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この町の女性が楽しく夢のある仕事ができる環境をつくる

2015.08.04

南三陸石けん工房
“南三陸の豊かな自然の恵みと安らぎを、石けんを通して世界の人々に届けます”を理念に掲げ、宮城県南三陸町の古民家を舞台に、南三陸町の自然のもつ本当の力を活かし、環境に良い手づくり石けんの製造・販売を行っています。また、手づくり石けんのワークショップ、キット販売を行うなどして、お客様の要望にあわせたオーダーメイドの石けんづくりも目指しています。 (写真左:及川さん 中央:厨さん 右:石川さん)

「この町の女性が楽しく夢のある仕事ができる環境をつくりたい!」

そう語ってくれたのは、2015年から南三陸町志津川地区の古民家で"手づくりオーガニック石けん"の製造・販売の事業を始動した、南三陸町石けん工房を運営する株式会社アイローカルの代表取締役社長 厨勝義さん。

厨さんは福岡出身なのですが、東日本大震災をきっかけにボランティアとして南三陸町にはいり、そのまま南三陸町に移住しました。移住後は、壊滅的被害を受けた南三陸町戸倉地区で、戸倉復興応援団代表として復興支援に従事してきました。具体的には、ボランティア・研修を受け入れるコーディネーターや地域資源を活かした町づくりです。ボランティアコーディネーターでは、多くの企業や学生たちが復旧作業をするだけではなく、現地の人との交流の場を積極的につくっていたそうです。

こうした厨さんたちの取り組みのおかげで、南三陸町のボランティアは他地域と比べてリピート率が高く、ボランティアをきっかけに南三陸町を"第2の故郷"のように感じている人がたくさんいます。

「南三陸町は漁業が主たる産業の町なので力のいる仕事はあるのですが、女性の仕事探しが難しく、高校を卒業すると都市部に出ていってしまう方も多いんです。」

南三陸町に移住して、震災直後から町の復興に関わってきた厨さんだからこその発言です。

手づくりオーガニック石けんの事業を始めようと思ったきっかけを聞いてみました。

「南三陸町の豊かな自然の恵みを活かせる事業をやりたいと思っていたのですが、そんなときに手づくり石けんを知って、これはいけると思いました。石けんには、ワカメやアカモク、シルクなど南三陸町の自然の恵みを活かすことができるんです。そして何より、この地域で手づくり石けんを作っているところがなかったのが一番です。」

「石けんづくりは力仕事をそれほど必要としないので、女性の仕事としては最適なのです。南三陸町の自然の恵みを活かした石けんづくりを通じて、この町に誇りを持ってもらえると嬉しいですね。」

株式会社アイローカル 代表取締役社長 厨さん

手づくり石けんは生きもの

石けんは、動植物製油脂とアルカリ性の水溶液を加えることで生成されます。これに追加効用と色、香りを出すために、海藻や薬草、竹炭に香料(ラベンダー、レモングラス、ヒノキなどのアロマオイル)を加えます。

「正直、手づくり石けんの経験はゼロでした。仙台で手づくり石けんづくり教室に通って一通り勉強した後、独学で研究してきました。今でも試行錯誤しています。たとえば、ベース油脂としてよく使われるオリーブオイルで作った石けんは、保湿成分は高いのですが、湿度の高いお風呂場に置いておくと溶けてしまいます。
特に難しいのは、海藻や薬草によって油脂や香料の配合が違うので、それぞれの成分を活かす黄金比を見つけるために試作品を作り続けています。」

原材料となる高級油脂

これまで、海藻のアカモク、ワカメ、シルク等、試作してきた手づくり石けんを並べみると壮観です。
手づくり石けんひとつひとつに存在感があり、生きものなのだと実感します。石けんは呼吸しているので、湿気が多いと汗をかきますし、時間が経過すると劣化もしていきます。石けんが発する香りも、それぞれが存在を主張しているように感じます。石けんに対する価値観がガラッと変わった瞬間でした。

ここで、手づくり石けんと市販石けんとの違いについて触れておきます。
一番の違いは、油脂の材料です。市販石けんは、米国から安く輸入できる牛脂とココナッツ油を使っているそうです。一方、手づくり石けんは、オリーブオイル、ココナッツ油、パーム油、ゴマ油、米ぬか油、椿油など、化粧品に使用されるような高級油脂を使います。

もう一つの違いは、製造にかかる手間と時間です。市販石けんの多くは、工場で4~5時間あれば完成しますが、手づくり石けんは「コールドプロセス法」という製法で、ゆっくり時間をかけて石けん化し、熟成から乾燥まで4週間ほどかかります。この製法の特徴として約10%くらい油脂の成分が残るので、肌にモチモチしており、泡立てて顔を洗うとクレイジングオイルはいらないそうです。

「女性は100gで3,000~8,000円する石けんを使っている人は結構います。3,000円の石けんが高いと言っているのは男性だけですよ!」とは、スタッフの及川さん。
なるほど、手づくり石けんが高価なのも納得です。

ひとつひとつ存在感のある石けんが並ぶ

石けんづくり体験

2014年12月、厨さんと筆者は南三陸町歌津の伊里前商店街で偶然出逢い、それがきっかけで薬草トウキを使った手作り石けんづくりがスタートしました。
最初の出逢いで意気投合し、厨さんが地元のワカメやアカモクを使った手づくり石けん工房つくると聞いて、入谷地区で栽培している薬草トウキ(参考:南三陸町 未来の種プロジェクト http://mirainotane.jp/)を使った手作り石けんを作って欲しいと厨さんにお願いし、快諾いただきました。

その後、厨さんはトウキ石けんの試作品をつくり続けてくれていました。ある程度配合比率が固まってきたとのことで、今年4月、私自身も薬草トウキを使った石けんづくりを体験させていただきました。

ブレンドした油脂を40度強まで湯煎

まずは、カセイソーダを少しずつ水に溶かします。ガスが出るので換気扇の下での作業です。次に、ブレンドした油脂をいれて40度強まで湯煎をします。黄色のブレンド油脂に水に溶かしたカセイソーダをゆっくりかき混ぜると、化学反応で白色に変化し、次第に重くなっていきます。

石けんを型に流し込む及川さん

次に、エッセンシャルオイルのブレンドとトウキパウダーや混ぜて、泡だて器でさらにかき混ぜます。液体をすくって糸のような感覚がでると、石けん化作業は終了です。
これを型に流し込み、押し入れの発泡スチロール箱に一昼夜おいておくと、ゆっくり化学反応がおきて固まります。

翌日、型から外して1ヶ月保管することで、ゆっくりとアルカリ性を押えていきます。

お洒落にパッケージされたトウキ石けんの試作品

1ヶ月後に、完成したトウキ石けんの試作品を頂きました。
お洒落なパッケージに飾られ、まるでチョコレートのようです。

自らつくった石けん。しかも、薬草トウキは入谷で2012年から関わってきたプロジェクトの産物なので、出来上がりの石けんを手に取った時は感慨深かったです。

使うのが勿体なくて暫く眺めていましたが、石けんは生きものなので早速お風呂で使ってみました。エッセンシャルオイルとトウキ独特の香りがうまくブレンドされて、どこか懐かしくホッとする香りで、アロマ効果も感じられます。
よく泡立てて洗顔すると、及川さんの言うとおり肌がつっぱる感じがなくモチモチした感じで、保湿効果が高いのを実感します。これを使うと市販の石けんやボディソープは使えないです。

厨さんがつくる石けんは、南三陸町の豊かな自然の恵みを感じることができます。そして、石けんの本来の機能である「汚れ」を落とすだけでなく、都会の生活で蓄積したストレスも洗い流されるようです。

南三陸石けん工房の手づくり石けんは、販売・製造で薬事法の申請中で、今年秋には販売予定とのことで、今から商品化が楽しみです。現在は、手づくり石けんのワークショップを体験もできます。南三陸町に行って豊かな自然を感じながら、手づくり石けんづくりを体験し、あなただけのオリジナル石けんを作ってみてはいかがでしょうか?

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