災害への備え

【防災ガール連動企画】平成30年7月豪雨の被害と、岡山・広島の「今」から見えたこと(後編)

 一般社団法人防災ガールと防災について考える連動企画。  2018年6月~7月に発生した西日本豪雨被災地。特に被害の大きかった岡山、広島を巡り分かったことを防災ガールが書き連ねます。

前編 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/35/
中編 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/36/
後編(本編)
-目次- ・平成30年7月豪雨の概要について
・岡山・広島の「今」
・印象的だった3つのこと
  1.独特の「浸水」の被害
  2.支援活動の変化
  3.垣間見えた支援活動の難しさ
・これからのわたしたちがすべきことは、点ではなく線になり面になること

3.垣間見えた支援活動の難しさ

・初動のノウハウが継承されない

 一方で、やはりまだまだ課題も多く残ります。ボランティアセンターに関しては、一番現場が混乱している初動のタイミングは視察もできないため、「本当の最初の部分」を知ることは誰にもできず、ノウハウが蓄積されていかないという課題があります。「用意していたマニュアルがまったく役に立たなかった」「災害は、種類・場所・時間・曜日によってまったく違う。水害が発生したらこうしようというようなマニュアルは意味がない」というようなことも、これまでの災害現場でも繰り返し言われていることで、ここでも同じことの繰り返しが生じてしまっているという課題が垣間見えました。
 ただ、今回お話をうかがった倉敷市の社会福祉協議会では、「自分たちだけでは運用ができない」と潔く判断し、外部から支援にかけつけてくれたNPOやNGOを積極的に受け入れ、一番初めの1ヶ月程度を乗り切ったといいます。適材適所として、ノウハウをもつ「外」の人間に頼る力。そんな「受援力」もまた、災害時に重要な生き抜く力であるのかもしれません。

  •  3.垣間見えた支援活動の難しさ

    倉敷市社会福祉協議会の事務局次長 秋田 展生さん

・支援活動を継続していくむずかしさ

 倉敷市のサンサポートオカヤマでは、支援物資のマッチングのみならず、学校が再開するタイミングで必要になる体操着入れや給食袋などを全国の人たちの手を借りて作り、それぞれのお子さんの年齢や性別にあわせたものをマッチングさせてお届けするという「ハンドメイドプロジェクト」なども開催されています。
 アグレッシブに活動される団体ですが、やはり課題となるのが「継続」していくむずかしさ。寄付だけではなかなか持続していかず、ノウハウや関係性ができた頃に「活動の継続」という課題を抱えるチームはとても多いのが実情です。
 どのように事業化していくのか、あるいは補助金や助成金を獲得するのか……。支援をおこなう側にもこうした難しさが常につきまとっているということを今回も肌身で感じ、やはり「防災」や「災害支援」を健全な事業として継続させていくための仕組みやノウハウが日本にはもっと必要なのだと痛感しました。

  • ・支援活動を継続していくむずかしさ

    ハンドメイドプロジェクトの様子

・ボランティアマッチングの課題

 広島でお話をうかがったコミサポひろしまさんは、重機を扱い、土砂に埋もれた家を「残しながら」復旧していくための活動をされていました。

「壊すのは簡単やけど、こんなに立派な家、できれば残したいよなぁと思って」

 この日泥の掻き出しを行なっていたエリアは、他の地区と違い粘土質な土が流れ込んでいたため、作業の難しい現場のようでした。
 重機を扱うこうした現場での活動は、体力も精神力も必要となり、人手が増えるのはありがたいものの、ボランティアの方の指導まではなかなか手が回らないということもあるそうです。コミサポひろしまさんも複数の災害現場で活動をされてきた中で、「重機を扱える人」としてボランティアに来てくれた方が実際は重機の操作に不安があり、現場では活かせずに困ってしまったということもあったとうかがいました。

 また、倉敷市のボランティアセンターで開かれていた支援者の集会でも、「こういったボランティアさんが欲しい」というニーズに対し、「それはボランティアでは対応できない現場だから……」といったやりとりがなされていたり、マッチングの難しさというものも生まれていることが垣間見えました。

  • ・ボランティアマッチングの課題

    コミサポひろしま代表 小玉 幸浩さん

写真

  • 写真

    重機を使い、泥の掻き出しを行う現場(広島県呉市)

これからのわたしたちがすべきことは、 点ではなく線になり面になること

 今回、平成30年7月豪雨の被害をはじめて目の当たりにして、これからの防災や災害支援にとって、一体何が必要なんだろうと考えることになりました。阪神・淡路大震災から、東日本大震災、熊本地震、その他たくさんの災害を経て、確かに迅速な対応が可能になっていたり、テクノロジーを使った支援のシステムが生まれていたり、進化し、発展し、良い方向へ変化していることはたくさんあります。「防災」にデザインをとりいれたり、自分たちの強みをいかして楽しみながら活動をしていたりする団体も増えました。
 ただ、やはりどうしても、「同じことの繰り返し」から抜け出し切れない壁のようなものを感じる部分もあります。

 初日、岡山県倉敷市でお会いした小野さん(岡山県備中県民局 農林水産事業部 農地農村計画課 副参事)は、東日本大震災の頃に岩手、宮城、福島での復興支援活動に公私ともに従事され、災害というものに長く向き合ってこられました。だからこそ、今回の豪雨災害以降も地元である倉敷市で多くの企画をたちあげ、映画や落語といったエンターテイメントの力も借りながら、防災の啓蒙活動や、避難所生活や仮設住宅での暮らしが続く人たちに向けた心のケアの活動にも励まれています。

  • これからのわたしたちがすべきことは、 点ではなく線になり面になること

    岡山県備中県民局 小野さんが実施されてきた活動①
  • これからのわたしたちがすべきことは、 点ではなく線になり面になること

    岡山県備中県民局 小野さんが実施されてきた活動②

晴れの国おかやま

「岡山県は、『晴れの国おかやま』というだけあって、中国山脈と四国山脈に守られ、年間の降水量も少ない地域です。近年は地震もほとんどなく、岡山は災害が少ない県だという認識がなんとなく広まっていたからか、県民の防災意識は低いのが現状じゃないかと思います。今回の豪雨の被害も、ほとんどの人にとっては『まさか』の出来事だったんじゃないかなぁと思うんです」

 大きな被害を受けた県内でさえ、防災意識が向上したかといわれると疑問が浮かぶと語ってくださった小野さん。災害を体験もせず、情報も届かなくなってきた「県外」の人たちにとっては尚のこと、遠い話となってしまうのも無理はないのかもしれませんが、これもまた、日本のあちこちで繰り返されている「課題」のひとつです。

  • 晴れの国おかやま

    岡山県倉敷市真備地区 決壊した川付近にて

これからの災害に向けて

 この記事でピックアップした課題は、今回の災害や岡山・広島という地域に関係なく、どんな災害・復興の現場でも生じている普遍的な課題だと思います。
 今回お話をうかがった先は、はからずも女性が多く活躍されていたり、みなさん前向きで、アグレッシブで、とても活発な気風を感じることができるところばかりでした。だからこそ、それぞれが「点」で動いてしまうことが本当にもったいないとも感じることとなりました。
 日本は災害大国です。地震のみならず、津波も、台風も、豪雨による河川の氾濫も、多くの災害が発生します。きっと、それはこの先も変わりません。日本に暮らし、地球上に生き続ける限り、自然災害は全員につきまとう課題です。
 それならば、わたしたちがするべきことはただひとつしかありません。
 まずは全員が自分の頭で考え、決断し、行動できる生き抜く力のある人間になること。それから、それぞれが点で活動するのではなく、より良い未来をつくっていくために手をつなぎ、知見を継承し、柔軟にしなやかに変化を続けながら、線になり、面となって、自然災害という困った相手と上手に付き合っていく方法を見出していくことです。
 
 平成30年7月豪雨の被害を受けて、まだまだ復興のために尽力されている方がいます。被害がどのようなものだったのか、そして現場ではどのようなことが起こっているのか、少しでもお伝えできる記事となっていれば嬉しいです。

 お忙しい中、明るく、前向きに、お話をしてくださったみなさま、本当にありがとうございました。


平成30年7月豪雨についてもっと知りたい方はこちら
(2月22日公開予定)

  • これからの災害に向けて

<ご協力くださった団体様一覧>(順不同・敬称略)

docomo岡山支店
倉敷市社会福祉協議会(http://kurashikisyakyo.or.jp/
サンサポートオカヤマ(https://www.sunsupportokayama.org/
神原呉服店(https://peraichi.com/landing_pages/view/kanbara-go-huku-ten
コミサポひろしま(http://comsup.saloon.jp/
復興交流館モンドラゴン(https://sth20140824.jimdo.com/

団体紹介

一般社団法人防災ガール
https://bosai-girl.com/

本取材同行者 ※順不同
代表   田中美咲
事務局長 中西須瑞化
防災コピーライター 高階經啓(合同会社LENZ代表)

  • 団体紹介

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