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健康や幸せを支える漁具・園芸用具

2015.08.19

株式会社熊谷鉄工所
岩手県大船渡市で古くから漁具の製造を続けてきた熊谷鉄工所は、山あいの緑豊かな集落に工房を構えています。丈夫で使いやす漁具は、大船渡をはじめ、東北の海で漁業を行う人たちを長く支えてきました。1994年からはその技術を生かし、園芸用具の製造も始めました。頑固な雑草も、根こそぎ取れると口コミで評判の広がった「草取りカギカマ」や「草取り溝カッター」など、職人技が際立つ商品を生み出しています。

代々続く鍛冶屋の技術で漁具を製造

漁具製造で定評のある熊谷鉄工所は、代々続く鍛冶屋から独立して現社長の熊谷鈴男さんのお父様が始めた会社。2代目である社長の鈴男さんと、息子の秀平さんのお二人にお話を聞きました。
「大船渡は漁業の町だから、鍛冶の技術を漁具に生かそうと始めたんだ」と鈴男さん。最初はアワビをとる鉤(かぎ)からスタート。その後、ホヤやナマコ、ウニをとる道具、カキの殻をあけるナイフ、昆布やワカメを刈る道具、船を岸壁に寄せる道具や、漁業者の命綱とも言えるナイフなど、次々と手がけるようになりました。

中でもメカブをとる「メカブカッター」は、「刃物作りのノウハウを生かして、うちが開発した」という自慢の商品。ワカメの根元にあるひだ状のメカブを茎からとるのは大変な作業なんだそう。それを簡単に切り取れる「メカブカッター」を熊谷鉄工所が生み出したからこそ、私たちは日常的にメカブを食べられるのですね。

左はアワビをとる鉤(かぎ)、右はカキ殻をあけるナイフ

熊谷鉄工所が開発した「メカブカッター」はワカメの茎からメカブだけを切り取れる

鍛冶の技術を生かした丈夫で使いやすい漁具が評判に

「魚介類をとるのは大変な力仕事。コツやタイミングに加えて使いやすい道具じゃないとなかなかとれないのさ」と鈴男さん。漁具の使い勝手は漁業者の収穫量、つまりは収入に直結するため、だれもがより良い道具を探しています。熊谷鉄工所の漁具は、丈夫で使いやすいことからとても人気があります。

「鍛冶屋の技術を漁具の改良に生かし、刃はもちろん、持ち手の握りやすさ、丈夫さを追求している。うちの漁具を使ったら、また買ってくれるよ」
特にカキをとる道具には定評があり、「北海道から石川県あたりで使われている道具はほとんど俺が作った物だね」と鈴男さんは胸を張ります。

鍛冶の技術でていねいに手づくりするから丈夫で使い勝手がいい

漁具需要の復活はまだまだ道半ば

震災で漁業が壊滅的な被害を受けた大船渡。熊谷さん親子の住む家と鉄工所は高台にあり、直接の被害はなかったものの、一緒に仕事をしている鈴男さんの弟さんは家を流され、「しばらくは仕事も手につかず、大変だった......」と当時を振り返ります。
「漁船がみな流されてしまったし、水揚げもない。漁具の注文がどうなるのか予想もつかない状態だった。漁業者にはすぐにさまざまな支援があったけれど、うちのような裏方には直接的な支援はなく、とにかく漁業の復興を待つだけだった」といいます。3年後には船の数もほとんど元の状態になり、漁具の注文も再び増えてはきていますが、震災をきっかけに廃業した漁業者も多く、漁具需要の今後には課題が残ります。

漁具作りの技術を生かした園芸用具「草取りカギカマ」

そんな熊谷鉄工所に希望を与えてくれたのが、20年ほど前から始めた園芸用具の製造でした。きっかけは、「親父が年をとってから畑仕事を始め、俺も親父を手伝ってやってみたんだけど、どの道具も使いにくくて、いっそのこと自分で作ろうと思って始めた」こと。畑仕事でいちばん大変なのが雑草取りですが、草刈り用のかまは、金属の刃に持ち手がついている形状など漁具との共通点が多く、鈴男さんにとってその改良はお手の物でした。

鈴男さんはいろいろな草取りかまを使ってみて、いいところは生かし、不満なところを改良していきました。「根っこが残らないよう根こそぎ刈るにはどうすればいいのかあれこれ考えた」と試行錯誤の日々が続きました。
「それまでの草刈りかまは、平らな刃(平刃)ばっかりだったんだけれど、あるとき漁具でなじみのあるギザギザのある波刃をつけてみたら草がうまく引っかかって、軽く引くだけで根こそぎ取れたんだ。それで今の形になったんだよ」

よりよい物をお客さまに届けたい

こうして生み出された「草取りカギカマ」ですが、発売当初はずいぶん不思議がられました。しかし今は模倣品も売られているので、熊谷さんのアイデアが優れていたことが証明されたわけです。「刃の部分は専門の業者に作ってもらい、その刃を曲げて焼き入れをし、塗装して柄を付け、焼き印をポン!と押してでき上がり」と鈴男さんは簡単そうに言いますが、「一番大事なのは焼き入れですね」と製造を担当する息子の秀平さんは力を込めます。鍛冶の技術を生かし、刃こぼれしない丈夫な刃にすることができたのです。

熊谷鉄工所の「草取りカギカマ」には左手用があることも大きな特長です。「左手用はないの?とよく聞かれるんで作ってみた」と、使う人の声に耳を傾けることを大切にしている鈴男さんだからこそ開発できた商品。これが思った以上に喜ばれ、今では注文の1割程度が左手用だそうです。

波刃が特長の「草取りカギカマ」には左利き用もある

道の駅と口コミに支えられて人気商品に

「草取りカギカマ」は現在は道の駅を中心に販売しています。初めから価格競争に参入するつもりはなく、どこで売るかを思案していたときに、三陸町の「道の駅」から声をかけられました。「食べ物でもみやげでもないのに売れるのか?」と思ったそうですが、50本置いてもらうことに。
「それがあっという間に売り切れて、その後も納める端から売れるんで担当者も驚いて、他の道の駅に話してくれてね」
 
それがきっかけで近隣の道の駅からも注文が入るようになり、やがて道の駅のガイドブックにも掲載される評判の品に。今では年間3万本売れるという熊谷鉄工所の主力商品に育っています。「田舎の職人で営業力があるわけではなく......」と鈴男さんは言いますが、良い物には再び買いたくさせる力があります。それだけではなく、その使いやすさを人に話したくなり、「三陸町の道の駅で買った」と聞いた人が買いに来る、そんな風に口コミで広がっていったのです。

「草取りカギカマ」は道の駅でも人気の商品

職人魂で生み出す道具が人の健康や幸せを支える

「このカマを使ったら、ものすごく草刈りがはかどって、知らぬ間に隣の庭まで刈ってしまったという笑い話のような手紙をもらったこともあるんだ」「90歳過ぎのおばあちゃんからは、これで草を刈るのがおもしろくて前より元気になったと聞いたよ。草刈りがきっかけで寿命が延びたんだね、なんぼまで長生きするんだか」と笑います。土に触れることが大切という鈴男さん。楽に使える道具があれば年をとっても土いじりができ、健康寿命が延びるのだそう。道具を作る職人さんにとって、使い手の喜びの声は最大の励みです。「それでもまだまだだね」という熊谷さん親子の望みは、「草刈りが必要なすべての人に『草取りカギカマ』のよさを知ってラクに畑仕事をしてもらうこと」なのだとか。

「もっと使いやすく丈夫にしようと工夫していると、どんどん長持ちするようになり、買い替えが遅くなって出荷量が減る、そこが難しいところ」と鈴男さん。「でもいいんだ、喜ばれることが一番。職人魂だよ」と笑い、改良についての話は尽きません。熊谷鉄工所には「草取りカギカマ」のほかにも、アイデアあふれる園芸用具があります。溝から生える雑草を刃を傷めずに刈り取る「草取り溝カッター」や、立ったままグングン草刈りができる「草取りレーキ」なども鈴男さんが「便利」を追求して開発した道具です。

道路脇などの溝から生える雑草を刃を傷めず、効率よく刈れる「草取り溝カッター」

高い技術力、開発力を持つ熊谷鈴男社長(左)と、新しい情報や知識を駆使した事業発展に取り組む熊谷秀平さん(右)。親子ならではの絶妙のコンビネーションです。

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