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まるでジュース! 130年の歴史を持つ岩手の「米崎りんご」を後世へつなぐ

2020.01.28

特定非営利活動法人LAMP

震災後、岩手県陸前高田市で活動を始めた団体です。町が抱えるさまざまな課題の解決に取り組む中で、歴史ある「米崎りんご」が存続の危機に陥っていることを知り、生産を担うことになりました。オンラインショップやマルシェなど、買い手と直接結びつくことができる販売方法にこだわっています。また、独立支援制度などを設け、りんご農家の育成にも力を入れています。 写真は、LAMPの吉田司さん。

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海を見下ろすりんご畑の絶品りんご

岩手県陸前高田市米崎町。リアス式海岸を望む山の上に、りんご畑が広がっています。ここは、岩手県で最古の歴史を持つりんごの生産地です。

「初めて食べたとき、『こんなにうまいりんごがあったのか!』と衝撃を受けました。今まで食べてきたどのりんごとも違うおいしさなんです」

そう語るのは、「米崎りんご」のつくり手の一人、吉田司さん。米崎りんごに魅せられて、40歳で農業の世界に飛び込みました。

米崎りんごはおよそ130年前から栽培されてきたといわれています。海のそばでりんごを育てるというのは、全国的に見てもかなり珍しい特徴です。高台にある畑は、あらゆる方向から日光が当たり、水はけが良いという特徴があります。また、陸前高田市は霜が降りることがほとんどないので、焦って収穫する必要がありません。じっくり熟すまで待って収穫をすることで、蜜がたっぷり入ったりんごが育ちます。

「何といっても水分量が多いのが特徴です。かじると果汁があふれ出てきて、ジュースのようですよ。いくら食べても飽きません」と吉田さん。

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眼下にリアス式海岸を望むりんご畑。

町からりんご畑が消えていく

吉田さんが米崎りんごと出会ったのは、東日本大震災直後に送られてきた支援物資の一つとしてでした。何気なく口にしたりんごの味に、心底驚いたといいます。

「私は陸前高田の出身なのですが、陸前高田の名物といえば海の幸だと思っていて、こんなにおいしいりんごがあるなんて全く知りませんでした。その上、そのりんごがなくなるかもしれないということにも衝撃を受けました」

そう、米崎りんごは危機に瀕していたのです。以前からりんご農家の高齢化は問題になっていたのですが、東日本大震災で津波の被害を受けた農家が事業を畳んだり、町の復興にあたってりんご畑を宅地化したりということが積み重なり、りんご畑が次々に姿を消していきました。そして驚愕の事実にたどり着きます。震災当時、承継が決まっていた米崎りんごの"30代以下"の担い手は、たった一人だけしかいなかったのです。

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真っ赤なりんごがたわわに実る、この風景が消えていこうとしていました。

「このりんごを"つなぐ"」――40歳で農業の世界へ

「まちの産業のひとつがなくなってしまうかもしれない――」

米崎りんごの状況を知った吉田さんは、農業の世界に飛び込むことを決意しました。当時40歳、農業は全くの未経験でした。かなり思い切った決断ですが、迷いはなかったといいます。

「誰もがそうだと思いますが、私もあの震災を経験して価値観が変わりました。死を身近に感じて、『自分が死んだ後に、何を遺せるだろうか』ということを考えるようになりました」

そして吉田さんが選んだのが、米崎りんごだったのです。

米崎りんごのルーツは、地元の大工が出稼ぎから苗を持ち帰ったことにあります。"家族みんなで暮らせるように"という願いが込められていることや、海の見えるりんご畑という、全国の生産地を見ても希少な景観だということ、陸前高田が温暖な地域でりんご栽培に適していることなど、ここにしかない特徴を活かすことができたら、守るだけではなく発展させて次世代につなげられるのではないか...と、考えるようになりました。

「あのときに心から感動したりんごを育て、生きることを伝えていく、というのは、私にとって自然な流れでした」

右も左もわからない1年目は、りんご農家の先輩方が力になってくれました。その中で聞いた、「私たちはりんごを育てているんじゃない。りんごが育つお手伝いをしているんだ」という言葉がとても印象的だったそうです。主役はあくまでりんご。人間はそっと手を貸すだけなのだと。

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1年をかけて実ったりんご。芸術品のようだと感じることがあるそうです。

この場所でしかつくれないオリジナルのりんごを

吉田さんが農家となって3年。LAMPではりんご農家の育成にも力を入れており、吉田さんはその支援制度を利用して、2年後に独立する予定です。大学にも通い、さまざまな角度からりんご栽培について学んでいます。そして現在。わずかではありますが、若手の生産者や担い手も増えました。販売ではリピート率も倍以上になり、全国の米崎りんご仲間は着々と増えているそうです。

これから吉田さんが本格的に取り組みたいと思っているのが、オリジナル品種の栽培です。「ふじ」「シナノゴールド」など、米崎町ではさまざまな品種が栽培されています。これまでになかった品種を米崎町で育て、それを米崎りんごの代名詞にしたいと考えているのです。

「陸前高田の風土や、海と山と太陽の恵みを連想させるような、そんなりんごを作りたいんです」

自然の恵みをいっぱいに受けて、真っ赤な実を付ける米崎りんご。自分が感動したこのりんごを一人でも多くの人に届けるべく、吉田さんは日々りんごと向き合っています。

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蜜がぎゅっと詰まった米崎りんご。

2016.10.16

120年の歴史を誇る「米崎りんご」のアップルジュース

スリーピークスワイナリー

特定非営利活動法人LAMP

岩手県陸前高田市高田町字大隅93-1 高田大隅つどいの丘商店街9号

HP
https://www.lamp-yr.org/
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