未来へ進むとうほくリポート

株式会社パティスリークリコ

スイーツが心をつなぐ。南三陸の恵みを生かした「絆ロール」

株式会社パティスリークリコ

宮城県の海沿い、南三陸町にある旅館「ニュー泊﨑荘」の中に店を構えています。泊崎荘社長の高橋宮倫子さんは宿の次女で、遠方からのお客様がお土産として持って帰るのに便利なように、と作った冷凍ロールケーキがパティスリークリコの看板商品です。東日本大震災の時には、1,000本ものロールケーキを無償で配り、スイーツのやさしい甘さが多くの人のお腹と心を癒しました。現在、わかめや薬草のトウキなど、南三陸町の特産品を生かした商品開発に力を入れています。
(写真:前列右端パティシエの高橋宮倫子さん(現・泊崎荘社長)、前列左端 姉の佐藤洋子さん(現・パティスリークリコ代表取締役)と工房の皆さん)

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5年間の研究の末に生まれたロールケーキ

宮城県の北東部に位置する南三陸町の高台に、「ニュー泊﨑荘」という旅館があります。めいっぱい朝日が差し込む窓から青々とした海が見える素晴らしい眺めと、新鮮な海の幸が人気の宿です。ニュー泊﨑荘で定番のお土産が、冷凍ロールケーキ。館内にある「パティスリークリコ」が製造している「絆ロール」です。

パティスリークリコの代表を務めるのは、ニュー泊﨑荘の次女・高橋宮倫子(たかはし・くりこ)さん。子どものころからお菓子が大好きで、製菓専門学校で学んだ後にホテルで腕を磨き、2006年に自分の店を立ち上げました。当時からずっと、実家である旅館の厨房でお菓子を作っています。

当初はショートケーキや饅頭など、生菓子を中心に作っていました。ただ、旅館には遠方からのお客様も多く、「長時間持ち歩けるお菓子がほしい」という声が寄せられていました。そこで、冷凍状態で保存でき、持ち歩きに便利な商品を作ろうと決意したのです。

さまざまなスイーツを試作した結果、最も冷凍に向いていたのがロールケーキでした。生菓子と変わらないような、ふんわりしっとりした食感を楽しめるケーキにしたいと、宮倫子さんは5年も試行錯誤を続けました。こうして生まれた「くりちゃんロールケーキ」は地元の人気スイーツとなり、今では旅館以外でも販売されています。

太陽の光が降り注ぐニュー泊﨑荘。大きな窓からは青々とした海を望むことができます。

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命をつないだロールケーキ

南三陸町は、東日本大震災発生時に大きな被害を受け、水道や電気などのライフラインは止まってしまいました。停電が続く中、宮倫子さんは冷凍庫に1,000本ものロールケーキがあることを思い出します。こつこつと作り置きしていたものでした。

このまま停電が続けば、いずれは溶けてだめになってしまいます。「少しでも役に立つのなら」と、宮倫子さんはロールケーキを配り始めました。宿の毛布と一緒に避難所へ届けたり、家族や知人の安否確認にやって来た人に手渡したり…。ロールケーキは人から人へと渡っていき、隣の気仙沼市にまで届いたといいます。

「もしかしたら、あのロールケーキが最初の救援物資だったのかもしれません」と話すのは、宮倫子さんの姉で、ニュー泊﨑荘の取締役を務める佐藤洋子さんです。「ここ南三陸町は、震災で外とつながる道路が寸断されてしまって、救援物資が届くまでに時間がかかっていたんです。ですからそれまでは、旅館のスタッフもロールケーキを食べていました。命をつないでくれたと思っています」

当時ロールケーキを受け取った人にとっても、「くりちゃんロールケーキ」は忘れられないものになりました。今でも、「ストレスで食欲をなくした子どもが、このケーキだけは食べてくれたんです」とお礼を言われたり、大きくなった子どもたちが「あの時のロールケーキは本当においしかったです」と声をかけてくれたりするのだそうです。

震災後、店を続けるべきか迷っていた宮倫子さんのもとに、そんなうれしい声がたくさん届きました。温かい励ましに背中を押され、宮倫子さんは店を再開する決意をします。そして支えてくれた人たちへの感謝の気持ちを込めて、「くりちゃんロールケーキ」という名を「絆ロール」に変えて再出発したのです。

ロールケーキのやさしい甘さが、たくさんの人のお腹と心を癒しました。

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わかめ、薬草…地元の恵みをスイーツに

震災後、パティスリークリコでは地元の食材に改めて目を向けるようになりました。例えば南三陸の特産品であるわかめを生かした「生わかめロール」。震災で養殖場が流されてしまった従兄弟や同級生のわかめ漁家を、スイーツで手助けできないものかと考えた末に発案したものです。クリームがドロドロになったり、塩気が強すぎたりと、商品化までかなり苦労したものの、「わかめとスイーツ」という不思議な組み合わせが話題となって、今では人気商品です。

もうひとつの食材は、南三陸町が栽培に力を入れている「トウキ」という薬草です。トウキ(当帰)は漢方薬として用いられる植物で体を温めるとされ、根は漢方剤や入浴剤、葉は食用ハーブと幅広く使われています。震災後にNTTドコモとアミタグループが始めた南三陸町の森・里・海の恵みを未来につなげるための「未来の種プロジェクト」の取り組みとして、無農薬栽培のトウキを町のシンボルにしようという活動がありました。パティスリークリコもこのプロジェクトに参加しており、トウキを使ったロールケーキ作りに挑戦することになったのです。

トウキは、セロリに似て少し味にクセがあるので、食べやすいように黒蜜と合わせ、素材の味を生かしつつ口あたりも良くなる工夫をしました。また、「トウキ」という名前がまだあまり知られていないため、トウキの別名「アンゼリカ」から「エンゼルロール」と覚えやすい名前を付けました。トウキはビタミンなどの栄養が豊富なので、女性にうれしい商品が誕生したのです。

エンゼルロール、トウキを模した和菓子、トウキ入りのお茶がセットになった「エンゼルギフト」はご贈答用にぴったりです。

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地域のものだけでロールケーキをつくりたい

最近では和菓子の製造も始めたパティスリークリコ。ますます品数を増やしていく予定です。「冷凍品だけでなく、常温で持ち歩けるスイーツも充実させていきたいですね。カップケーキなんていいかもしれません」と宮倫子さん。

今年、ニュー泊﨑荘の前にトウキの苗が植えられました。順調に成長すれば、今年中に自家製のトウキでロールケーキを作ることができるかもしれません。また、「食べられる花」と呼ばれるエディブルフラワーの栽培も始めていたり、卵やはちみつのために、鶏やミツバチの飼育も検討しているところです。心を込めたスイーツのために、原料にまでこだわりたい--。絆を生むスイーツは、まだまだ進化を続けます。

宿の畑に植えられたばかりのトウキの苗。ここからまた新しいスイーツが生まれるかもしれません。

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トウキリーフ収穫時の様子です。

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株式会社パティスリークリコ

株式会社パティスリークリコ

宮城県本吉郡南三陸町歌津字番所34

URL:http://patisserie-kuriko.com/
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