、このような環境でしか生きられない動植物も多くありました。しかし燃料革命が起こり、人が薪を使わなくなり灯油に依存するようになったため、里山の木は高齢化し、萌芽能力を失うだけでなく、若い広葉樹林でしか生きられなかった動植物がいなくなっています。里山の木を伐り、若返らせることも森林保全のひとつなのです。ちなみに昔話でおじいさんが柴刈り行くのも里山です。柴刈りとは薪を取ってくることです。

日本の森林保全の最大の課題は、人工林の管理です。

実は日本の森林の4割はスギ、ヒノキを中心とする人工林です。信じられないかもしれませんが、江戸時代から明治時代にかけて、日本の山には「はげ山」が多かったそうです。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」をみても山には木が生えていない姿が見て取れます。ここに昔の人は1本1本手でスギやヒノキを植えました。第2次世界大戦の際に、大量の木材が必要となり、また日本の山は伐られました。その後、またスギやヒノキが植えられ、現在のような森林ができたのです。歴史を見ると、はげ山が多かった時代には水害や土砂災害も多かったようです。 元々険しい地形で、雨が降ると土が流される場所を、木の葉っぱが守っていたのですが木がなくなってしまい土砂が流れたのです。また緑のダムといわれることもある森林ですが、木の中に水をためることや、水が染み込みやすい土壌を作ることにより、山に降った雨が一気に川に流れることを防いでいたのですが、森林が無くなり、土壌が流されると、山に降った雨は、一気に川に流れていき、下流で水害をもたらしました。
今実は、このはげ山が増えています。人工林が伐られた後に苗が植えられずに放置されている山が全国に多くあるといわれています。近年の材価の低迷により、材の販売収益では苗を購入し、植えて、手入れをする費用がまかなえないためです。一方日本は雨に恵まれた国なので、多くの場所では裸地はそのうち森林になります(森林成立のためには年間500mmから700mm以上の雨が必要だといわれますが、日本は全国平均で年間1600mmほど降ります)。しかし今の日本のはげ山はなかなか自然と森林になりません。大きな阻害要因となっているのは増えすぎたシカです。せっかく出てきた木の芽をシカが食べてしまうのです。このような場所では、シカの対策をしながら苗を植栽することが森林保全です。

  • 日本の森林保全の最大の課題は、人工林の管理です。

    ニホンジカ

 

では、木を伐ることはいけないことなのかというと、実はそうでもありません。人工林の木は畑の作物と同じように、たくさん苗を植えて、良いものだけ残しながら途中で悪いものを間引くことを想定しています。戦後に全国でスギやヒノキの拡大造林がされた森林は現在、50年生や60年生となり、本来は何度も間伐(間引き)がされていなければなりません。しかし1970年代から関税のかからない外材が入ってきたことにより、国産材を扱う日本の林業は衰退の一途をたどってきました。昭和35年に44万人いた林業従事者は、現在では5万人程度しかいません。このことにより、本当は間伐をしなければならないのに放置されている人工林が全国に非常に多くあります。

 

間伐のされなくなった人工林で起こる問題を順に説明すると、まず木が成長するにつれ、隣の木の葉との間隔が狭くなり、そのうち葉と葉が完全にくっつき樹冠閉鎖という状態になります。林内から上を見ると空が全く見えない状態です。こうなると、林内に太陽の光が入らないため、林床に生息するはずの低木や草本植物が枯れてしまいます。むき出しとなった土壌は、雨が降るたびに流され、川を濁らせます。土壌が流れると根っこがむき出しになり、植えられた木も倒れ易くなり、台風などのときにどんどん倒れてしまいます。一度流れてしまった土壌が形成されるためにはまた何百年という時間が必要なため、このような土地は痩せた土地となってしまいます。これを防ぐために、すでに手が入らなくなってしまった人工林で間伐を行うことが森林保全活動となります。

色々な森林保全活動を紹介しましたが、森林保全とは、森林そのものを保全する活動だけではなく、その先には、地球環境保全、生物多様性確保、災害防止、木材利用、森林の持つ文化、レクリエーション機能の保全など様々な意味を持つ大切な活動なのです。

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