災害への備え

【防災ガール連動企画】平成30年7月豪雨の被害と、岡山・広島の「今」から見えたこと(中編)

 一般社団法人防災ガールと防災について考える連動企画。  2018年6月~7月に発生した西日本豪雨被災地。特に被害の大きかった岡山、広島を巡り分かったことを防災ガールが書き連ねます。

前編 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/35/
中編(本編)
後編 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/37/

2.支援活動の変化

2-2.柔軟なテクノロジー活用

 たくさんの団体にお話を聞く中で、印象的だったのが「支援活動の変化」です。
 岡山の倉敷市にある社会福祉協議会(ボランティアセンター)では、ボランティア受付の際にオンラインチケットサービスの「Peatix」を活用し、一日1000人近くのボランティア受け入れを叶えていたといいます。通常、災害時には複数のボランティアセンターがたちあがり、ボランティアの受け入れや派遣をおこないますが、今回は一極集中型でボランティアの受け入れをしていたため、必然的に効率化が求められた結果だったようです。内部にIT関係の担当者を置き、その方の柔軟な対応によって受け入れ体制がぐっと変化したといいます。

  • 2.支援活動の変化

    ICT導入を担当する詩叶 純子さん

テクノロジーの活用

 さらに、テクノロジーの活用として、紙ベースで運用されていたニーズ表をデータ化していくということもおこなっていたそうです。現在、6900件ほどのデータがあり、住所や家庭ごとに見ることも可能なため、「この家は夏場には気をつけてみてあげよう」などと、高齢者やお子さんのいるお家のケアにも繋がったといいます。これらのシステムは、次の災害にもそなえて応用できるよう、継続して開発を進めていく予定だそうです。

  • テクノロジーの活用

    写真2 倉敷市社会福祉協議会の中桐 泰副会長

「避難所」の暮らしから

 同じくこうした「避難所」での暮らしにおいて、やはり課題となってくるのは健康のこと。倉敷市の神原呉服店にてお話をうかがった神原さんは、倉敷出身ではあるものの普段は高知県立大学で教授をされており、ご自身の実家へ帰ってきたタイミングで被災されたということでした。看護学を専門にされている教授であることもあり、発災後まず気になったのが、避難所での「要配慮者」へのケアの不足だったと言います。

「要介護者の周りには支援者がいますが、要配慮者の周りはどうでしょうか。被災したタイミングでは『要配慮』だった人たちが、避難所生活を続ける間に新たに『要医療』『要介護』に悪化しまうケースはとても多いんです。それなのにケアはまだまだ行き届いていないなということを体感しました」

  • 「避難所」の暮らしから

    神原呉服店での高知県立大学 神原 咲子教授(一番左)

いまから手帳

「そんな現状もあって、『いまから手帳』(https://mabi-care.com/information/92) というものを開発しました。被災した当時から避難所生活の間でどんな心身の変化があったのか。どんな手当を受け、どんな薬を処方されたのか。どんな制度を活用できるのか、その時期に必要なことのリマインダー機能も果たしています。必要に応じて情報を取りだせるよう。個人でカルテを管理しているようなものです。発災直後は特に現場も混乱していますし、同じお医者さんに診てもらえるとも限りません。正しい診断とケアをしていくためにも、情報を記録して適切な支援を受けることはとても重要です」

 さらに神原さんは、ボランティアセンターの方とも協力しながら、「まびケア」(https://mabi-care.com/) という情報ポータルサイトも開設されています。水害があった場所では、以前の情報しか載っていない地図やWEBサイトでは情報を拾うことができません。そのため、「この病院が何日から開くそうです」「このスーパーが昨日から再開していました」など、最新の町の情報を口コミ形式でマップ上に記入し反映させていく、自分たちで最新の地図を作っていけるサイトをつくり、災害時から今に至るまで運用を続けてこられているそうです。

  • いまから手帳

    いまから手帳

ママのための支援

 ほかにも、同じく倉敷市でお話をうかがった サンサポートオカヤマのお二人は、「ママ」が平時から使っているLINEグループを活用することで、「リアルなニーズ」をくみとり、支援物資をマッチングさせていくとりくみをされていました。

  • ママのための支援

    左からサンサポートオカヤマの代表 ボウズ満恵さんと岡本 恵さん

支援物資のニーズ

「支援物資の配布は、基本的にそのタイミングで現場にいなければ希望のものを受け取ることは難しいんです。後から行っても、みんなが必要とするようなものは大抵もう残っていない。でも、子どもがいたら子どもの世話が最優先じゃないですか。本当に欲しいものが届かないもどかしさを見て、災害支援の難しさはマッチングにあるんじゃないかと思ったんです」

 大きな声には答えられなくても、個人のニーズには答えることができるんじゃないか。そんな思いで、お二人はLINEを通じて「何が欲しいか」を聞き、ニーズが上がった「本当に必要なもの」の中で手に入るものを個別でお届けする活動を始められたといいます。

「お母さんたちは、自分が本当に欲しいものを口に出すのが後回しになりがちです。子どものため、ご主人のため、おじいちゃんおばあちゃんのためがあって、最後の最後に自分のものがある。私たちも同じだからこそ、「あなた」がほしいものは何?とちゃんと聞いて、ようやく出てきたものを集めて、お渡しするようにしています」

  • 支援物資のニーズ

自立へ

「日常の中に当たり前にあったものを取り戻す作業、自分を取り戻してゼロに戻っていく作業のマッチングをしている」と語るお二人。お母さんはパックやヘアアイロン、お子さんは炭酸ジュースといった、「日常」には当たり前にあったものこそ、復興のフェーズでは届けていく必要があるとお話されていました。一方で、LINEでのやりとりや対面での会話を通し、「そろそろこのお家は自立できるな」と感じると、そうしたお話を伝えることもあるのだそうです。
 支援はあくまで「自立のための支援」であり、コミュニケーションを通して関係性をつくるからこそ、そうした素直なやりとりが実現されているのだろうと感じられました。

  • 自立へ

・民間で作り上げる災害伝承の場

 広島県広島市では、復興交流館モンドラゴンという施設にも足を運びました。「施設」といえど、記念館のような大きな建物ではなく、広島風お好み焼きが味わえる素朴なお店といった風情のある建物です。

 実際、こちらではお好み焼きを味わえるのですが、店内にはあちこちに広島で発生した水害に関する記録や、防災情報の冊子、マップ、動画などが展示されています。
 モンドラゴンは、すべてが「民間の手」によって作られ、維持されている交流館です。お好み焼きを食べながら、人が集い、語らい、そうして自然と災害のことも知って、思い出して、帰っていく。そんな場所でした。

  • ・民間で作り上げる災害伝承の場

    復興交流館モンドラゴン
  • ・民間で作り上げる災害伝承の場

    店内に展示されている災害情報

館長より

「災害のことを展示しているだけでは、きっと足を運ぶにしても一回で終わってしまう。だからこうして、美味しいお好み焼きを食べてもらって、そのついでに災害のことも知ってくれたらそれでいいと思っています」

 お店で働く女性も、みなさん被災された地域のお母さん方だそう。補助金や支援に頼らず、自分たちでしっかりと「災害を伝える場」を運営していく姿には頼もしさを感じました。

3.垣間見えた支援活動の難しさへ続く
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/37/

  • 館長より

    モンドラゴン館長の畠堀 秀春さん

団体紹介

一般社団法人防災ガール
https://bosai-girl.com/

本取材同行者 ※順不同
代表   田中美咲
事務局長 中西須瑞化
防災コピーライター 高階經啓(合同会社LENZ代表)

  • 団体紹介

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