未来へ進むとうほくリポート

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草野心平記念館「天山文庫」管理人:志賀風夏(しが・ふうか)さん

やりたいことは全部村で叶えられる――双葉郡川内村にUターンした女性の思い

草野心平記念館「天山文庫」管理人:志賀風夏(しが・ふうか)さん

双葉郡川内村は、双葉郡8町村の中西部に位置し、山の自然が豊かな村です。村内生活者数・約2,100人(2018(平成30)年福島県調べ)。東日本大震災発生後、福島第一原発の30キロ圏内として「屋内退避区域」、「緊急時避難準備区域」に指定され全村避難したが、2011年9月に解除。2012年に1月には、原発周辺市町村ではいち早く「帰村宣言」。2018年6月に村内すべての避難指示が解除されています。
同村の歴史的遺産であるかわうち草野心平記念館「天山文庫」では、同村出身の志賀風夏さんが管理人をつとめており、訪れる人たちに、天山文庫の魅力や成り立ち、草野心平の川内村での日々を伝えています。

元々川内村には、よそものを受け入れる風土があった

「旅して応援(※1)」では、蛙の詩人・草野心平さんの生まれ故郷・いわき市小川町を訪ねる旅を紹介しましたが、小川町の隣の、双葉郡川内村には、草野心平さんの別荘だった「天山文庫」があります。現在、天山文庫を管理するのは、川内村出身の志賀風夏(しが・ふうか)さん。Iターンの若者が目立つ川内村では珍しい、Uターンの若者です。

川内村にIターン者が多いことについて、「そもそも、心平先生を受け入れた時代から、よそものには寛容だったのではないか」と話します。町ではなく村なので、基本的に人口が少ないため(風夏さんの小学校時代の1学年の生徒は20人弱)、よそから来た人を応援する気質があるのではと風夏さんは分析します。以前、「未来へ進むとうほくリポート」で紹介した、双葉郡のお花屋さん・Fuku Farming Flowersの福塚裕美子さん(※2)も、大阪から川内村へのIターン。

「福ちゃん(福塚さん)もそうですけど、わざわざお店とかいろいろなものが無くて、インフラも悪い場所に移住してくるなんて、川内村には変わった人が多いですよね(笑)。でもそういう人たちを、自然と受け入れているんです。心平先生も多分そうで、地元では変わり者扱いされてても、川内村ではそのまま受け入れた。だから通うようになったんじゃないかな」と笑います。

天山文庫の前で説明する風夏さん

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村っ子だから、村に暮らすことこそが自然

川内村の陶器工房の一人娘として育った風夏さんは、元々村に戻ってくるつもりだったといいます。「一人っ子だし、村っ子だし、両親のことが大好きなので」と、話す風夏さんは本当に自然体。その存在自体が、村と一体化しているように感じます。実は人との関係を築くのが苦手だという風夏さん。村にいると、緑豊かな自然に囲まれ、自分のペースでゆったりと仕事ができる。だから、苦手な人間関係も、なんとかやっていける。「本当に、村にいるとノーストレスなんですよね」と話す風夏さんですが、そこまでの道のりには、様々な経験があったようです。

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絵が大好きな子ども時代から、大震災、村の盛り上げを仕事にするまで

小さい頃から絵が大好きだった風夏さんですが、アートの道に進むようになるのは高校生になってから。小学校、中学校は学年の人数が少ないため(各学年20人弱)、文化部が無かったのだそう。そして、川内村には高校もないため、風夏さんは祖母の住む相馬市の高校に通うことに。その時に出会った美術の先生の影響を大きく受け、絵画の道に進むようになります。

祖母と2人で暮らしながら高校生活を送っていた高校一年の3月に、東日本大震災が起こりました。一旦は両親の知り合いの住む神奈川県鎌倉市に避難した風夏さんですが、ゴールデンウィーク明けには高校が再開したため、祖母と共に相馬市に戻りました。「避難を続けて鎌倉の学校に転校、というのは嫌でした。当時は、放射能に対する誤解や差別で、福島ナンバーだというだけで卵を投げつけられる、なんて時期だったので、いじめはなかったとしてもすごくクラスメイトに気を遣われるんだろうなって。福島県内に戻ればみんな立場は同じだし、人間関係もそのままだし、と思って戻ることに決めました」。

風夏さんの自宅のある川内村をはじめとする双葉郡は、ほぼ全域が警戒区域となり、2012年の川内村の帰村宣言までは、自宅には戻れませんでした。ですが、風夏さんの通っていた高校のある相馬市は、警戒区域となる福島第一原発からの20キロ圏内には含まれなかったため、ほとんどの生徒が学校に戻ってきていました。「地元双葉郡の高校に通っていた生徒たちは、同じ学校に戻れず、避難先で散り散りになってしまっていたので、そういう意味では私は、仲間も人間関係もそのままで高校生活を続けることができたので、今にして思えばとても運がよかったんだなと思います」と当時を振り返ります。

絵画で推薦を受けた風夏さんは、大学では絵画の教師になるためのコースに所属しました。しかしその内容や周りの学生たちに違和感を覚え、途中から大学には行かずに、仙台の古着屋でアルバイトをしたり、友人たちとゲリラ的にファッションショーを開催したりと、独自の道を歩んでいたといいます。村に戻った時に役に立つはずと、カフェなどの飲食や製菓の仕事にも取り組みました。そんな大学4年時に、川内村に震災後初となるカフェがオープン、そのオープニングスタッフの求人に目が留まります。

2016年11月にオープンし、今や川内村の人気スポット、「Cafe Amazon(アメィゾン)」

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そのまま大学にいても、卒業に必要な単位を取得するのに1年以上かかってしまうような状況だった風夏さんは、大学を中退して村に帰ることを選びます。「元々村に戻るつもりだったし、当時はこれ以上大学を続けるのは無理だなと思ったんです。だったら、魅力的な求人が出ている今だなと」。

日本第一号店となるタイのコーヒーチェーン「Cafe Amazon(アメィゾン)」で働きながら、天山文庫の管理人という、さらにやりがいのある求人も見つけ、現在は、昼間は天山文庫、夕方からはCafe Amazonで働く風夏さん。川内村在住のアーティストとして、デザインの仕事などを依頼されることも増え、やりたいことがすべて村で実現しているといいます。「古着屋で働いていたのは、デザインや縫製をやりたかったからなのですが、実は祖母や母が、テーラーやオーダーメイドで服をつくる仕事をしていたんです。絵画やアートはもちろん、実家が工房ですからいくらでも学ぶことができる。村にカフェができて、村の自然に囲まれた天山文庫という場所で仕事もできる。やりたいことを外に求めていたけれど、実は私のやりたいことは全部村の中でできるんだって」。

Café Amazonで働く風夏さん(右)と同僚の辺見珠美さん

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好きなことはとことん突き詰めたい 今だからこそやらなくてはならないこと

絵画でも古着屋でもカフェでも、好きなことはとことん突き詰めてやってきたという風夏さん。天山文庫で働くようになってからは、草野心平さんの本を片っ端から集め、その中から川内村に関するエピソードを抽出することと、今、川内村に住んでいる人たちから心平さんとの思い出話を聞かせてもらうことで、管理人としての知識を蓄えています。「訪問された方に質問されたときに、どんなことでも答えられるようにしたいんです。それから、心平さんと直に関わりのあった人たちって、もう70代、80代になっているので、お話を聞ける時間も限られているので、出来る限り話を聞かせてもらいたいなぁと思ってます」と話す風夏さんの目は、使命感に溢れていました。

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かわうち草野心平記念館「天山文庫」

福島県双葉郡川内村にある「天山文庫」は、蛙の詩人・草野心平の別荘として、1966年に建てられました。
豊かな自然や、「モリアオガエル」の繁殖地である平伏沼(へぶすぬま)を気に入り、度々同村を訪れるようになった草野心平は、1960年に村から名誉村民に認定されました。「天山文庫」は、そのお礼にと3000冊の蔵書を心平が村に寄贈したのを機に建設されました。

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関連記事

※1
▼いわき市小川町へ蛙の詩人・草野心平を訪ねる~その1
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/support/travel/detail/99/
▼いわき市小川町へ蛙の詩人・草野心平を訪ねる~その2
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/support/travel/detail/101/
▼いわき市小川町へ蛙の詩人・草野心平を訪ねる~その3
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/support/travel/detail/102/

※2
▼【未来へすすむ東北リポート】福島県双葉郡の日常を彩る 思いを届けるお花屋さん「Fuku Farming Flowers」
http://rainbow.nttdocomo.co.jp/enterprise/detail/251/




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草野心平記念館「天山文庫」管理人:志賀風夏(しが・ふうか)さん

草野心平記念館「天山文庫」管理人:志賀風夏(しが・ふうか)さん

「天山文庫」
住所:福島県双葉郡川内村大字上川内字早渡513
電話:0240-38-2076
開館時間:午前9時~午後4時
休館日:月曜(祝日の場合は開館)
入館料:一般300円、高校生・学生250円、小・中学生150円(20名以上の団体は50円の割引)
Twitter:かわうち草野心平記念館 @tenzanbunko0716

URL:http://www.kawauchimura.jp/sp/page/page000108.html

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