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未来の子どもたちへ伝えたい「千年希望の丘」(井口前市長インタビュー)

2014.07.10

宮城県岩沼市
宮城県の南部に位置する岩沼市は、沿岸部が大津波によって壊滅的な被害を受けましたが、震災直後、その被害の多くはあまり報道されないこともあり、報道の格差が支援の格差につながると感じた井口経明前市長は、県内市町村で最も早い8月に復興計画を策定し、復興に向けて歩む岩沼市の取組みを全国にアピールしました。この計画のなかに盛り込まれたのが、災害時の被害を最小限に食い止める丘の構想でした。

重要なのは、市民を守ることと避難場所の確保

3月11日の震災発生後、4月25日に発表された岩沼市の復興方針。沿岸部で津波被害が甚大だった6集落すべてを同じ場所でかさ上げするとなると、膨大な土砂が必要になりますが、井口前市長は沿岸部より3㎞陸側でかさ上げするという案を示し、土砂の節約を可能にしました。被災者のそばに立って見れば、いち早く元通りの生活を取り戻したい、震災前よりもよい岩沼市にしてほしいという思いがあります。スピードも大切です。
震災後、井口前市長がまず重視したのは「守る」ということでした。防潮堤は国が復旧し、河川堤防は県がかさ上げします。岩沼市では、避難路の確保を考えながら4m程度の市道のかさ上げに加えて、「千年希望の丘」事業に取り組んでいます。
松島では、島があったことによって津波の力が弱められたという事実をヒントに、岩沼市では丘を作ることで津波の力を弱めたいと考えたそうです。津波の力を弱めるためには最低でも50~80の丘が必要となりますが。これではお金も土砂も不足してしまいます。策を練った結果、「森の防潮堤構想」(植物生態学・宮脇昭氏)にたどり着きました。この方式を取り入れ、丘と丘のつなぎの部分に3メートルほど土を盛って、そこに植樹をして繁茂させるという計画です。
次に重視したのは「避難場所」でした。岩沼の沿岸部は9.9㎞あり、その間に避難場所が少ないことを考えると、丘を作ることで避難場所としても活用できるのではないかと考えたのです。実際、震災時には海浜公園の山に登って津波の難を逃れた方がいたことも、発案のきっかけになりました。

前岩沼市長 井口経明氏

岩沼市は宮城県の中央部にあり、仙台市中心部から南へ18kmに位置しています

東日本大震災の記録を残し、ガレキ(再生資材)を有効活用して作る、防災教育の場

震災後、問題となっていたのはガレキの処理でした。岩沼市では丘を作る際に、流されたコンクリートや松の木をそのまま使うことで土砂不足を補いたいと考え、関係機関との交渉を重ねました。
井口前市長は「岩沼で出たガレキは岩沼で処理して、岩沼で使うという方向で考えています。ガレキは災害廃棄物という言葉で片付けられてしまいますが、流されてしまった家の柱一本だけでも、次世代へつないでいけるような使い方をしていきたい」と話しています。津波の被害を受けた柱や梁などをそのまま使い、鎮魂の意を込めた丘が、未来永劫続いていくようにという思いを込めて、「千年希望の丘」と名付けられました。
この丘は仙台空港から近い場所にあるため、世界各国から人々が訪れることができるメモリアルパークとして、そして子どもたちが災害について学べる防災教育の場としても整備される予定です。整備中の丘を訪れてみると、「このような災害が二度とあってはならない」「いざというときには自分の身を守らなければならない」と感じることができます。岩沼市では、学校等での防災教育を徹底しており、災害が起きたときには、家から学校までの間でどこに逃げればいいのかを一人ひとりが訓練しているそうです。
また最近では、堤防の内側に樹木を植える新たな防潮堤が生まれています。さらに、これまでは吹きつける海風や塩害から守るために、防災林には松を植えてきましたが、東日本大震災では松林の倒木群による二次被害が起きたため、林野庁は広葉樹による防災林の実証実験を岩沼の海岸で開始しています。
「これからはコンクリートと樹木を併用した防潮堤が作られ、広葉樹による防災林が一般的になっていくかもしれません。そうなったときには、岩沼市はそのモデルとして、将来の災害に対して提案ができる自治体になります。岩沼の災害対策、防災対策は、岩沼だけのものではなく、日本や世界の災害対策に活かすことができるものなのです。そう考えると、「千年希望の丘」は21世紀の人類の知恵の遺産になるだろうと思います」
丘に登ると太平洋が見え、振り向くと蔵王が見えます。平常時には防災について学びながら観光できる場所になりそうです。

ガレキ(再生資材)から再生した資材を造成土として活用した千年希望の丘。今年5月に2回目の植樹祭を行い、約7万本の苗木が植えられました

岩沼の企業が開発した「千年カレー」「希望カレー」を食べて応援しよう!

「千年希望の丘」は全部で15基建設される予定です。2つは既存の丘を使い、1基は企業の寄付で完成しましたが、新たに12基の丘を作らなければなりません。半分の6基は国の予算で作られることになりましたが、残りの6基が不足してしまいます。
そこで岩沼市では、多くの団体や企業等と連携し、「千年希望の丘」をテーマにした応援商品を作りました。購入すると「千年希望の丘」事業への寄付につながるという仕組みです。岩沼市に本店を置く「にしき食品」は、レトルト食品の開発に尽力し、被災をしてもリストラなしで再開した、まさに復興の象徴といえる企業です。ここで開発されたのが、千年続く緑の丘をイメージした、ほうれん草カレーの「千年カレー」と希望の太陽をイメージしたトマトカレー「希望カレー」。岩沼の減災につながる「千年希望の丘」建設へ寄付ができる応援商品です。日本では珍しい、弾力のあるチーズ「パニール」が具材として入っていますので、ぜひ一度味わってみてください。

パッケージに「千年希望の丘」のイラストがデザインされた応援商品「千年カレー」と「希望カレー」

こちらも応援商品。「岩沼精工」が開発した精密コマ「きのこま」。沿岸部にアミタケが生える松林の風景をもう一度復活させようという気持ちから、アミタケというキノコがモチーフになっている

最後に、井口前市長からのメッセージ

「震災後は本当にお世話になりました。最近では「風化」という言葉をよく耳にしますが、被災自治体に住む私たち自身が風化してはならないと感じています。被災したことで得た教訓を忘れず、活かしていかなければなりません。
岩沼市で新たにスタートする総合計画には、「自助、共助、公助」という言葉が入っています。これまでは行政が助けるのがあたり前でしたが、「3日分の食料は自分で備蓄する」「自分の命は自分で守る」など、そういったことを徹底していく必要があります。
震災から3年が経過した今、岩沼市も頑張っていますし、東北の被災地ではそれぞれが課題を抱えながら頑張っています。被災地ではいまだに仮設住宅で暮らしている方、苦労している方が多いということを、全国のみなさんには知っていてほしいと思います」

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