未来へ進むとうほくリポート

NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま

避難生活を乗り越えた女性たち〜“かーちゃん”の力で町を元気に!

NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま

福島大学小規模自治体研究所が、避難生活をしている女性たちを支援するために立ち上げたプロジェクトです。あちこちに避難していた“かーちゃん”たちが力を合わせ、オリジナルの商品開発や、伝承料理を伝えるイベントなど、多彩な活動を行っています(写真:プロジェクトを率いた渡辺とみ子さん)。

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震災後、ばらばらになってしまったかーちゃんたち

「“かーちゃん”たちの力を合わせて、プロジェクトを行いませんか?」
飯舘村から福島市へ避難していた渡辺とみ子さんに声がかかったのは、2011年秋のことでした。声の主は、福島大学小規模自治体研究所。渡辺さんが飯舘村の地域づくりに関わっていたころからのつながりでした。

東日本大震災による原発災害によって、原発から50キロ圏内の飯舘村、川俣町、浪江町など福島県の阿武隈地域に住む多くの人が避難を余儀なくされていました。渡辺さんもその一人。生まれ育った場所を離れ、ほとんどの人は縁もゆかりもない土地で暮らすことになっていたのです。仕事を失い、ご近所同士のつながりもなくなって、すっかり気力を削がれてしまう人も少なくなかったといいます。

そんな中、川内村の女性たちが、福島大学で地元に伝わる伝承料理を振る舞ったことがありました。その味に感動した福島大学の人たちは、避難している女性たちの力を借りたいと渡辺さんに声をかけたのです。飯舘村が大好きで、地域おこしにも関わっていた渡辺さんは、迷わずプロジェクトへの参加を決めました。

お菓子、漬物、調味料など、かーちゃんたちはそれぞれに得意分野を持っていました。プロジェクトではそれを生かして活動しています。

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避難している女性たちを訪ね歩き、泣きながらプロジェクトを形に

「とにかく、かーちゃんたちのところへ行こう!」
プロジェクトを立ち上げたものの、何をするのかはまだ決まっていませんでした。しかし、渡辺さんは団体が出来た翌日から動き出します。各地に避難している女性たちを探し出し、一人ずつ話を聞いて歩きました。彼女たちの現状を聞き、少しずつプロジェクトを形にしようと考えたのです。

「大切に育ててきた畑がなくなってしまった」
「近所の人たちがどこへ避難したかわからなくて、寂しい」
次から次へとそんな悲痛な声や想いが集まっていきました。一人ひとりのかーちゃんも、渡辺さんも、いつも泣きながら話していたそうです。

ただ、かーちゃんたちは泣いてばかりではありませんでした。
「一人じゃ何も出来ないけれど、みんながいるなら動き出せる」
「支援してもらってばかりだから、恩返しがしたい」
涙の後には、必ずそんな言葉が聞こえてきました。

かーちゃんたちも「何か」がしたいんだ--。その気持ちをひしひしと感じた渡辺さんは、それぞれの得意分野を生かして活動しようと決意します。渡辺さん自身かぼちゃ農家で、避難先でも栽培に取り組んでいました。農作物や漬物、餅など、かーちゃんたちはそれぞれが手に職を持っていたのです。

ちょうど年末だったそのころ、仮設住宅で暮らす人たちから「お餅が食べたい」という声が聞こえてきました。そこでかーちゃんたちはお餅を手づくりして、販売イベントを開くことにしました。「ここでは季節を感じられなかったけれど、ようやくお正月が来た」と、とても感謝されたといいます。

それからかーちゃんたちは精力的に活動を始めます。本拠地は福島市の「あぶくま茶屋」。流し台とガスコンロしかなかった茶屋に、渡辺さんが飯舘村の自信の工房「までい工房美彩恋人」から様々な機材を持ち込み、弁当作りやオリジナル商品の開発、カフェレストランの営業も始めました。

「あぶくま茶屋」には、かーちゃんたちがつくったオリジナルメニューが並びました。

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かーちゃんたちが受け継いできた食文化を後世へ

オリジナル商品の開発や、仮設住宅でのイベント開催、手づくりのお弁当販売……。これらの活動は、日々家庭で当たり前に作ってきた料理を見直すきっかけになりました。また、かーちゃんたちが毎日のように食べていた料理が、若い人の目には新鮮に映ることも。そして、渡辺さんにある想いが芽生えます。
「私たちがどんな場所で、どんな料理を食べて育ってきたのか、形にしたい--」

そこで始めたのが、「あぶくま食の遺産継承プロジェクト」です。阿武隈地域に住む人のもとを訪れ、地域に伝わる料理のレシピと、それにまつわる物語を取材していきました。

伝承料理には、決まった分量がないことも多々あります。その家のかーちゃんが目分量で調整してきたからです。しかし、まったくその料理を知らない人でも作れるようにと、詳細なレシピを書き起こすことしました。そして、ついにそれらをまとめた冊子が完成。「出来ることから始めよう」と動き出したプロジェクトが、一つの形となったのです。渡辺さんは、この冊子がプロジェクトの集大成のように感じています。

飯館村の郷土料理「凍み餅(しみもち)」。野菜と餅を合わせ、水に浸し、寒風にさらして自然乾燥させてつくる保存食です。

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念願の帰宅--自立を目指したかーちゃんたち

2017年4月1日、飯舘村の避難指示が解除されます。既にほかの地域も次々と避難指示が解除されていて、かーちゃんたちはそれぞれの場所に帰っていくことになりました。この3月、プロジェクトは一区切りを迎えます。

「私たちは、一人ひとりのかーちゃんが“自立”することを目指してきました。かぼちゃだったり、漬物だったり、餅だったり、それぞれのやりたいことに取り組むことで、自立に近づけたと思っています。これからはそれぞれの場所で再スタートです」

長い避難生活の中でもいつも前向きに、自分たちで仕事をつくり出してきたかーちゃんたち。それぞれの場所で、それぞれの足で歩み始めます。離れた場所に暮らしていても、つながりが切れることはありません。

かーちゃんたちが何度も話し合いを重ねた「あぶくま茶屋」。2017年3月で一旦役目を終えます。

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あぶくま食の継承―新たな活動へ

一旦区切りを迎えたかーちゃんの力・プロジェクト。
渡邊さんは、家族との時間を大切にしながら、いつか飯館村で前のようにかぼちゃを育てる事が出来ることを夢見ながらこの先も進んで行かれます。

2016年からは、渡辺さんが率いるもう一つのグループ、「いいたて雪っ娘かぼちゃプロジェクト協議会」による「農業女子と、かーちゃんたちの井戸端会議」という活動を始められています。
福島の女性農業生活文化の伝承・発展と新規就農環境づくりを目的に、若い女性農業者や新規就農希望者の女性と、ベテラン女性農業者“かーちゃん”との交流の場を作る活動です。

2017年1月12日にあぶくま茶屋で開催された第3回井戸端会議では、阿武隈地域に古くから伝わる郷土料理「凍み餅」の試食会と、「凍み餅」づくりに欠かせない藁をつかった縄もじり(縄編み)をかーちゃんたちから教わるという内容でした。

福島県内から参加した参加者は、「難しいー!」と言いながらもかーちゃんたちと楽しく交流していました。一緒に縄もじりを作り、試食会では「おかき風の揚げ凍みもち」や「凍みもちホットサンド」など今までの伝統的な食べ方のほかに、新たな食べ方も楽しみつつ、郷土料理の新たな可能性を感じる機会となりました。

渡邊さんは、この先も輝き続けます。

縄もじり(縄編み)

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藁で作った縄もじりで凍み餅を編みました。この形で1ヶ月間乾燥させます。

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NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま

NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま

●NPO法人かーちゃんの力・プロジェクトふくしま
福島市松川町金沢字船場3-27
●あぶくま食の遺産継承プロジェクト
●いいたて雪っ娘かぼちゃプロジェクト協議会

URL:http://ka-tyan.com/
URL:http://abukuma-shoku13.com/
URL:www.iitate-yukikko.fukushima.jp/
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