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大船渡市三陸町の廃校が、地域を活性化させる一役に ー「三陸BMXスタジアム」

2022.06.02

三陸BMXスタジアム

岩手県大船渡市三陸町越喜来(おきらい)にある、廃校となった甫嶺(ほれい)小学校跡地を活用し、BMXコースと室内パークを併設した施設です。三陸沿岸道路の三陸ICを降りて約5km、三陸鉄道リアス線の甫嶺駅からは徒歩5分の場所にあります。

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三陸BMXスタジアムのある大船渡市三陸町越喜来地域は、海と山の自然に囲まれた穏やかな時間が流れる場所です。全国7か所にあるBMXスタジアムの中でも、海が見えるコースはここだけです。
「地方でも、このBMXを楽しめる仕組み作りを実現していきたいなと思っています」。そう話すのは、三陸BMXスタジアムを運営する合同会社TXFの福山宏さん。設立の経緯から、現在に至るまでの道のり、今後の抱負について詳しく伺いました。BMX2.jpg

合同会社TXF 代表社員 福山宏さん

被災地で自分ができることを

岩手県大船渡市に福山さんが関わるきっかけとなったのは、東日本大震災でした。青森県の出身で、当時は東京に住んでいた福山さん。
「震災が発生してから2日ぐらいは、気の毒だな......と思ってテレビを見ていたんですが、3日目ぐらいからただ見ているだけじゃどうにもならないな。やれることをやろうと思って、当時勤めていた会社でプロジェクトを企画しました」。

株式会社NTTPCコミュニケーションズで新サービスの企画や開発、マーケティングなど新規事業の立ち上げも行っていた福山さん。震災から約1カ月経つ頃、はじめて大船渡市を訪れます。現地を見て必要なものや不足していることなど情報を集め、最初に取り組んだことは、身元不明者の情報をデータベース化し提供するというサービスでした。

「大船渡に来た4月7日は、2度目の大きな地震があった日でした。夜の11時半くらいに震度6の地震が起きて。連絡が取れない状態になって、自分自身が行方不明者になってしまって......」BMX3.jpg

福山さん自身も実際に連絡がつかない状況となり、その時のラジオも県域局しか聞くことができず、大船渡市の情報が分からない状態だったそうです。

自分が経験したことや被災した人からの情報をもとに、福山さんがやれることを次々と形にしていきました。

その後も行き来するなかで、現在大船渡市で地域おこしなどの活動をしている「株式会社地域活性化総合研究所(地活研)」が設立された際に転職しました。

地域の人たちの思い出深い校舎を残すために

きっかけは、地活研に寄せられた1つの相談からでした。
大船渡市にある越喜来小学校が津波で被災し、児童たちは隣の甫嶺小学校に通っていました。そのタイミングで合併となり高台に新校舎を設立。現在の越喜来小学校ができました。
甫嶺小学校は、校舎は被災しなかったものの、生徒がいなくなってしまったため廃校。地元の人たちには、思い出がつまった甫嶺小学校を有効活用して、残していきたいという想いがありました。地域の人たちの強い想いに応えるべく、福山さんが動きだします。BMX4.jpg

整備される前の甫嶺小学校

「実際に甫嶺小学校を視察に行ったとき、海が見えて屋外の景色がいいロケーションだなと。やっぱり屋外でできるスポーツがいいなと思いました」。
YouTubeで色々なスポーツを探していくなかで、オリンピック競技としても注目を集めていたBMXを見つけます。実際に自分の目で確かめるために、埼玉県秩父市にあるコースを見学し、その時に「あぁ、これだ!」と直感します。
「最初は、自分でやるとは全然思っていなくて、お勧めのスポーツとして紹介しようと思っていたのですが、気づいたら自分がやることになっていました()
そこで、当時大学生だった息子の福山北斗さんへ声を掛けます。BMX5.jpg

子どもたちに指導をする福山北斗さん

何も知らないゼロからのスタート

BMXは未経験、聞いたことはあったものの、触ったことも乗ったこともない北斗さん。右も左も分からない状態だったため、秩父のレースコースに住み込みで入りました。コースの運営方法やBMXの技術コーチングなど、2年間イチから学んだそうです。
そこで出会ったのが、当時高校生だったエリートライダーの桑野孝則さん。「北海道・東北で初めてのBMXのコースを岩手県に作る」という、北斗さんの熱い想いに共感し、高校卒業と同時に大船渡市へ。まだ事業化の目途が立っていないなかで、北斗さんと桑野さんと2人で移住し、まずはコースとなるグラウンドの土地を自分たちの手で整備していきました。BMX6.jpg

BMXプロライダーの桑野孝則さん

最初の2年間は、事業化の目途や資金調達のため、ランバイクの無料スクールを保育園や幼稚園をまわって周知活動をしました。大会も開催し参加者を集め、そこから今のクラブチーム「STREET MONSTER」が誕生します。
BMXのことを知らない人がほとんどだった大船渡市三陸町で、現在の会員数は50人ほどまで増えました。BMX7.jpg

県内外から合宿に参加した子どもたち。練習内容を真剣な眼差しで聞いている様子

地道な活動や今までの縁が実を結んで

現在は、ランバイク教室と小学生向けのBMXのレッスンを開催しています。
定期的にSTREET MONSTERをはじめ、県内外からも参加者を集めて本格的な合宿も行っています。
指導者は、北斗さんと桑野さんの他に、全日本の年間ランキングチャンピオンや国際大会にも出場しているトップレベルの選手もアシスタントとして指導にあたっています。
北斗さんが秩父のレースコースで働いていた時の繋がりと、東北にBMXという新しいスポーツを普及させたいという想いに賛同してくれている人たちが、サポートとして参加してくれているそうです。BMX8.jpg

国内トップレベルの選手が合宿中、アシスタント兼講師としてサポートしている

「きちんとコーチングしていくスクール型で行っています。他のクラブチームをみても、スクール型自体が少ないんですよね。トレーニングがプログラム化されているレベルなので、そこが強みの1つです」。

子どもたちの成長の早さに驚きを隠せないと話す福山宏さん(以下、福山さん)。
「少子化が進んでいて、各集落や地域でチームを組めないスポーツも出てきています。でもBMXは個人で競技ができるスポーツです。もちろん、成長が早い子もいれば遅い子もいます。でも、どんなにスピードが速くない子でも、3カ月前よりも確実に速くなっているんですよね。競うだけでなく、成長を実感してもらって、自転車って楽しいなと思ってもらう世界があっていいと思っています。」BMX9.jpg

練習を終えて、スタジアムへ戻る様子。個人競技とはいえ、練習や合宿中はチームで行動することが多い

BMXは世代関係なく楽しめるスポーツ

楽しくやるなかでも大事にしていることは、「礼節」と話す福山さん。
「走り終わった後は、全員で自転車を磨いたり、ご両親にお礼を言うなど人間作りも大事にしています。子どもたちがのびのびとスポーツに打ち込めるのは、陰で支えてくれる親御さんの存在も大きいと感じます」。

実は、保護者の人たちもコースから石を掻き出して整えたり、審判や記録係なども行いボランティアスタッフとして大会を運営したりもするそうです。BMX10.jpg

「大会を開催すると、おじいちゃん、おばあちゃんも折り畳みの椅子を持参して見に来たり、地元の人たちも知り合いはいないけど、応援に来たり。みんなで椅子を並べて、『がんばれ~!』と子どもたちを応援していますね」。
子どもたちだけではなく、世代を超えて楽しめるのもBMXの魅力の一つです。

これからも子どもたちのために

最後に、今後の抱負を伺いました。
「2つのベクトルがあるなと思っています。1つは、オリンピックとかを目指していく子が出ることが、また新たな競技者を増やしていく。BMX自体を広げていくことに繋がっていくのかなと思っています。もう1つは、地元の子どもたちが楽しめて、BMXが好きになれるようなイベントやトレーニングの環境をつくっていくこと。この2つを探求していくことなのかなと思っていますね」。BMX11.jpg

近い将来、大船渡市から未来のオリンピック選手が誕生するのも夢ではありません。

【取材・記事執筆】
一般社団法人トナリノ 吉田 ルミ子

2018.06.20

東日本大震災での出来事を次世代へつなぐ防災施設 ーKIBOTCHA(キボッチャ)

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三陸BMXスタジアム

WEBサイト
http://txf.life/
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