未来へ進むとうほくリポート

一般社団法人おしかリンク

牡鹿半島発、持続可能な地域創造のカタチ

一般社団法人おしかリンク

2015年2月発足、「地域の暮らしが地域らしくずっと続くように地域社会を未来につなぐ」がミッションです。人と人、地域と人、地域と地域をつなぎながら、地域社会のサスティナビリティの向上を図ります。空き家再生などの「場のプロデュース」、ツーリズムを主軸とした「コトのプロデュース」、地域資源を生かしたモノを商品化する「モノのプロデュース」を事業の柱とし、同時に地域暮らしの担い手となる人材育成も行っています。

点の活動を連携させて面に変える

宮城県の北東部、太平洋に向かって南に飛び出た牡鹿半島。リアス式海岸の特徴である入り組んだ地形のこの地域には、30ほどの「浜」と呼ばれる集落があります。浜のひとつである荻浜地区で活動をしているのが、「おしかリンク」です。

代表理事の犬塚恵介さんは、愛知県出身の建築設計の専門家。牡鹿半島との出会いは、建築家による復興支援プロジェクト「アーキエイド」への参画がきっかけでした。アーキエイドでの役割は、行政の復興計画を住民に分かりやすく伝えること。しかし犬塚さんは、物足りなさを覚えたといいます。

「復興に向けてのいろんな情報は入って来るのだけど、そこに人の体温が感じられなかったんです。次第に、浜に住む人たちのリアルを知りたいと感じるようになりました」

浜の日常を実感したのは、ベースキャンプとして利用していた空き家での時間でした。その場所は、地域の寄り合いスペースとしても使われていて、そこで初めて、浜の人たちの自然なやり取りを聞いた気がしたと振り返ります。

そして、この地域には、高齢化や過疎の問題に取り組む、魅力的な人々がたくさんいることを知ったのです。そうした人たちとの交流を通じ、犬塚さんは思いついたことがありました。

「団体同士が連携し合ったり、時には行政とコラボしたりと、“点”である単独の活動をつなげて“面”にするプラットフォームをつくろうと。この人たちとなら、『面白いことができそう』とワクワクしました」

それが、「おしかリンク」の始まりでした。

牡鹿半島に訪れた当時を思い出しながら語る犬塚さん。ベースキャンプである「やまのゐ」は利用者たちで空き家をリノベーションしながらつくられています。犬塚さんの専門的知見も生かされる場です。

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埋もれた地域資源を掘り起しつながりを生む

おしかリンクが目指すのは、定住者に限らず牡鹿半島の魅力を掘り起こし発信する、「おしかびと」を増やすこと。つまり、関係人口の増加を図っています。

「誰か1人が365日まちのために奔走するのではなく、1日だけでもいいから365人がまちと本気で関わる。そのほうが、楽しくて豊かなまちになると思うんです。」

牡鹿の主要産業といえば漁業くらいでした。観光資源も豊富とはいえず、どうすれば外の人に牡鹿が魅力ある地域に映るのかが課題でした。そこで目をつけたのが、森林です。牡鹿半島は、沿岸部を除くと山や森に囲まれ、角度のある傾斜に木々が連なっています。

ところが、野生のシカによる食害などにより、野山は荒れていました。農業や林業の担い手が不足し、森林のケアに手が回っていなかったのが原因です。しかも、海には山から水が流れ込むので、山の荒廃は漁業の衰退にもつながりかねませんでした。

こうした状況がなぜ起こってしまうのか、犬塚さんはいろいろな角度から考えてみました。

「結局のところ、コミュニティーの希薄化ではないか、というところに行きついたんです。ならば、地域につながりをもたらす仕組みを築いていこうと。そのときに、埋もれている資源を生かして新たな価値を生み出せたら、きっと面白いものができると確信しました」

「やまのゐ」の眼下に広がる漁港。牡鹿半島の浜では牡蠣の養殖がさかんです。

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「やまのゐ」の敷地のすぐ裏側には森が。このあたりまでシカが降りてくるのも珍しくないそうです。

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外部の知恵を借り、人が人を呼ぶ場をつくる

そうして生まれたのが、「暮らし創造型ツーリズム」です。牡鹿半島の自然を生かしたプロダクトづくりを、ツアー参加者と行うプログラムになっています。現在進められている「最高に美味いメープルくるみパンの食べ方」では、パンの材料となるメープルシロップを確保するのに、森にウリハダカエデの木を植えるところからスタートしています。

「ウリハダカエデは荻浜地区に自生していて、鹿が好まない樹木のひとつです。植樹を通じて森林環境の整備につなげます。ゴールが『パンを食べる』なので、環境保護にそれほど関心の高くない人でも参加しやすいと思います」

この地域でも樹液が得られることは、去年のツアーで確認していました。もしかすると、メープルシロップが新しい名産品となる日も来るかもしれません。今後は小麦の生産や、オニグルミの実の収穫、パンを焼くかまどや炭をつくる企画も予定されています。

「いかに外部の人を巻きこめるかが勝負です。知見を持ち寄る場を設けることで、人が人を呼び、それが関係人口の増加につながります」と犬塚さん。

ウリハダカエデの植樹も、環境関連のNPOやコンサルタントからアドバイスをもらいながら実現したといいます。

冬に開催した「最高に美味いメープルくるみパンの食べ方」の様子。森に落ちているウリハダカエデの種を参加者みんなで探しているところです。

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過去には牡鹿半島に生える檜を使って、お風呂をつくるツーリズムも開催しました。お風呂は「やまのゐ」へ持ち込まれました。

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“ぎりすべ”の精神でコミュニティーを育む

地元の人たちも、貴重な原動力です。よそ者だった犬塚さんは、活動を続ける中で地元の言葉である「ぎりすべ」の大切さを学びました。

「『義理を立てる』といった意味です。相手からの好意は遠慮なく受け取る、その代わり自分ができることで相手に尽くす、それにより関係が育まれていくんですね」

犬塚さんにとって、ぎりすべの象徴ともいえる場所があります。おしかリンクが運営する、「湾ショップおぎのはま」です。もとは地元の人が営む商店で、浜のコンビニのような存在でした。ところが様々な事情により運営が立ち行かなくなり、お店を残せないかと相談を受けたのです。

「私たちが切り盛りするようになってからも、以前からのお客さんが応援してくれます。これも、地域を愛していた先代への“ぎりすべ”なんですよね」

地域づくりに関心のある学生がインターンで訪れた時にも、“ぎりすべ”の体感を大事にしています。

「学生たちが寝泊まりする『やまのゐ』にも、地元の人たちが何か困ったことはないかと、様子を見に来てくれるんです。その人たちにどのような形で恩返しができるのか。学生たちが自ら考え、アクションします。それがコミュニティーづくりの第一歩だと思うんです」

湾ショップ「おぎのはま」でのひととき。世代を越えて人が交流しています。

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インターンでは通常業務を体験すると同時に、自分ができることを考え好きなように実践してもらっています。このハンモックチェアーもインターン生がつくりました。

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訪れた人が何かを持ち帰る場所にしたい

犬塚さんが牡鹿半島とつながったのは、震災支援がきっかけです。関わりが深まるにつれここ数年は、地域活性化のモデルとしての荻浜地区の価値を見いだし始めています。

「これまでは東北というと、『何かをしてあげたい』という思いで訪れていた人も多いと思うんです。確かに復興が進んでいない地域もありますし、牡鹿半島でもインフラの整備が急がれる部分もあります。でも、外からやって来た人が荻浜での暮らしに触れることで、何かを持ち帰るといった形ができるんじゃないかな、とそんな気がしています」

ゆくゆくは、訪れた人たちの生業やキャリア形成につながるような、長期滞在の仕組みづくりにも着手したいと考えているそうです。
東北との新たな関わり方が、牡鹿半島から生まれる予感です。

荻浜の人たちとツーリズム参加者が「やまのゐ」の囲炉裏を囲む。つながりが生まれる瞬間です。

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宮城県石巻市荻浜字横浜山12-2

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