全国の人に食べてもらえるのがうれしい

「私ね、らくのうかなんですよ。字は、楽農家と書くんです」

そう言ってほほ笑むのは、南三陸町の入谷地区で有機農業を営む阿部勝善さん。有機農法で米と野菜を栽培しており、同地区では有機農法の先駆者として知られています。
阿部さんの家は代々入谷地区で農業を営んできました。里山に囲まれ、森林が生み出す良質な水に恵まれる入谷地区は、古くから農業が盛ん。夏は涼しく、冬は雪が少ないので１年を通して比較的温暖で農業に適していると言います。

入谷地区に広がる豊かな水田

阿部さんがコメ作りを行う水田。
うるち米の他にも、もち米や野菜も有機農法で栽培しています

阿部さんが育てるうるち米はひとめぼれとササニシキ。南三陸町の道の駅「さんさん市場」で販売し、人気を博していましたが、まもなくふるさと納税の返礼品としても出品するように。現在は、有機液肥で育てたひとめぼれを返礼品として全国に出荷しています。

「さんさん市場で販売し、食べた人においしかったと言ってもらえるだけでうれしいのですが、返礼品として出すようになって、また注文が入りました、と連絡が入ると生産者としてはやはりうれしいですね」とほほ笑む阿部さん。次々に注文が入ることがうれしくて、うっかり自宅で食べる米まで出荷しそうになることもあるのだそうです。

南三陸を農業で豊かに

阿部さんが有機農法に出会ったのは東日本大震災の後でした。
巨大な津波に襲われた南三陸町では、600名近い命が失われ、200名を超える人が行方不明となりました。全壊した家屋は3000戸を超えました。

市街地にあった阿部さんの水田は、引き潮で土がすべて失われ、代わりに小舟が６艘残されていたといいます。土がなくなった水田は全部で20aほどの広さでした。阿部さん同様、仲間の多くが家や畑を失ったそうです。

それまで会社員をしながら農業に携わっていた阿部さんは、震災で仕事を失い、様々な知識を得るために専門学校に通い始めました。この頃、本気で農業に取り組むことを決意。復興支援のために町に入ってくれた様々な企業から、新しい情報や技術を仕入れられたことがとても刺激になったと言います。

「ドコモさんに、水位センサーを使った無農薬の米作りを教えてもらったのも、このときです。水位を調節して無農薬米が栽培できるなんてすばらしいと思いました」と阿部さん。農業仲間の阿部博之さんに続き、早速、有機農法に挑戦することを決めました。

ドコモが提供した水田センサーを利用してササニシキを栽培。センサーにより水田の水位を管理することで、雑草の発生を抑止することができ、農薬・肥料を使わない栽培に成功しました

「もともと新しいことを始めるのが大好きなんです」と語る阿部さん。自然と向き合いながら行う有機農法ではご苦労も多いのではと伺うと、「大変なことも、やってみると楽しいもんですよ」と言います。
有機農法を始めてまもない頃、有機液肥を手動のポンプで水田に散布していたために均等に散布できず、苦労したという経験を語るときも「その頃、南三陸で資源循環促進に取り組むアミタの社員と一緒に液肥を散布していたのですが、散布中に彼らが液肥を頭からかぶっちゃってね」と笑顔。その年は、均等にまくことができずに米の生育が偏り、うまく育たなかったそうですが、「あれも、勉強になった」と話します。

苦労した思い出を笑顔で語る阿部さん。
「農業をやっていて楽しいのは、作物の成長を日々見られること」と話します

農業はこれからもまだまだ勉強

地域では有機農法の先駆者として講演などの声がかかることも多い阿部さんですが、農業はまだまだ勉強中と語ります。
「農業は自然相手。技術もどんどん進化します。学ぶことはまだまだあります。これからも新しいことを学んで挑戦し、南三陸を元気にしていきたいです」
そう笑顔で話す阿部さんのひとめぼれは、ふるさと納税のサイトから注文できます。

阿部さんが育てた「減農栽培のひとめぼれ」と「資源循環型 南三陸町めぐりん米(ひとめぼれ)」

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