3つの市町村の絆で誕生したアンテナショップ
2014.05.29
株式会社 道奥(みちのく)
2012年5月に岩手県花巻市にオープンしたアンテナショップ結海(ゆうみ)は、東日本大震災をきっかけに、金婚漬けで有名な「株式会社 道奥(みちのく)」の協力を得て誕生しました。
結海では大槌町と秋田県五城目町の特産品販売を中心に営業し、毎月11日には震災を忘れないためのイベントも開催しています。
震災がきっかけでつながった二つの町
岩手県花巻市にある漬物メーカー「株式会社 道奥」の本社工場に隣接する「金婚亭」。そのなかにあるアンテナショップ「結海」で、道奥の阿部社長と、結海の平野店長にお話を伺いました。
東日本大震災が発生した当時は大槌町の浪板観光ホテル(現 三陸花ホテルはまぎく)に勤めていたという平野さん。
かつてない巨大な地震にホテル側は着の身着のままお客さまを高台に避難させたそうです。そのときに平野さんたち従業員が身を挺して、無事に避難させたのが、秋田県五城目町の老人クラブの方々だったそうです。
これがきっかけとなり、太平洋側と日本海側に離れた二つの町に交流が生まれます。そして、五城目町の町長や役場の方々が中心となり、大槌町への積極的な支援がはじまったそうです。
二つの町を結ぶ架け橋「結海」
かたや、震災直後、被災した沿岸部へ赴き、無料で「わんこそば」を振舞うなど支援のために炊き出しをおこなっていたという道奥の阿部社長は、その過程で「一過性の支援ではなく、長く続けられる支援をしていかなければならない」と感じていました。
そんな震災後のある日、浪板観光ホテルと以前から交流があった阿部社長は、ホテルの元営業支配人から、復興のために大鎚の産品を販売する拠点を作りたいが場所が見つからないと相談を受けます。
「自分たちも震災後に全国の方々から応援して頂いたので、何かの形で恩返ししたかった。このお話しは長く続けられる支援となるのではないかと思い、無償で場所を提供することを決めた」と、阿部社長。
店の従業員は大槌町など沿岸部から避難してきた方々を採用しましたが、その中に、平野さんがいました。阿部社長は平野さんから、大槌と秋田県五城目町の交流の話を聞き、そのお礼も兼ねた交流の店というコンセプトが生まれます。
そして、行政やたくさんの人たちの応援もあり、二つの町を直線上で結んだ中間地点にあたる花巻市に、アンテナショップ「結海」はオープンしました。
自主性を持ったオリジナルブランドの展開
大槌町と五城目町、二つの町の特産品を取扱う「結海」。「沿岸部までなかなか行けないがここで被災地の商品を買って応援できる」と、観光客からの評判も上々です。
そんな「結海」が2年目からはじめた新たな試みが「オリジナル性を持った結海ブランド」の展開。その第一弾として作られたのは漁場に浮かぶ「浮き玉」をモチーフにしたストラップ。
色とりどりのビー玉を青いネットで包み、麻ひもと鈴をつけたストラップには結海の従業員全員の復興への想いが込められています。
2013年の秋から五城目町にもアンテナショップ「結海」を出店し、「三陸と日本海をつなぐ架け橋となりたい」という想いは大きくひろがっています。
また、大槌町に現在建設中のホテルにも小規模ながら出店する計画があるとのこと。「3市がお互いに協力して結海の名前を広げていければいいですね」と阿部社長。
3つの「結海」が作り出す新しい復興支援の形は、今、確実に花開きつつあります。
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