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石村工業株式会社

鉄の町で生まれた 環境にも心にもやさしい薪ストーブ

石村工業株式会社

「鉄の街」として知られている釜石で機械製造業を営む石村工業株式会社。港などで活躍するグラブバケットなどの大型の工業機械、ワカメなどに関わる水産加工機械に加えて、鉄製の薪ストーブの製造という3本柱で事業を展開しています。中でも電気を使わないペレット・薪兼用ストーブの「クラフトマン」は環境にやさしいだけでなく、私たちの生活にゆったりとした時間を届けてくれる、ナチュラルで豊かな暮らしを実現する商品です。

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高炉の停止がターニングポイント

石村工業株式会社が創業した1959年(昭和34年)当時、釜石には新日鉄の製鉄所があり、鉄の町として栄えていました。確かな技術力をもとにオリジナル商品を意欲的に開発している二代目社長の石村眞一さんに、事業を通じて地域に貢献する想いを聞きました。

石村さんのお父様が製鉄関連の企業から独立して石村工業を興すと、すぐに途切れることなく仕事が入り、業績は順調を極めたそうです。ところが、1989年(平成元年)に製鉄所の高炉が止まると状況は一変。製鉄所からの仕事がゼロになりました。とにかくどんな仕事でも……と、部品作りの下請けなどで日々をしのいだといいます。しかし、発注を待つだけの仕事では、努力ではどうにもならない理由で売上が左右されることも多かったのです。

「事業を続けていくためにも、下請け以外の仕事が必須という思いで自社商品の開発に取り組んではいたのですが、なかなかいいジャンルが見つからずにいました」。今だからこそ、石村さんは苦しかった時期を穏やかに振り返ります。

石村工業で新商品の開発や販売の陣頭指揮を執る石村眞一社長。

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「売りたい!」と思った薪ストーブとの出会い

暗中模索が続く中、2003年(平成15年)から薪ストーブの製造を開始。交流センターの知り合いから「これからは再生可能エネルギーである木の時代だ」と聞いたことがきっかけでした。自社商品開発のヒントとなる情報に常にアンテナを立てていた石村さんだからこそ、薪ストーブの可能性を感じとれたのでしょう。

「二酸化炭素を吸って育った木は、燃やして二酸化炭素を排出してもプラスマイナスゼロ。一方、化石燃料である石油は、何万年もかかってできたものを一気に燃やすので、二酸化炭素の排出量はオーバーしてしまう。同じ燃やすでも、環境への影響がまったく違うことを知ってもらいたいです」。

こうして生まれたの「クラフトマン」は、まず薪ストーブとしてスタートし、やがてアメリカやヨーロッパで普及しているペレットも活用できるストーブへと発展しました。ペレットとは間伐材や製材所の「おが粉」に圧力をかけて固めた直径6mm、長さ3cm程度の木質燃料で、燃焼力の調整が簡単なことが特徴です。

完成し、出荷を待つ「クラフトマン」。扉は南部鉄器です。

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改良のたびに作った立体模型がずらりと並ぶ

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小さな工場からでも、地球環境へのこだわりを発信

「クラフトマン」の特徴である下向きの腕のような部分は、空気がすーっと入るための必然的なデザインです。機能面の設計は石村工業、デザインは岩手県工業技術センターのデザイン担当者と二人三脚で考えました。また、「電気を使わず、ファンもつけないこと」にもこだわりました。
「ペレットストーブを作っている会社はほかにもあるのですが、どれも電気を使う強制排気システム。電気を使わなくてもうまく燃やすにはどうすればいいかを考えて、改良を重ねました」。

「環境にやさしいストーブに電気を使いたくなかった」とこだわりを語る石村さん。ストーブ開発は燃焼のシステム開発でもあり、誰にでも扱いやすい構造を作るのがとても難しいそう。煙突から煙が見えない「クラフトマン」は、完全にガス化して最も効率よく燃焼する構造にたどり着きました。これが石村さんの目指す「環境にやさしいストーブ」なんですね。機能が自慢の「クラフトマン」ですが、実はその扉は南部鉄器製。お客様には魅力の素材です。

ペレットは端材や間伐材から作り、燃焼の調整がしやすい自然派の木質燃料、(右)クラフトマンの扉は南部鉄製

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薪ストーブがもつ心を癒やす力

最近、薪ストーブの人気がますます高まっていますが、その理由はちょっと変わってきました。「リタイアしたらログハウスで薪ストーブを囲んで……」というナチュラルライフの広がりで、「クラフトマン」を購入する人が増えているのだそうです。
「炎の回りには自然と家族が集まるんですよ。そこでゆっくりと流れる時間が大切なんです」。

「クラフトマン」では料理もできるのですが、さすがの石村さんも、薪ストーブ=暖房器具だと考えていたので、最初はそこまで考えていませんでした。ところが、展示会でお客様に「お湯が沸かせないストーブなんて」と言われ、目からうろこが落ちる思いだったと笑います。早速改良したら、おまけのようにデザインもよくなったと話します。

「燃焼室にダッチオーブンが入れられるので、時間をかけることでおいしくなる料理をじっくりと作ることができます。灰出しの引き出しは普段は使わないので、ここにパンを入れて温めると焼き立てみたいになるんです。このストーブで作った料理でお孫さんの好き嫌いがなくなったというお手紙をもらったこともあるんです」。
「クラフトマン」が生活にとけこんで使われている、と石村さんはうれしそうな表情を見せてくれました。

置いてあるだけで美しく、火を入れると炎のゆらぎに癒されることから、飲食店などでも愛用されている(岩手県盛岡市 mi cafe)

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クラフトマンの魅力のひとつが料理に活用できること。灰出しの引き出しでパンを温めたり、ダッチオーブンを入れて煮込みなども

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「電気を使わないストーブ」の真価

石村工業では、震災で3つの工場のうち1つが全壊、あとの2つも鉄骨しか残りませんでした。しかし幸いにもすぐに設備の手配ができたことや、全国の薪ストーブファンが心配して注文をくれたこともあり、2カ月後には工場の修理をしながら製造を再開できました。

「作る物があるから仕事ができる。下請けの仕事だけだったらこんなに早く再建できなかったと思います」。
苦しい時期に歯を食いしばって自社商品開発にこだわったことは、間違いではなかった――そんなことを再確認する出来事でもありました。

震災であらゆるインフラが止まったとき、「クラフトマン」はあちこちで活躍しました。「クラフトマン」のおかげで多くの人が暖をとって煮炊きをし、寒い夜をのりきれたという逸話も。電気に頼らないストーブの真価が発揮されたエピソードです。今では、静岡県の防災センターにも展示されている「クラフトマン」ですが、防災は二次的なメリットだという石村さん。
「炎が生活を豊かにする力こそ、知って欲しいことなんです。私も被災し、真っ暗な中、小さなロウソクの炎がどんなにありがたかったか。昔ながらの石油ストーブもずいぶん役に立ったそうですよ」。
だからこそ「クラフトマン」を作り続けたい、道具としてだけでなく、生活を豊かにするための存在になってほしいと石村さんは願っています。

石村工業の暖房はもちろん「クラフトマン」。火が入っていないときでも完成された美しさがある

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もうひとつのヒット商品、三陸を支える「しおまる」

石村工業のユニークな商品の中でもうひとつヒットしているのが、ワカメの攪拌塩蔵機「しおまる」です。当初は、寒い海でのワカメの収穫を自動化しようと開発を始めたのですが、ワカメを塩漬けにする作業も時間のかかる重労働なので、これも何とかならないかと……水産技術センターと共同開発にチャレンジしました。

「しおまる」の構造は、洗濯機からヒントを得たというから驚きです。
「ぐるぐる回る洗濯機を見ていて思いつき、試しに飽和食塩水にワカメを入れて攪拌すると、1時間ほどでしっかり塩が入り、均一な塩漬け状態になったんです」
石村さんの目のつけどころはさすがです。

「新聞で取り上げられてあっという間に500台以上普及しました。漁師さんにほめられてうれしかった」と笑いますが、文部科学大臣から科学技術賞、特許庁長官奨励賞をダブルで受賞したすごい発明で「三陸のワカメの半分以上はしおまる製」というくらい地元の必需品になっています。

文部科学省科学技術賞の賞状です

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特許庁長官奨励賞も受賞しました

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さらに新しい物を開発して地域に貢献したい

製鉄所の火が消えたこと、震災に見舞われたこと、それらを乗り越え、開発や努力が実を結び、今がある――。「地域に根ざした機械作りが目標」と真摯に話す石村さん。ビニールハウスの温度を保つための大型ストーブ「ゴロン太」も地元の農業者にとってなくてはならない商品になっています。
「農業も水産も食料に関わることですし、岩手は一次産業の県だからそこに携わる人たちの役に立ちたい」。
石村さんは、強い想いで前に進んでいます。

「機械の開発は100個思いついて2個実現すれば成功という世界です。これからもどんどん新しい商品を考えて、地域に貢献したい」。
これからも石村工業は、未来につながる希望を鉄から生み出し、私たちの生活を豊かに彩ってくれることでしょう。

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石村工業株式会社

石村工業株式会社

〒026-0002 岩手県釜石市大平町4-2-1
電話 0193-22-3641

URL:http://www.craftman-pe.com/home/

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