災害への備え

和歌山県・広川町の津波防災の取り組み(前編):過去の逸話から生まれた施設で身を守る方法を学ぶ

165年前の津波にまつわる伝説の町として、世界中の防災関係者に知られる和歌山県の広川町。町にはゲームや映画などを通じて、先人たちの偉業や精神、津波防災の大切さを楽しく学べる「稲むらの火の館」という施設があります。

<稲むらの火の館 概要>
住所:和歌山県有田郡広川町広671
(アクセス:JRきのくに線「湯浅」下車、徒歩約15分/湯浅御坊道路「広川IC」から、北西へ約10分)
開館時間:午前10時〜午後5時(⼊館時間は午後4時まで)
休館⽇:毎週⽉曜⽇(祝⽇の場合はその翌平日/11⽉5⽇世界津波の⽇は開館)・年末年始(12⽉29⽇〜1⽉4⽇)
入館料(※):一般…500円(20名以上の団体は割引有。要事前申請)/高校生…200円/小・中学生…100円
※濱口梧陵記念館の入館は無料

﨑山光一館長のインタビューはこちら↓↓↓
▼和歌山県・広川町の津波防災の取り組み(後編):町の功労者の生きざまをなぞりながら津波と向き合う
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/disaster/detail/43/
※釜石市”いのちをつなぐ未来館”に展示している「津波の仕組み学習システム」も稲村火の館の「津波シュミレーション」を参考にさせて頂いております。
▼”「いのちをつなぐ未来館(釜石市)」へ展示「津波の仕組み学習システム」デモ動画”
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/action/detail/173/

稲むらの火の館のホームページ↓↓↓

詳しくはこちら

夕暮れの大津波から村民を救った逸話が残る町
当時の功績を称えてつくられた2つの施設

新大阪から特急でおよそ1時間40分。和歌山市から少し南下したところに、広川町という海沿いの小さな町があります。ここには、地震や津波などの災害から、命や暮らしを守るための知識を体験を通じて学べる施設があります。それが、「稲むらの火の館」です。

施設は2007年にオープン。「稲むらの火」とは広川町に長く伝わる逸話です。江戸時代末期に起こった安政の大地震の際、地元出身の豪商、濱口梧陵(1820-1885)は田んぼに集められた稲むら(稲束やすすきを積み重ねたもの。家の屋根や草履の材料に使われた)に火をつけて道標にし、夕闇の中でパニック状態の村人たちを高台に誘導しました。梧陵はその後も復興に尽力し、村人たちの暮らしを支えたとされています。

施設は梧陵の功績を称えてつくられたもので、「濱口梧陵記念館」と「津波防災教育センター」の2館で構成されています。記念館の入口で靴を履き替え、さっそく施設の中へ。梧陵の像を拝みながら、まずは津波防災教育センターに向かいます。

  • 夕暮れの大津波から村民を救った逸話が残る町</br>当時の功績を称えてつくられた2つの施設

    濱口梧陵記念館にある梧陵の銅像

来場者の目を引く、20mのロング水槽
シミュレーションで津波の威力を実感

コンクリート打ちっぱなしの壁と高い天井で、現代的なつくりの津波防災教育センター。入口では人型ロボットのPepperが、あいさつ代わりの防災クイズで迎えてくれます。

フロアを歩いてまず目に飛び込んでくるのが、長さ20mほどの大きな水槽。「津波シミュレーション」という、津波の様子を再現する装置です。操作パネルには複数のボタンがあり、「ふつうの波」ボタンを押すと水が小さくうねりはじめます。波長の小さい波が水槽の手前にある岸にたどりつくと、水の進む方向とは逆向きの波が起こり、互いに波を打ち消し合っているのが分かります。

ところが「津波」ではどうでしょう。波の波長が大きく、岸ではその力を受け止めきれません。大きな波は容赦なく、岸の手前にある家や人や車などのミニチュアを飲み込んでいきました。

シミュレーションでありながら、その迫力に驚愕。津波の威力は相当なものです。

  • 来場者の目を引く、20mのロング水槽</br>シミュレーションで津波の威力を実感

    威力も再現される津波シミュレーション

人も建物もすっぽりと飲み込まれる!
レーザービームが示す津波の高さに圧巻

津波シミュレーションの後ろの壁には、天井に向かって1mごとに目盛りがついています。「津波高レーザー光」で、津波の高さを体感するためのものです。操作パネルのボタンを押すと、広川町に襲来するとされる津波の高さがレーザーで壁に映し出されます。

試しに「南海トラフ巨大地震」のボタンを押してみました。すると最初は4mほどだった波がみるみると勢いを増し、9m近くある天井を越える波の形状が表れました。見上げるほど高さの波が押し寄せる姿を想像するには、十分過ぎるものでした。

また、「津波シミュレーション」「津波高レーザー光」の脇には、津波の起こるしくみや威力を紹介した動画が用意されており、知識を補えるようになっています。

  • 人も建物もすっぽりと飲み込まれる!</br>レーザービームが示す津波の高さに圧巻

    津波を再現したレーザー光

地震発生から避難所生活まで「どう過ごすか」
自身の身を守る方法をゲームで学べる

津波の迫力を体感した後、知りたくなるのは“津波から身を守る方法”です。津波シミュレーションのすぐ隣にある「防災体験室」では、地震発生から避難所での過ごし方、日ごろの備えまでを時系列別にポイントを整理。壁面のパネルや動画を見ながら学べます。

動画はドラマ仕立てになっており、災害時に直面するシチュエーションをリアルに再現。避難時に気を付けること、避難所での過ごし方や地域との連携など、最新の情報をもとに“何をすべきか”が具体的に紹介されています。ほかにも、過去に大地震や津波を経験した人たちの体験談や、和歌山県内の各地域を3Dで確認できるハザードマップなど、いろいろな角度から理解を深めることができます。

そして、救出ゲーム「INAMURAレンジャー」では、応急、復旧、予防のステージごとに防災知識を確認することができます。入口で渡されるIDカードをリーダーにかざしたら、クイズがスタート。子ども向けかと思いきや、大人でも勉強しないと分からない問題もあり、本格的な内容です。最後までチャレンジすると、結果に応じた内容の修了証が発行されます。

  • 地震発生から避難所生活まで「どう過ごすか」</br>自身の身を守る方法をゲームで学べる

    防災体験室のパネル展示

実話を元につくられた迫力ある3D映像
自分事として避難の重要性を感じる

1階のいちばん奥に構えるのは、「3D津波映像シアター」です。最新の設備を備え、2本のオリジナル作品を上映しています。入口で3D眼鏡を受け取ったら上映開始。両方とも実写版で、実際のエピソードを元につくられているため現実感があり、年齢を問わず引き込まれる内容です。

現在上映されている『その日、命を守るために』は、「釜石の出来事」が題材。東日本大地震の際、岩手県釜石市に住む3000人近くの小中学生のほとんどが、迅速な行動と的確な判断により津波で命を落とさずに済んだことは当時話題となりました。

本編のドラマではある一家が地震や津波に備える姿が描かれ、「いのちてんでんこ」の精神が伝わる内容となっています。もう1本の作品は、『ドラマ「稲むらの火」』。濱口梧陵の活躍と稲むらの火を再現した時代劇です。

3Dだけに迫力がありますが、一般のアトラクションとは異なり、驚かそうという趣旨のものではありません。とはいえ、地震によって地響きが起こるシーンでは、座席にも「ゴォー」という音が轟いてなかなかの臨場感。どちらの作品もクオリティーが高く、思わず見入ってしまいます。

  • 実話を元につくられた迫力ある3D映像</br>自分事として避難の重要性を感じる

    3D津波映像シアターのホール

地震・津波の歴史や海外との提携コーナーも
いろんな観点から津波防災を知る

2階や3階は1階とはまた違った趣で、津波について学べます。

2階にある「稲むらの火展示室」では、濱口梧陵の功績を中心に、広川町や周辺地域の地震・津波の歴史などのパネルが充実。どのようにして広川町に防災の意識が根づいていったかをたどることができます。

吹き抜けを通る渡り廊下は「継承の道」とされ、床面は1600年以降の地震や津波にまつわる出来事が刻まれた年表になっています。

継承の道を渡り切った先には「アチェ津波博物館コーナー」が。インドネシアにあるアチェ津波博物館と稲むら火の館とは、2016年より提携関係にあります。津波による甚大な被害で、23万人以上の死者を出したとされる2004年のスマトラ島沖地震。インドネシアも津波とは無縁ではないのです。

3階には2015年に制定された「世界津波の日」の展示コーナーが設けられています。世界津波の日である11月5日は、「稲むらの火」の逸話が生まれた安政の地震による大津波が起こった日に由来しており、広川町とは切っても切れない関係にあります。

  • 地震・津波の歴史や海外との提携コーナーも</br>いろんな観点から津波防災を知る

    2階ある稲むらの火展示室

広川町の津波防災の立役者、濱口梧陵
彼の熱心な生きざまを生家で味わえる

津波防災教育センターを後にし、入場口のある「濱口梧陵記念館」に戻ってきました。生前、政治活動に勤しみ、勝海舟や佐久間象山ら幕末の偉人とも親交の深かった梧陵。明治時代には友人たちと私塾を開くなど教育にも熱心で、広川町で梧陵は英雄的存在です。彼の生い立ちや功績にまつわる史料が多く展示されています。

建物は梧陵の生家でもあります。3Dシアターや稲むらの火展示室で梧陵の活躍に触れた直後のせいか、時を越えて梧陵と同じ空間を共にできることが、とても不思議な感覚でした。
津波防災について体験やクイズなどの遊びを通じて学べる、充実した内容の「稲むら火の館」。今回紹介したコーナーのほか、地元の小学生による学習資料やポスターなども掲示されており、先端技術と手づくり感が絶妙なバランスです。コンパクトでありながらワクワクするしかけが多く、半日過ごしても飽きずに楽しめます。
一度訪れたら誰かに勧めたくなる、充実の防災学習施設です。

  • 広川町の津波防災の立役者、濱口梧陵</br>彼の熱心な生きざまを生家で味わえる

    濱口梧陵記念館の展示スペース
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