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おもいやりの溢れる被災地の「えんがわ」

2014.02.14

おふくろの味えんがわ
2011年12月20日にオープンした仮設飲食店街「大船渡屋台村」は20 軒で構成され、昼にはランチ、夜は居酒屋として楽しむ人たちで賑わっています。さらにはイベントを開催するなど、人々の憩いの場にもなっているようです。 そんな「大船渡屋台村」の一角にある「おふくろの味えんがわ」は10名ほどでいっぱいになる小さなお店のなかに昭和の雰囲気が漂い「どことなく懐かしい」と思わせるお店です。

恐怖と寒さで震えが止まらなかった

店内のカウンターから満面の笑みで迎えてくれた看板娘の高橋さんは87歳には見えないほど元気いっぱいに「ケセン語(気仙地方の方言)」で話してくれました。
当時、立っていられないほどの地震の揺れが高橋さんを襲ったそうです。揺れが収まり自宅に戻った高橋さんは、足の踏み場もないほど散乱していた部屋のなかから「綿入れはんてん」と「かばん」を持って避難所ではなく以前から決めていた近くの山へ避難したといいます。
しかし、逃げる途中で津波の「ゴーッ」という凄まじい音と土煙、そして家や車が流されているのを目にした途端、頭が真っ白になり足が動かなくなってしまったそうです。
動けない高橋さんを近所の高校生が手を引いてくれたおかげで何とか安全な場所まで登ることができたといいます。
無事に高台に避難できた高橋さんですが、「恐怖と寒さで震えが止まらなかった。今でも思い出すと震えてしまう」と衝撃的な当時を振り返って語ってくれました。
やがて2週間ほど避難生活を送っていた高橋さんを東京で暮らしている息子が迎えに来てくれたそうです。
「近所のみんなと一緒にいる」と東京に避難することを一度は拒んだものの、息子の説得と一晩考えた末、東京へ避難する決意をしたといいます。
「みんなのように大変な思いはしなかった」と話してくれたのですが、近所の人たちと「仮設住宅が出来るまで、ここで頑張ろうね」と互いに勇気づけあった矢先だったことから苦渋の決断だったのではないでしょうか。

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鳥居の形をした大船渡屋台村の看板

高齢者を元気づけるためにも新しい挑戦

震災後、岩手を離れ東京に避難した高橋さんは半年も過ぎ「このまま東京に住むのもいいか」と考え始めていたころ、「大船渡市の仮設店舗に出店が決まったので手伝ってほしい」と娘にいわれ、さらに息子からは「得意の料理を活かして楽しみながら昼間に高齢者が集まる所をつくってみては」という言葉をかけられました。「命も助かったことだし、高齢者を元気づけるためにも、お茶やコーヒーを飲みながら話をする場所があってもいいな」と、何十年も慣れ親しんだふる里に戻ることを決意したそうです。
震災当時の話を淡々と話してくれる高橋さんですが、「飲食業は初めて。店をやるとは夢にも思わなかった」といいながら慣れた手つきでサイフォンからコーヒーを注ぐと「コーヒーを入れるのもやっと覚えたんですよ」といいながら、その場を和ませてくれました。
大船渡屋台村は仮設店舗ゆえに期限があります。息子から「えんがわという名前を絶やさないでほしい」といわれ、高橋さんは「続けていきたい気持ちはあるけれども、新しく土地を買うことも店を建てることも自分たちではどうすることもできない」と少し寂しそうに話してくれました。

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毎日、明るく元気な高橋さん

おふくろの味を愛情込めて

店内に入ると「当店おすすめ ひっつみ汁」というメニューが目にとまりました。
「ひっつみ汁」とは、小麦粉を練り固めたものを「ひっつまんで」投げ入れて作ることから、地元では「ひっつみ」と呼ばれるそうで、岩手県ではよく食べられている郷土料理だそうです。
小さな鉄鍋から溢れ出そうなほどの「ひっつみ汁」に、お茶碗いっぱいの五目御飯付き。しかも良心的な値段なので、オープンから人気の定番メニューというのは納得です。
「故郷を思い出させる味」といえばいいのだろうか、シンプルな料理だからこそ愛情とやさしさが伝わってきます。
「この安さで大丈夫なの」と、お客さんに心配されることもあるといいます。「復興の為だから利益は考えていない。みんなに喜んで食べに来てもらうのが一番嬉しい。お客さんが来るのが日々の楽しみ」と微笑みながら話す高橋さん。
サバの味噌煮や肉じゃがなどの定番メニューのほか、牡蠣フライやサンマなど季節に応じて美味しい「おふくろの味」が堪能できます。
「おふくろの味と憩い」を求めて賑わうお客さんと高橋さんの笑い声が店の外まで響いて止まない「おふくろの味えんがわ」は、これからも元気いっぱいの笑顔と得意の家庭料理を振る舞っていくことでしょう。

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人気メニュー「ひっつみ汁」

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どれもこれも、おふくろの味

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「赤いちょうちん」が目印です

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