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若き人材のための環境を考えた復興を目指す

2015.04.30

株式会社シンコー
有数の漁港のある石巻にて、創業約30年を迎える水産加工業者。主力製品は、切り身魚(タラ、カレイ、金目鯛等)となるが、常に顧客が求める商品開発を目指し、いかに付加価値をつけてご満足いただけるかという事を考えながら、従業員一同気持ちを込めて加工を行っています。主な取引先としては、外食産業、生協、らでぃっしゅぼーや(干物くらぶ)などがあります。

石巻の復興のため帰郷を決心

株式会社シンコー社長の丹野耕太郎さんの息子である丹野泰輔さんは、震災当時は東京でサラリーマンをしていました。震災当日に丹野社長が東京へ出張をしていたこともあり、ふたりはお互いに連絡を取り、石巻へと向かいます。
東北新幹線は復旧していなかったため、北陸新幹線で新潟まで行き、そこからレンタカーを借り、物資を詰められるだけ詰めて車を走らせました。石巻に到着をしたのは震災から2日後の日曜日の夜遅くでした。
港は根こそぎ津波に持っていかれましたが、港から少し離れている渡波地区にあった工場は無事でした。しかし、無事とは言え、1階部分は津波の被害を受け、機械は水につかり、修理をしないと使えない状態。そのような状況の中、父でもある丹野社長の「今後もやっていく。」という強い意志を確認した泰輔さんは、
「自分も石巻に戻って、復興のために頑張るしかない。」
と、地元石巻へ戻る決心をし、東京の会社を退職し、シンコーへ入社しました。

震災直後の話をする丹野泰輔さん

商品を安定供給するための苦肉の決断

これからも事業を継続していくという中で、どうしても、ぬぐうことのできない大きな不安要素がありました。それは、今回の大震災は、三陸沖を震源とするもので、以前から高い確率で起こると言われていた「宮城県沖地震」ではなかったということです。商品を安定して供給し続けていくことを考えると、いつ来るかわからない地震を考えながら、今の不安定な土地で事業再開をすることに難しさを感じたことから、内陸の登米市豊里に工場を作ることとなり、2013年に豊里工場が完成しました。
「今後は豊里工場を拠点としていくこととなるかと思いますが、やはり(石巻ではなく)内陸へ行くという事には、後ろ髪を引かれる思いでした。」と、泰輔さんは話してくれました。

津波の被害に遭ったが現在は復旧した本社工場

生産現場の改革への取り組み

現在、渡波地区にある本社工場と、豊里工場の2つが稼働しており、豊里工場では魚の委託加工を主に行っていますが、その豊里工場には、シンコーが開発した「切り身加工ロボット」があります。職人の手作業が主流の切身現場。彼らは永年の経験で独自の切り方とスピードを持っており、なかなか次世代の人材が育ちにくいのが水産加工業の悩みだったといいます。
この「切り身ロボット」は、そのような作業技術の補完や、作業負担を軽減するためだけに、機械で魚をぶつ切りにするというものではなく、"切る"という作業に機能を持たせたものとなっています。
例えば、見栄えのよく斜めに切ったりすることは当然のことながら、一定の容量でカロリー計算もできるため「何グラム、何カロリー」という表示ができるような切り方が可能なのです。
これにより、一人分の指定カロリーでの切り身づくりができ、昨今の健康志向、個人需要にあわせた商品提供が可能になりました。
「今は、マンションなどの集団住宅など、住環境の変化によって求められる調理方法も変わってきているから、できるだけ簡単に、気軽に、魚を食べてもらえる商品づくりをしていかないといけない。」と、丹野社長はいいます。

切り身加工ロボットで加工された商品

人が見向きもしなかった素材の商品化

株式会社シンコーの大きな特徴は、「今まで、人が見向きもしなかった素材の商品化」。
めかぶの、通常、捨ててしまう部分を利用した「めかぶ美人」や、皮が厚く、泥臭いために敬遠されていた、「いらこ穴子」を柔らかく、泥臭さを取り除いた、まるでウナギのように加工された商品などがあります。
これからの物としては、天然魚から取れるカルシウムを取ってもらいたいということで、今まで捨てる部分だった魚の骨に注目をし、微細カットの粉末を開発することに成功。これは、魚臭さがまったく無いため、料理や飲み物など、様々な用途での使用が期待されます。

有機低農薬野菜や無添加食品等の宅配サービスを提供する『らでぃっしゅぼうや(※)』が手がける頒布会サービス「干物くらぶ」にも、株式会社シンコーが加工した商品を提供しています。ご家庭のグリルで手軽に焼ける大きさにするなど、作り手の、手ごろに魚を食べて欲しいという思いがつまった商品になっています。
※「干物くらぶ」のご注文はらでっしゅぼーやへのご登録が必要です。
※「干物くらぶ」の他にも、「三陸産こりこりめかぶ」等、様々な商品を取り揃えています。

「きゅっきゅっ」という独特の食感の「めかぶ美人」

味も食感もうなぎのような「いらこ穴子」

次世代につなげるために

津波被害により、マイナスのスタートとなった事業を、以前の状況に戻すのではなく、新しい様々な挑戦で、新生していこうとしている株式会社シンコー。
その後ろには、さまざまな人達の協力があったといいます。
有限会社渡辺商会の渡辺文隆社長もその中のひとりです。渡辺商会は、らでぃっしゅぼーやと石巻の海産加工会社の橋渡しや、コンサルティングを長年おこなってきていました。
そんな渡辺さんが一番心配しているのが未来の水産業界。
「シンコーさんも含め、これからの水産業界を担う若い人達が(希望を持って)働いていけるための環境、システム作りが、次世代につなげるためにはとても重要だと考えています。」
と渡辺社長はいいます。
「今までの時代の人たちではやりきれていなかった部分に着目をして、どのような形にしていくかという事が、われわれ次世代の我々に課せられた課題のひとつだと思っています。」と、泰輔さん。
魚の大切さなど理解していただけるような商品づくりを理念に、それを継続できる環境を模索しながら力強く前進する若き後継者に、石巻の復興への光が見えたような気がします。

シンコーの良き協力者でもある有限会社渡辺商会の渡辺文隆社長

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