災害への備え

【防災ガール連動企画】平成30年7月豪雨NTTドコモの対応〜岡山支店奮戦記(前編)〜

一般社団法人防災ガールと防災について考える連動企画。 通信インフラを担うドコモの災害時はどのような対応をしているのか。平成30年7月豪雨時の岡山支店での対応を現地編に続きレポートします。

気象庁命名の「平成30年7月豪雨」には地域名が入っていません。これは被害の範囲が、西日本を中心に北海道や中部地方など広範囲となったためです。一方で「西日本豪雨」という通称が並行して使われているように、被害は西日本に集中しました。死者(224 人)・行方不明者(8人)※1のうち大多数が、広島県(114人)、岡山県(64人)、愛媛県(27人)の3県に集中していることからも、この地域の被害の深刻さがわかります。
※1 2018年11月6日現在 消防庁まとめ

NTTドコモの通信設備も被害を免れることができませんでした。設備の水没等による通信障害が発生し、多くの利用者の皆さんが一時的に使えない状態となってしまいました。その時何が起き、どう対応したのでしょうか。災害発生から通信の回復、避難所の支援と対応にあたったドコモCS中国岡山支店を訪ねました。企画総務部門・渡辺敬志担当部長、藤川広平担当課長、ネットワーク部門・曽田宏昭担当部長、藤田裕輝担当課長が当時の様子を振り返ります。

目次
【1】岡山県での被害状況
【2】岡山支店の対応
(i)通信施設の被害と回復
(ii)避難所支援
(iii)ボランティア支援
【3】平成30年7月豪雨を受けて
【4】被災者支援の現場で

前編(本篇)
後編 http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/40/
関連記事はこちら↓ 【防災ガール連動企画】平成30年7月豪雨の被害と、岡山・広島の「今」から見えたこと http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/35/

【1】岡山県での被害状況

そもそも岡山県ではどんな被害が起きていたのでしょうか。平成30年7月豪雨は「100年に1回の非常事態」と言われていますが、岡山県内においても死者61名、行方不明3名という大災害となりました。とりわけ倉敷市真備町だけで死者51名、そのほとんどが水死者という痛ましい犠牲を出しました※2。1日雨量は県内25観測地点のうち7地点で観測史上最大を記録しました。
※2 2018年12月5日現在(岡山県危機管理課発表)

 被害は真備地区の浸水だけでなく、倉敷市内の別な地区では土石流や山崩れ、土砂災害などが発生しており、岡山県北部など各地で堤防の決壊や災害があり、県内20市町村で延べ約5万1200戸が停電しました。また岡山県内のJR在来線は7月5日以降、最大で全10路線が運休し、順次開通して9月頭までかかりました。一方で、7月8日の日曜日から運転再開をした山陽新幹線で通勤をしている人は支障なかったというエピソードもあります。

「5日ごろから激しい雨がずっと降り続いていて6日にはどんどんひどくなってきました。緊急速報のエリアメールがひっきりなしに鳴りっぱなしで麻痺してしまうような感じがしました。夜も土砂降りのままで、岡山市内にいても雨音はこわいくらいでした」(企画総務部門・藤川課長)

 真備地区では小田川とその3つの支流計8カ所が決壊して洪水となり、みるみる一帯が冠水し、真備地区の3割(1200ヘクタール)が水没していきました。雨が去った後も水がなかなか引かないという状況が続き、9日になってようやく少し水が引き始めました。避難所の開設は丸5ヶ月以上に及び、12月11日取材時点で2箇所3世帯10名が残っていました。年内にようやく解散となりましたが、仮設住宅やみなし仮設での生活を続け自宅に戻れない人が数多くいます。

山陽新聞(本社・岡山市)「※https://c.sanyonews.jp/gou_graph/

  • 【1】岡山県での被害状況

    山陽新聞(本社・岡山市)「さんデジ(山陽新聞digital)」内「西日本豪雨特集」を元に災害を振り返る。

【2】岡山支店の対応
(i)通信施設の被害と回復

 災害発生前日の6日から停電・断水が始まり、避難所の開設が行われました。基地局の停波(サービス中断)は7日早朝あたりから発生しました。停波の原因はいろいろありえますが、そのうち停電に伴う停波に関しては予備電力が動いている間は発生しません。このため8日あたりにピークを迎え、岡山県では最大33局が停波となりました。ちなみに設備水没が障害の原因となった真備町での停波は5局です。このことからも岡山県各地で広範囲に災害が発生していたことがわかります。岡山支店ネットワーク部門の人はこれらの災害の状況をどのように把握していたのでしょうか。

「全ての基地局は常に監視されていて、停電やサービス中断が起きると、遠隔でわかるようになっています。7月6日のうちに少しずつサービス中断が発生していることがわかっていました。7月7日にメンバーが集まり、雨の小康状態を待って何班かつくって真備をはじめ、津山など各地の現地確認に向かい、現地で写真を撮って送り、対応を検討しました。7日はところどころで道路が寸断していたのですが、自治体にはまだそういった情報が届いていなかったこともあり、現地にたどり着くのに5〜6時間かかるなど現状確認もままならない状況でした。8日になっても一部の地域では未だ道路が川のような状態が続いていました」(ネットワーク部門・曽田部長)

  • 【2】岡山支店の対応<br>(i)通信施設の被害と回復

    水没した真備町。7月8日撮影

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今回の災害は、7月7日が土曜日、8日が日曜日と社員の多くが出勤しない週末の災害だったことも特徴のようです。

「通常、中国地域について、土・日・夜間は大阪のドコモCS関西 西日本オペレーションセンタでネットワークの遠隔監視をしています。今回は事前に相当数の被害が予測されていたので、中国側でも遠隔監視をし、臨機対応できる体制をつくっていました。5日くらいからずっと雨が降っていて、6日も夜までサービス中断こそ起きていませんでしたが、テレビで九州や京都の河川が危険水域に達する様子を見て不安に感じながら、いざという時に備えていました」(ネットワーク部門・曽田部長)

「監視をしながら、続々と停波する状況を見ていたみなさんは大変な思いをしたのではないですか」と尋ねると「すべきことは決まっていますので、焦ることはなく淡々と冷静にやるべきことをやっていました」(ネットワーク部門・藤田課長)と落ち着いた返事をいただきました。

「NTTドコモでは災害の規模に応じた非常態勢が決まっています。6日には中国支社に情報連絡室が設置され、岡山支店にも同時に災害対策室を立ち上げました。7日土曜日には社員の数は限られていたものの、駆けつけたメンバーで状況把握につとめました。ネットワークの遠隔監視で基地局が停波したことまではわかりますが、現地の状況は現地でなければわかりません。ただちに岡山県庁、倉敷市役所に人を派遣・常駐させ(以下「リエゾン」)、迅速な情報収集に努めました。リエゾンには日頃から各自治体の危機管理担当と連絡を取り合う法人営業担当が当たりました。並行して、設備の復旧作業にもとりかかりました。」(企画総務部門・藤川課長)

一口メモ:
 県庁・市役所への人員の派遣は「リエゾン」と呼ばれていました。調べてみると「リエゾン」とはフランス語で「関係」「連絡」の意味。ビジネス・政治・軍事などにおいて「リエゾン・オフィサー(連絡将校)」のように用いられ、取次ぎ係、連絡員を表します。国土交通省が「災害対策現地情報連絡員」の愛称に「リエゾン」を用いているように、事故・災害対応において対応に当たる関係機関の連絡・調整窓口を示す言葉として使われています。

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岡山県はこれまで大きな災害がないとされていたため、自治体も経験が乏しく対応についても混乱しており、まとまった情報がなく情報収集に苦労しました。真備町の避難所で携帯電話が使えず連絡が取れない状況になっているという第一報は、リエゾンでもなくテレビでもなく、ドコモショップから入りました。避難所の人が真備町と隣接する総社市のドコモショップに駆け込んだおかげでわかったのです。これがきっかけで真備町への支援が動き出しました。

一口メモ:
 NTTドコモでは、2018年の相次ぐ災害を受けて、18・19年度の2年間で200億円設備投資して、「広域・長時間停電への備え」「重要通信の確保・信頼性向上」「通信サービスの早期復旧」「被災地支援強化」の4領域に関して災害対策を追加で実施する方針を発表しました。例えば、ドコモショップへの蓄電池や太陽光発電システムなどを設置し、停電していても2日間無料充電サービスを提供できる蓄電池を、2018年度内に全店舗に設置するそうです。覚えておきたい情報ですね。


 支援に駆けつけたと言っても、当初は道路があちこちで寸断している状況だったため、現地にたどり着くのも困難でした。現地に行くとNTTドコモの設備が設置された建物が水没していることがわかりました。高さ4m程度の建物がほぼ全て水没したことで、建物内に泥や水が浸入し、それが原因で電気を使う設備は使用不能な状態に陥っていました。また、NTTドコモの基地局でも水に浸かった場所があり、最終的には全ての設備を一新しましたが、お客様のサービス回復を優先させるため、一時的に使える設備は使いながら急場をしのいだ時期もありました。

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    水没した施設や基地局
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    NTT真備の設備

(ii)避難所支援

通信施設の回復への対応と並行して、避難所支援も開始しました。

「私どもも、避難所へ避難されている方への支援を行うため、ビブスを着て、班を作って現地に向かい、延べ23カ所の避難所に無料充電サービス(マルチチャージャー)や、無料のWi-Fi、衛星携帯電話などを設置しました。また、社会福祉協議会等からの要請を受けて、ボランティア活動への支援も行いました。」(企画総務部門・渡辺部長)

  • (ii)避難所支援

    班毎にどこの避難所へ届けるか意識合わせをするdocomo災害復旧STAFF

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マルチチャージャーとは、様々なタイプの機種の携帯電話端末に対応し、同時に18口チャージできる充電器、ドコモに限らず他社の携帯電話でもキャリアを超えて充電できるものです。大きな避難所では複数設置し、中でもクーラーの効く教室を避難所に利用していた岡田小学校では各教室単位で設置したケースもありました。

無料Wi-Fiもドコモに限らず他のキャリアでもパソコンでもご利用いただけるものです。またWi-Fiだけでなく、期間を決めてドコモユーザーのみなさんの通信料金を無料にするなど料金面での支援も実施しました。

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    避難所に設置した無料充電コーナー
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    避難所の学校の教室に設置された無料Wi-Fi

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 衛星携帯電話は、衛星に電波を飛ばして通信するタイプの携帯電話で、山間部や海など通信網がない場所でも通話や通信が可能になります。災害などの非常時に基地局が使えなくなった場合にも活躍します。今回の災害直後、一部地域でドコモの基地局が使えなくなった時期に、衛星携帯電話の電話番号が連絡先の代表として周知されるようなケースもありました。

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    設置された衛星携帯電話
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    被災した通信設備や避難所の場所を示したマップ

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 マルチチャージャーも無料Wi-Fiも支店では5個ずつしかストックがなかったため、ただちに中国支社(広島)から取り寄せました。また、全国の協力も仰ぎました。宅配便が使える状況ではなかったので、ヘリで広島に届いたものを岡山まで新幹線で運んだケースもあります。東京から新幹線で運び、いったん岡山駅で降りて必要な個数を引き渡し、さらに乗り継いで被災していた広島まで残りを持って行くなど、まさに全国で協力しながら人海戦術で当たりました。本業とは関係ありませんが、在庫のあったウェットティッシュやうちわなども提供しました。

一口メモ:
<NTT ドコモ>の支援
○避難所支援
・マルチチャージャー:55 箇所 101 台(広島県 25 箇所 29 台、岡山県 20 箇所 62
台、愛媛県 10 箇所 10 台)
・Wi-Fi:49 箇所 93 台(広島県 22 箇所 28 台、岡山県 17 箇所 55 台、愛媛県 10
箇所 10 台)
○携帯電話等貸出状況
・携帯電話:82 機関 1626 台
・衛星携帯電話:29 機関 83 台
・データ端末等:32 機関 379 台
(参考:内閣府「平成30年7月豪雨第31報」2018年10月9日発布)
http://www.bousai.go.jp/updates/h30typhoon7/pdf/301009_1700_h30typhoon7_01.pdf


(iii)ボランティア支援へ続く(25日公開予定)

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    全国から集められ各避難所に分散して設置されたマルチチャージャーや無料Wi-Fi
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    ウェットティッシュやうちわ

団体紹介

一般社団法人防災ガール
https://bosai-girl.com/

本取材同行者 ※順不同
代表   田中美咲
事務局長 中西須瑞化
防災コピーライター 高階經啓(合同会社LENZ代表)

  • 団体紹介

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