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宮城発!伝え続けたい昔ながらの浅漬け

2015.11.12

北海食品工業有限会社
野菜本来のおいしさを塩と重石だけで引き出す昔ながらの漬け方にこだわり、浅漬け作りを続ける北海食品工業。漬け物作りにおいても、近代化とともに、合成保存料や合成着色料を使った大量生産や、調味料などを使った味つけが行われていることに警鐘を鳴らし、「本当においしい浅漬けを提供したい」という思いを大切に丁寧な仕事を続ける、骨太の漬け物会社です。

野菜自身が蓄えた甘みだけの漬け物を味わってほしい

北海食品工業で扱っている漬け物は、一夜漬けとも呼ばれる浅漬けのみです。目の届く規模で様子を見ながら漬けることを信条にする北海食品工業の浅漬けは、野菜そのもののおいしさが味わえると多くのファンから愛されています。
 こだわりは、とびきりの旬野菜を使っていること。中でも白菜漬けは自慢の品です。「この辺でとれる白菜は『仙台白菜』と呼ばれる品種で、ものすごく甘いんだよね」と語る社長の相澤昇さん。昭和48年の創業以来、昔ながらの手法で浅漬けを作り続けています。白菜以外にも、なすやきゅうり、キャベツといった定番野菜の漬け物を食卓に届けています。
「今の人たちは何でも甘いのを喜び、すぐ『甘くておいしい!』と言う。だから、作り手も調味料で甘くしようとする」と顔をくもらせる。相澤さんが守っているのは、食材それぞれが本来持つおいしさを引き出すこと。寒い地方の野菜は、寒さから身を守るために、自らの中で水分を減らして糖分を増していきます。
「野菜自身が蓄えた甘みは、砂糖や甘味料で真似できるものではないんです」。
 だからこそ、原料にこだわり、多少高くても良いも素材を選んでいます。

ずっしりと重量感があり、葉の厚い白菜はみずみずしく甘みがたっぷり。

しっかりと葉を巻いたキャベツも最高の品質。季節によって最適なものを選びます。

塩を振り、重石をかけてじっくり水分を出す昔ながらの漬け方

 きちんと育てた野菜に手作業で塩を振り、野菜300〜400kgに対して1トンもの重石をかけることで塩を浸透させ、栄養やうまみは逃さないまま、独特の食感と一体感を生み出していきます。「白菜であれば、半分に切ってから葉と葉の間に塩を振っています。1枚ずつはがしたり、早く水分を出すために差し水をすることは一切ない」と妥協のない漬け方です。
「『一夜漬け』という呼び名だけれど、本来漬け物は一晩じゃ漬かるわけがないんです。初夏から夏にかけてでも2日くらい、冬なら4〜5日漬けなければ漬け物にはならない」と言います。
「最近では、本当に重石をして作っている漬け物屋は少なくなっているんじゃないかな。うま味調味料や甘味料で味を作って安く売られているんだよね。でも、それが浅漬けだとは思わないでほしいですね」。

重石をのせる昔からの漬け方を守っている。300〜400kgの野菜に1トンの重石。

天然の色合いや栄養を引き出した、健康食品としての価値

 漬け物は、塩と野菜が出会って浅漬けに仕上がる数日間に乳酸菌が生まれる発酵食品です。漬け物の乳酸菌には、日本人の腸のバランスを整える働きがあり、健康維持にも一役買ってくれます。また、工場や漬け樽などについている常在菌が独特のうま味を生み出します。これが機械で短時間に漬ける浅漬けにはない、昔ながらの漬け方の最大の魅力です。
「色を出そうとか、濁らないようにしようとか無理なことをしない。皮もむかないんです」。
 実際に北海食品工業の漬け物は、どれも本来の味を思い出させるようなすがすがしいうま味にあふれています。最近では、野菜は皮に栄養があることや、色素に健康効果があるということが見直され、再び「良い物を探してたどり着いた」というお客様が増えてきているそう。
 北海食品工業の漬け物は、これまでずっとお付き合いのあるお店や、おいしいものを提供することにこだわる旅館やホテルのようなところで販売されています。
「スーパーなどに進出しても、安いものに押されてしまいます。価格競争をするのは本意ではないんです」。
 安定した売上を得ることよりも、漬け方や食材の質にこだわり、やりがいのある仕事を追求したいという姿勢を守っています。

旅館や料理屋さんなど、おいしい物を求めて人々が足を運ぶような業者にも卸している。

おいしさを伝えるために、妥協はしない

 震災では幸いにも大きな影響を受けることがなく、ストックしていた野菜ですぐに商品を出荷、食品の供給に貢献しました。ただ、震災後、産地によっては野菜の出荷が減少し、十分な量を確保できなくなる事態も発生しました。素材となる野菜にこだわってきたこれまでのクオリティーを守るために、新たな仕入れ先探しにも余念がありません。
「震災を経て、日本中の人が再び食の安全に興味を持つ風潮が生まれています。そんな中で、自信を持ってお客様に売ることのできる漬け物です」と相澤さん。これまでの信念を崩さず、丁寧な姿勢を守りつつ新たな取り組みにも挑戦していきます。ネット販売や通販への進出の予定がないか伺うと、「きちんとおいしい状態で届くかどうか、慎重に見極めていきたい」と話してくれました。
「都会で漬け物のことを話す機会を作れればいいし、おいしい状態で食べてもらえるならお届けする方法も考えたいです。妥協はしないけれど、きっといい方法があるはずと思っています」。

常に前向きに取り組む社長の相澤さん。その信念が揺るぐことはない。

浅漬けという古来からの食文化を伝えたい

 漬け物には、長く日持ちさせるために塩分を使った「保存漬け」という漬け方もありますが、北海食品工業が手がける漬け物は「浅漬け」と呼ばれるジャンルです。野菜のうまみや栄養をそのまま生かし、しんなりとした食感とほのかな塩けでおいしさを最大限に引き出す漬け方です。生の野菜を食べる方法がそれほどなかった時代に生み出された、いわば新鮮野菜の補給手段だったのです。
 相澤さんは、なぜ昔ながらの漬け方にこだわるのでしょうか?
「浅漬けの文化を途絶えさせたくないんです」というのがその答えでした。
 昔ながらの漬け方を守る漬け物店が減っている中、相澤さんは「浅漬けの原点を味わえる」北海食品工業の存在を知ってもらうことも大事だと思い始めています。浅漬けの文化を継承していくために、即売会や催事などにはできるだけ参加し、お客様に「塩と重石で作る漬け物」を直接伝える......そんな時間を大切にしています。
 「最近では、子どもたちを集めて『1日浅漬け教室』を催したりもしています。子どものイベントは親も一緒に参加するので、食育という意味でも価値があると思います」。

 震災を経て日本中で東北の食への関心が高まっている中で、相澤さんは浅漬けの文化や東北産の野菜を知ってもらいたいと強く願っています。さらには、日本人が食材や調理法の原点を見直すきっかけになれば、とも思っています。
 昔ながらの漬け方で野菜本来の味を引き出した漬け物とともに、相澤さんの浅漬けの文化を伝えていく活動が始まっています。

北海食品工業自慢の品々。どれも余分なものを加えずに野菜と塩のおいしさが生きる。

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