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だれもがあたたかく受け入れられる社会を。障害を持つ人と家族を支えるプロジェクト

2020.09.10

Happy Notes代表 社会福祉士 平形 洋司さん

山形県鶴岡市で、社会福祉士をしている平形洋司さんは、障害を持つ人やそのご家族をサポートするプロジェクト「Happy Notes(ハッピーノーツ)」を進めています。日々の出来事を気兼ねなく語り、同じような立場の家族と情報交換できる場を作ることで、孤独感や不安感を少しでも減らしたい。その取り組みは、平形さんが目指す、だれもがあたたかく受け入れられる社会につながっています。

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障害を持つ人とその家族に交流の「場」を

現在、日本国内には、体や心などに障害がある人が約930万人いると言われています。これは、日本の全人口に占める割合の約7.4%にあたります。数字的には少数ですが、少数であるために本人やその家族たちが孤独感を抱く理由の一つと平形さんは語ります。

「孤独感が高まってしまう原因の一つは、日々の悩みを共感したり、情報を得る場が少ないからです。障害を持つ人は、日々、さまざまな場面で困難にぶつかっています。そして、彼らを支える家族も毎日何度も戸惑ったり、悩んだりしています。そんな毎日の出来事を気軽に口にできたら、とても気持ちが楽になると思います。でも、親や友人にもなかなか気軽には話せないのが現状です。なぜなら、理解されないのではないか、特別視されてしまうのではないかという恐れがあるからです」 気軽に語ることができる場がないと、だれにも打ち明けられずに悩みを自分の中に溜め込んでしまう。これが彼らを苦しめると平形さんは言います。
「大きな悩みに発展していく過程はとても苦しいと思います。なので、日々の小さな出来事のうちに、話せる場・聞ける場があることがとても大切だと思います」

平形さんが昨年立ち上げた「Happy Notes」は、まさに、そんな場を提供するプロジェクトです。これまで行ってきた取り組みは、集会所などを利用した、お父さんやお母さんが気軽に情報交換を行いながら心も体もリラックスできる場、先輩お父さん・お母さんの子育て体験談をシェアする場の提供など。また、障害を持つ人の一人暮らしをどう実現するかのセミナーなども行ってきました。 「障害を持つ子どもの家族への情報がとにかく不足しています。毎日のいろいろな場面にどう対処すればいいか、といったことから、学校はどう選ぶのか、普通級がいいのか支援級がいいのか、先生には何をどう説明すればいいのか、夏休みは? 進学は? など、わからないことだらけです。年齢が上がると、自立はどうする? という問題もあります。プロジェクト立ち上げ後はまず、情報を届けること、そしてそれについて意見交換できる場を作ることを優先して行いました」

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「障害を抱える方の独り暮らしについて」というテーマで行った、(株)こころね 代表取締役 中條央崇さんによる講演の様子

打ち明けられないのは想像を超える苦しみ

平形さんが、日々の小さな出来事をシェアする大切さを痛感したのは、ある女性との面談がきっかけでした。 「以前勤めていた施設で、60歳くらいの女性と面談しました。施設を利用されていた障害を持つ30代のお子さんのお母様です。面談を開始してしばらくすると、その方がポロポロ涙を流し始めました。話を聞くと、30年間、お子さんの障害を理解されず、受け入れてもらえなかったと言うのです。」

それまで社会福祉士として20年以上、障害を持つ人たちと触れ合う中でたくさんの笑顔をもらってきたという平形さんにとって、それはとてもショックな出来事でした。 「そんなに長い間、だれにも理解されずに苦しんでいた。それを知って衝撃を受けました。どんなに辛かっただろうと思うと胸が痛かった。と同時に、自分は今まで何を見てきたのだろうと思いました。 障害を持つ本人のケアと同じくらい、その家族の方の心のケアが重要であることをそのときに痛感しました」

平形さんはその後も、障害を持つ人とその家族に起こる悲しい出来事をいくつも目にしてきました。中には、親子で命を絶ってしまった人もいました。 「なぜ、そんなことをしなくてはならなかったのか。だれにも悩みを打ち明けられず、苦しんだのだろうと思うと、心が締め付けられます。そこまで孤立させてはいけないんです。どんな人でもあたたかく受け入れられるような社会でなくてはならない。本当にそう思います」

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療育でかかわった子どもたちとパーカッションバンド「ボルケーノ」。平形さんもメンバーの一人として参加しています。写真は17年前の様子

ICTの利用で「Happy Notes」進化中

Happy Notesは今、ICTを利用したオンラインでのサービスを充実させ、利用者にとってよりよいプロジェクトに向かって進化中です。現在はzoomを利用したオンラインcaféを基本の取り組みとし、よりテーマを絞った情報交換の場の提供も計画中。また、カウンセラーに直接個別相談ができる仕組みも構築中だと平形さんは語ります。

「Happy Notesは昨年一歩を踏み出したばかりです。今、いろいろな方の意見を聞きながら、どんなサービスが役立つのか模索しているところです。場を作ったけれども利用しにくいのでは意味がないですから。ただ、立ち止まって考えてばかりいると、できないことが目についてきてしまいます。なので、できることからどんどん始めていきたいという気持ちがあります。そういう意味では、ICTはとても便利だと思っています」

平形さんが「できないことを探さず、できることに目を向けること」を学んだのは、2018年に参加したSOCIAL INNOVATION ACCELERATOR(SIA)(東北社会起業家育成プログラム) での経験が大きいと言います。 「当時、自分の中にHappy Notesの構想はぼんやりあったものの、なかなか形にできなくて悩んでいたこともあってSIAに参加したのですが、そこで出会った起業を志す仲間たちに刺激を受けました。私と同様、みんながよりよい社会を実現するために、どうすればいいかを真剣に考えている。できないことを探していてはいけないと強く思いました。そもそも、障害を持つ人とその家族の不安を取り除いて孤立させない、と目標に立ち上げたHappy Notesです。私がどんどん前に進まないと、社会は変わらないですから」

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SIAでの活動の様子

社会全体に笑顔のサイクルを

関わった人たちの笑顔が、私自身を笑顔にしてくれる最高の仕事。平形さんは福祉の仕事をそう語ります。 「私は、障害を持つ子どもたちを対象にした放課後等デイサービスも運営していますが、そこは毎日子どもたちの笑顔と元気な声であふれています。とても幸せな気持ちになります。ここ数年は、福島からひまわりの種を買い、施設で子どもたちと一緒に育て、収穫した種を福島に返すというプロジェクト(福島ひまわり里親プロジェクト)に参加し、笑顔のサイクルは最高だと感じています。ひまわりを育てることで子どもたちが笑顔になり、地域の人も笑顔になり、その種を返す福島の人たちも笑顔になることがとてもうれしいのです」

社会全体の笑顔の輪を広げたい。そう考える平形さんですが、障害を持つ人の周囲は決して笑顔ばかりではないのが現状だと言います。 「障害を理由とする差別や偏見があるかどうかについての世論調査では、ないと答えた人がわずか12%しかいません。私は、Happy Notesを立ち上げるとき、この数値を10年後に60%にする目標を立てました。そのためには、障害を持たない人たちにも障害を持つ人の状況を理解してもらう必要があります。今後、Happy Notesではそんな情報発信もしていく予定です」

だれもが温かく受け入れられ、笑顔で過ごせる社会に向けて、平形さんの挑戦は続きます。

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福島ひまわり里親プロジェクトにて、皆で育てたひまわりの花

Happy Notes代表 社会福祉士 平形 洋司さん

Facebookページ
https://www.facebook.com/Happy-notes-559105787932016/
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