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福島の魅力を力強く伝えるフランス料理店

2015.02.26

フランス料理店Hagi オーナーシェフ 萩春朋氏
フランスの田舎家を思わせる美しい外観の店の扉をあけると、そこには広々とした落ち着いた空間がひろがっていました。 福島県いわき市にある「フランス料理店Hagi」は、一日一組限定の完全予約制レストランです。オーナーシェフの萩春朋さんは、食と第一次産業をつなげる活動をしている料理人を表彰する農林水産省料理人顕彰制度・第5回「料理マスターズ」を受賞されており、福島食材の拡大・普及にひと役買っています。

一日一組、お客様への恩返し

福島県いわき市にあるフランス料理店Hagiは、いまや3ヶ月先まで予約がいっぱいな人気の一日一組限定のレストラン。
「一日一組は震災後に決めました。」と、オーナーシェフの萩さん。
震災後、それまで賑わっていた店の客足は遠のき、1日1組が来るか来ないかという状態に。
「人は危機的な状況だと、味の単純なものや濃いものを求めるというのがわかりました。だからそんなときには、フランス料理を食べようとみんな思わない。」
しばらくして震災前のお客さんが少しずつ戻ってきた時のこと。
「本当なら自分からお客さんに、震災で大丈夫でしたか?お怪我なかったですか?って聞くべきなのに、ほとんどのお客さんさんが僕に、お店大丈夫だった?怪我なかった?と気づかってくれたんです」
「ああ、俺はいったいなんだったんだろう?」
「自分がお客さんに生かされていたんだ、と気がついて恥ずかしく思ったんですね。これからはお客さんに恩返ししたいって思ったんですよ。」
夫婦二人でお店を切り盛りする中、二組三組と増えてくれるお客様。その全てのお客様に対して自分が納得した対応ができず、料理で恩返しするには一組ずつじゃないとできない、という思いが生まれたといいます。
「震災があって死の順番て、年齢じゃないんだということがよくわかった。いつ自分も死ぬかわからない。その日その日後悔しないで料理を作って生きて行こうって思いました。」
そんな思いで、萩さんは店を、「一日一組のお客様だけ」というコンセプトへと変更しました。

オーナーシェフの萩春朋さん

素材が主役の究極のお任せコース

「フランス料理店Hagi」にはメニューがありません。
「メニューメモもないんです、素材名しかなくて・・・。」
その日仕入れた素材で料理は決まります。大枠を考え、あらゆる組み合わせを考えておき、お客様の顔を見てから決める究極のお任せコース。その素材は、萩さんが自ら地元の畑に出向いて仕入れます。出向く畑は、無農薬・無化学肥料の自然農法で野菜を作るファーム白石。自然の力だけで育てられた野菜は、通常のものに比べて格段にミネラルが多く塩味(えんみ)があり、萩さんはその素材のパワー感をとても大切にしています。
「東京と同じ調理方法で出しちゃうと味が壊れるんです。鮮度がいいから、調味料の加減も違う。(距離的に)東京では、この鮮度での提供は絶対できません。」
もともと地産地消を考えてやってきた萩さん。震災後、ファーム白石に出向くようになって、畑の土を食べ、その味をべんきょうしたとか。
「茎から根っこから花まですべて食べてみると、その野菜のイメージって変わりますよ。個体の味を全部味わうといろんな味がわかるようになる。」萩さんは真摯に素材に向き合います。

白石さんの畑で野菜の話を聞かせてくれた萩シェフ

信頼関係を更に超えた真の仲間

「野菜をパッと見たときに、ビビビっとくる波長があるんです。彼の畑に行った時は彼(ファーム白石の白石さん)にお任せです。」
白石の畑で、萩さんが「白菜をローストしたいんだけど」と伝えるとサーッと素早く目利きをして新鮮なミニ白菜を収穫してくるのは、代表の白石長利さん。震災後、「目の前から地元の食材が蒸発したように消えてしまった」と振り返る萩さんは、食材探しのために出向いた『ine いわき農商工連携の会』(いわき市・福島県内の農商工連携によりこだわりのある食と体験を提案する会)で白石さんに出会います。
白石さんが収穫したトマトを食べさせてもらった萩さんは、その酸味・甘み・旨味が、いわゆるトマトらしかった昔のトマトに近いことに大変驚いたそうです。もらった青トマトで青トマトジャムを作って持っていった時から、二人の中身の濃い付き合いがはじまりました。
「単純な信頼関係なんか超えてますよ。はっきりものを言える、ほんとの仲間です。」
生産者が自分の作った素材がどうなったかをレストランに食べにくる。褒めるだけでなく意見や、厳しいことも言うし、提案もする。
「そうすることで、お互いの感度が高くなる」のだと萩さんはいいます。

いわきの農と食の牽引役となっているファーム白石の白石さんと萩シェフ

添加物は一切なしのコンフィチュールやドレッシング

素材が目の前から消えた時、畑に行って収穫の時を過ぎた野菜達がトラクターで土に混ぜ込まれるのを目の当たりにした萩さん。検査場で放射性物質は基準以下とわかっていたのでなんとか畑に戻さず残せないかと思いました。加工品をやりたいという白石さんと共に朝から晩まで話し合い、自然農法で作った野菜を無添加のドレッシングやコンフィチュールとしてお店の厨房で仕上げる体制を整えました。
「無農薬・無化学肥料の野菜たちに化学調味料なんか入れたらなんにもならない、添加物が入ってるのは作らないんですよ」試行錯誤の初期のものを、萩さんは大切にとってあり、私たちに見せてくれました。

白石さんの野菜を使った初期製品の数々

食の未来を繋いでいきたい

「生産者が喜ぶような料理を作れたら結果として料理人は幸せになる」と言う萩さん。いわきでは食に関して本当に生産者が頑張ってきた、と言います。「今度は二次産業、三次産業がもっともっと頑張らないと一次生産者が本当に楽になるときは来ないと思うんですよね。」
「みんなで食の底上げをすることによって地域生産物の価値を上げたい。料理人は○○さんではなく、○○シェフと呼び合っていわきを食の底力のある市にしたい。もっともっと僕たちが頑張って、食の未来を繋いでいきたい。」
「料理人はプロ。いわきの地元食材を守って、次の世代へと繋げていかないと。」
自身の経験を次世代へと繋いでいこうとする萩さんの周りには、切磋琢磨するいわきの料理人や生産者たちがたくさんいます。

ビニュロン(ワインの作り手)芳賀正道さん達のいわきでのワイン醸造にも深く関わっている萩シェフ

萩さんは「いわきの夢ワイン研究会」の会長でもあります。
震災前からいわきでオリジナルのワインをつくる動きがありましたが、東日本大震災で農作業を中断した時期もありましたが幾度の困難を乗り越え、2013年にいわきの農園で多くのぶどうの収穫ができました。
昨年、山梨県勝沼のワイナリーの協力もあり、「いわきの夢ワイン」が完成。2014年6月にいわき市長等多くの方の前でお披露目をすることができたそうです。
このワインは、フランス料理店hagiで味わうことができます。

2014年2月、いわき市内に「就労支援センター未来ファーム」が立ちあげました。未来ファームにワイン製造用の機器を導入し、2015年から本格的なワインづくりが始まります。

いわきのワイン

今年の野菜は特に元気です

今年の野菜は今までで一番美味しいと感じている萩さん。「そう言ったら白石さんは、生産者も元気じゃなかったからねって、野菜も元気じゃなかったんだよって言うんです(笑)」と笑みがこぼれました。震災直後、それまで丹誠込めて世話をした野菜たちを収穫することもできず、その後の風評被害に悩まされながらも、仲間と頑張って来た結果です。
生産者も元気になってきた今年の野菜は特に元気。元気な旬の野菜の本来の力を、萩さんが最大限に引き出す極上のフランス料理を、皆さんもぜひ一度体験してみはいかがですか?

趣のあるレストランの外観

落ち着いた雰囲気のエントランス

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