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未来へ進むとうほくリポート

デザインの力で、復興住宅の暮らしをもっと心地良く

東北大学 大学院工学研究科 フィールドデザインセンター

東北大学 大学院工学研究科 フィールドデザインセンター

現代社会が抱える複雑な問題に取り組むべく、東北大学准教授の本江正茂さんが立ち上げました。人材育成のための機関ですが、国や地方公共団体との連携によって、現実に存在する問題に臨みます。学生ばかりでなく研究者も集い、さまざまな分野の知見を重ね合わせて真の課題解決を目指しています。過去には「せんだい3.11メモリアル交流館」も手がけました。
「せんだい3.11メモリアル交流館」のリポートはこちらをご覧ください。
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/enterprise/detail/177

広い視野を持つ人材を育てたい

専門分野だけでなく、物事の全体を見ることのできる学生を育成したい--。東北大学の准教授である本江正茂さんが「フィールドデザインセンター」を立ち上げた理由です。きっかけは、フランスを訪れたことでした。

「フランスの川べりに、ローマ時代から続く古い町がありました。川は度々氾濫するらしいのですが、その町には日本のような堤防がありません。堤防を作って洪水を防いではどうかと話すと、『堤防があると、街の美しさが損なわれてしまう』と。洪水を見越して、その分の保険をかけてあるそうなんです。目からウロコでした」

本江さんは建築の専門家なので、「洪水」という問題に対しては「堤防」を提案するのが当然のように思っていました。しかし「保険」という選択肢を知ったことで、ほかにも提案の余地があることに気が付いたのだといいます。そして、自分の専門分野だけでなく、他分野のことも知らなくてはと考えるようになりました。

「専門分野はあくまで物事の一面です。全体を見て、堤防も保険も含めた選択肢を検討した上で、『今回は堤防を作るのがベストです』と提案しなければ、住民にとって不本意な結果になってしまいます」

未来を担う学生にもそういう意識を持ってほしいと立ち上げたのがフィールドデザインセンターです。さまざまな領域の技術を用いて、社会問題の解決に挑んでいます。

「これからの時代は、多面的な視点を持っていなくては問題解決の提案はできません。そうでなければ専門家の活躍の場は狭くなってしまうでしょう」と本江さん。

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住民の話から、復興住宅が抱える課題を探る

フィールドデザインセンターが今回取り組んだのが、宮城県仙台市の卸町に建てられた復興住宅に関するプロジェクトです。本江さんは10年ほど卸町の町づくりに関わっており、復興住宅の問題を耳にしました。

「最初は『自治会の運営がなかなかうまくいかない』という漠然とした相談でした。何が足りないのか、どこが問題なのか、まだ誰にも分かっていない状態です。それならまずは行ってみようと、現地でのフィールドワークを始めました」

このプロジェクトには、NTT サービスエボリューション研究所も参加することになりました。NTT サービスエボリューション研究所では長年にわたって人が心地良く利用できるサービスに関する研究を行っています。蓄積したノウハウを社会問題の解決に生かせないかと模索しているところだったので、フィールドデザインセンターの意義に賛同したのです。

本江さんとセンターの学生たち、そしてNTT サービスエボリューション研究所のメンバーは、卸町に通い、住民に話を聞きながら、少しずつ課題を浮き彫りにしていきました。

プロジェクトメンバーは研究室に集まり、何度も議論を重ねました。

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住民参加型のプロジェクト

プロジェクトは、フィールドデザインセンターの研究室と復興住宅の2カ所で進行しました。研究室では、現状の問題や解決策をメンバーが検討します。そこで出てきたアイデアを住民へ提示しフィードバックをもらう、ということを繰り返していきました。

「住民のみなさんに参加してもらったのは、リアルな声を聞きたいという理由と、そこに住む人が『自分ごと』として考えてくれないと問題の核心に触れることはできないという思いがありました」

回数を重ねてようやく見えてきたのは、「住民同士のコミュニケーションを始めるきっかけが少ないのではないか」ということでした。復興住宅は、震災で家を失った人が集まっています。出身地が同じでもなく、元々の知り合いでもありません。共通点は「被災した」ということのみです。さらに全く馴染みのない場所に引っ越してきたとなれば、誰とどんな話を始めればいいのか、戸惑うのは当然のことです。

復興住宅の性質上、仕方がないこととはいえ、住民同士のコミュニケーションが乏しいことは、有事の際の孤立や、孤独死にもつながりかねません。議論は、「住民同士のコミュニケーションを増やすには?」という方向へ進んでいきました。

「最初は遠慮がちに参加していた住民の方々ですが、少しずつ発言するようになってくださって、『子どもを連れて行ってもいいですか』という声もいただきました。住民同士で声をかけ合って参加する様子も見られ、私たちが始めた取り組みが少しずつ『自分ごと』になってきたことを感じてうれしく思いました」

復興住宅で開催する回には15人ほどの住民が参加し、回を重ねるにつれ、子どもたちの姿も多くなっていきました。

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デザインの力で社会問題に挑む

4カ月にわたるプロジェクトの最後には発表会が行われ、学生が2つの案を提示しました。一つはエレベーターの中に「犬が好きか、猫が好きか」などといった2択のアンケートを掲示するもの。もう一つは、トランクに入れた本棚をフロアに置くというもの。どちらも、さりげなく住民同士のコミュニケーションにつながるようにという目的で考えられたものです。当初は「公園を作ろう」「お祭りを開こう」といった大掛かりな案もあったそうですが、アイデアの変遷について、本江さんはこのように語っています。

「『人を集める』ということだけを考えれば、公園もお祭りも間違ってはいません。しかし、私たちがいなくなった後も継続することを考えると、現実的ではない。それは、住民のみなさんと顔を合わせて進めてきたからこそ見えてきたことです。公園やお祭りと比べると規模は小さくなりましたが、それより、現実的で具体的であるということが大切だと思います」

住民の方々の賛同で、2案のうち、本棚が実現の方向で動き出しています。しかし、本棚を設置すれば復興住宅の問題が全て解決するのかといえば、決してそうではありません。プロジェクトを通じて新たに見えてきた課題もあったといいます。

「フィールドデザインセンターを通じて果たしたいことは、まず真の課題にたどり着くこと。今回であれば、住民同士のコミュニケーション不足でした。しかし、たどり着いてみると、もっと奥に課題が見えてくることもあります。そこで何ができるのか、繰り返し深掘りすることが必要でしょう。」

一度で全てを解決でするわけではなく、長い目で、社会問題に対するアプローチを模索していく…。フィールドデザインセンターも、NTT サービスエボリューション研究所も、目に見えない社会問題に、デザインの力で挑んでいきます。

エレベーターでのアンケートは、気軽に会話が生まれるように、好きな動物や食べ物などあえて軽い質問にしています。(元気のある子どもたちの「試用」で、エレベーターの模型が損傷していますが……)

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「Traveling Library」と名付けられた本棚。おすすめの本を入れたり、ノートに本の感想を書き込んだりして、住民同士のコミュニケーションを図ります。

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東北大学 大学院工学研究科 フィールドデザインセンター

東北大学 大学院工学研究科 フィールドデザインセンター

URL:http://www.fdc.eng.tohoku.ac.jp/

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