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古き良き伝統の継承と新しい未来への挑戦

2015.06.12

高柴デコ屋敷本家大黒屋
福島県郡山市西田長にある高柴デコ屋敷は、4軒の人形作りの工房から成る伝統ある集落です。「デコ」とは「人形」の事。ここでは遠く戦国の時代から、和紙を使った張子の人形(デコ)を制作しています。4軒のデコ屋敷の職人さんの名字は、全て「橋本」。それぞれのデコ屋敷の下には屋号がついています。

300年の歴史を誇る張子

高柴デコ屋敷の中でも最も古い家と言われている「高柴デコ屋敷本家大黒屋」。
300年の伝統を継承している21代張子職人、橋本彰一さんにお話を伺いました。
「張子は、昔は縁起物として結構作られたものなんです。昔はどこの家にもあったのではないかと思います。家の片隅に飾ってあるけど、(それが)張子だと気づかない人も多いかもしれないですね」と橋本さん。
ここ高柴村の張子作りは、伊達政宗正室愛姫の生家・三春城主田村氏四天王の一人である橋本家の祖先が、武士を離れてこの地に帰農し「大黒屋」の屋号で、信仰・縁起物の土人形作りをはじめたのが起こりといわれています。その後、土から和紙を用いる張子人形へと発展改良されました。歴史と伝統の張子技術で生みだされたものは、三春羽子板や高柴だるま、天狗や七福神の張子面など多数。その中でも、三春駒は日本三大駒のひとつで、デコ屋敷の代表的商品。可愛らしい十二支やだるまなど、橋本さんは現在もその歴史伝統を受け継ぎ守りながら、より良い製品を新たに生み出し続けています

張子の制作風景

日本三大駒のひとつの三春駒

張子職人としての復興応援

2011年3月11日、デコ屋敷を大きな揺れが襲いました。大黒屋店内の被害はそれ程でもありませんでしたが、橋本さんは、お客様やスタッフを避難誘導し、お店を閉めました。そしてその後、テレビで津波と原発事故を知ることに。逃げる覚悟で荷物をまとめたものの、なすすべもなく、しばらく何もできずにいたといいます。
時間がたち、自分の気持ちが落ち着くと、ひとつの決断へとたどりつきます。
「(郡山に残る)覚悟をきめよう。」
郡山に残った橋本さんは、その後、東北に対して、様々なジャンルの人が、それぞれにできることで、復興応援をしているのを目の当たりにし、「張子職人として何かできないだろうか?」と考えるようになります。
そこで思い浮かんだものが、伝統を継承し作っていた「祈願」の意味のある「だるま」です。一番大きな木型に和紙を張り、復興祈願のだるまを作りました。そして関東を中心に物産品の販売PRに出かける際、色々な人にメッセージを寄せ書きしてもらうために、その大だるまを持って出かけたそうです。いつしかそのだるまの表面は、隙間がなくなるくらいの寄せ書きでいっぱいに。あまりの反響の大きさにだるまを作り足したり、明治大学の学生から同じような取り組みをしたいという依頼で、だるまを作ったりする毎日でした。この時の復興祈願だるまは、今も大黒屋のシンボルとして飾られています。

寄せ書きをしてもらった復興祈願だるま

中田英寿さんのプロジェクトへの参加

その震災の年の6月、あるプロジェクトへの参加依頼が橋本さんのところに舞い込みます。
そのプロジェクトとは、元プロサッカー選手の中田英寿さんが代表理事を務める一般財団法人TAKE ACTION FOUNDATIONが立ち上げた「REVALUE NIPPON PROJECT」。
日本の物作りや伝統工芸を活性化させることを目的とし、毎回テーマを決め、テーマとなったジャンルの工芸家が、著名なアーティストやデザイナーとコラボレーションでチームを結成し作品を作るというもの。
そしてその震災の年、2011年のテーマが『和紙』だったため、その工芸家のひとりとして、橋本さんに白羽の矢がたったのです。

300年の伝統を継承している21代張子職人の橋本彰一さん

新しい事への挑戦

以前、ニュースを見てこのプロジェクトに共感を覚えていた橋本さんは、さっそく震災の年2011年の6月の第一回打ち合わせに参加します。そこには、多方面で活躍しているクリエイティブメーカーのNIGOさん、世界で活躍するインテリアコーディネーターの片山正道さん、そして中田英寿さんという豪華な顔ぶれが揃っていました。
『和紙』をテーマにした作品を作るということで、あらかじめNIGOさんと片山さんの間で決まっていたのが「等身大のシロクマ」。
プロジェクトサイドは、伝統を守りながらも新しいものに挑戦する「チャレンジ精神」を持った「応用のきく張子職人」を探していたところ、ちょうど橋本さんの存在を知ったそうです。実は橋本さんは、美術大学を卒業し、6年間福島県立高校の美術教師をしていました。しかし、父親の病気のために家業を継ぐこととなり、そこから張子づくりの修行に入ったという、張子職人としては、ちょっと変わった経歴の持ち主。

みごとに和紙で表現されたシロクマの毛並み

もともと、張子の可能性を追い求め、色々なことにチャレンジしていこうと思っていた橋本さんにとってこのプロジェクトは、願ってもないチャンスでした。
NIGOさんと片山さんの要求するシロクマの全長は2メートル40センチ。今まで張子でそこまで大きなものを作ったことはないものの、理論上作れると思っていた橋本さんはこの挑戦を快諾します。
張子用の型もとても大きくなるため、従来の木製型をやめ、加工が簡単にできる断熱素材を利用したり、シロクマのリアルな毛並みの表現にも和紙でチャレンジしたりと、さまざまな困難を克服し、いままでに見たこともない新しい和紙による張子の創造が見事完成しました。
「実はこのシロクマの作成をしていた時期は、震災の年で、風評被害のためにお客様の数が(震災前の)半分くらいで少なかったんです。だからこそ、(この作品は)時間をかけて作ることができました。ほかの人なら今後に不安があったかもしれないですが、自分には新しいものに(チャレンジすることで)希望が見える感じでした。」と橋本さんは当時を振り返ります。
「自分はすごく自信を持ったんです。(これからも)伝統を守り、そして和紙の素材の可能性をさぐっていこうと。(このプロジェクトは)話があればどんなものでも作っていこうと強く思うようになったターニングポイントでしたね。」

伝統のなかにPOPさを合わせ持つ人気商品の豆だるま

日本の伝統と未来が息づく高柴デコ屋敷

橋本さんのチャレンジ精神、伝統を守る心、豊かな想像力はとどまるところを知りません。
「和紙という日本特有の素材。あまり世界で見られない技法の張子。いまこれを、日本の伝統的な工芸品として世界にPRできないかとチャレンジしています」
伝統的な作品も作りつつ、クリスマスオーナメントやハロウィンのオブジェ作る橋本さん。「うちは機械生産ではできない一点ものも作ってほしいと言われれば何でも作ります。」お世話になった方への贈り物として、雪だるまデザインのマトリョーシカを作成するなど、商品開発も楽しみながら可能性をどんどん広げています。
「実はここはまた長寿の人も多いんです。うちの祖母は97ですけど張子仕事してます。そのおばあちゃんの作るものが、いちばん人気があって、おばあちゃんコーナーがあるんです。こっちが焼きもちやくくらいの人気です(笑)。」

橋本さんは「ここをモノづくりの里にしていきたい。芸術活動の拠点として多くの人が集まれば、いろいろなコラボが生まれると思うんです」と夢を語ってくださいました。日本の伝統と日本の未来が息づく高柴デコ屋敷。絵付け体験なども楽しむことができます。みなさんも一度足を運んでみませんか。

かわいらしい雪だるまのマトリョーシカ

みよしばあちゃんの作る張子は一番人気

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