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自然の輝きに魅了された職人

2014.07.04

螺鈿澤井工房
螺鈿(らでん)とは、あわび貝や夜光貝を漆地や木地などにのせて研き出す漆工芸の技法。 かつて簪(かんざし)職人であった澤井正道さん。職人修行で培った技術を応用して作られる螺鈿細工や沈金細工は岩手特産品コンクールをはじめとした数々の賞を受賞。繊細な作品を数多く手掛けています。

花嫁簪(かんざし)職人最後の技術保持者

螺鈿(らでん)澤井工房の澤井正道さんは東京都墨田区向島の生まれ。15歳のとき、簪(かんざし)職人の修業に入り、35歳まで主に花嫁簪の制作に携わってきました。しかし、時代の流れとともに日本髪を結う人も少なくなってきたことから需要がなくなり、簪職人から離れ、水道工事会社へ就職。仕事の合間を見ては趣味として螺鈿細工に夢中になっていました。
しかし、57歳になった頃、突然の水道会社の倒産。
職探しを続けるある日、奥さんから着物の帯止めを作ってほしいと頼まれた澤井さん。
その帯留が評判となり、数々のメディアに取り上げられ、いろんな方々に制作を依頼されるようになったことから、2009年「澤井工房」を立ち上げたそうです。
まさに波瀾万丈の人生を歩んできた澤井さんが創る「螺鈿(らでん)」は漆地や木地に夜光貝やあわび貝など、貝殻を使って装飾する技法で制作された工芸品のひとつ。木地には、伸縮しないように20年近く乾燥させた紫檀や黒檀などの硬い木を使用しています。
螺鈿澤井工房では、木地は黒檀、漆は国宝などの修復に使われる高級漆の代表でもある岩手県二戸市の浄法寺の漆。貝は特に色がきれいな岩手県重茂産のあわび貝を使用するなど、高級な素材と簪職人で培った技法を活かした美しく繊細な作品です。

花嫁簪(かんざし)職人最後の技術保持者という澤井さん

機械は駄目になったが道具さえあれば再開できる

螺鈿澤井工房として本格的に始動したのは7年ほど前。岩手県宮古市にある高台で6畳の小さなプレハブで事業を行っていました。その後、2011年1月半ば、宮古市の高浜という海の近くへ引っ越ししたものの、わずか1か月半で震災の津波によって全流出。
幸いにも3日後に控えていた展示会に持っていく作品を車に積んで避難したため、仕上がっていた作品は被害に遭わなかったと澤井さん。40年も愛用していた彫刻刀や糸鋸のつるなど数点が津波後の作業場から見つかったことも制作の再開につながったようです。

震災による停電が1週間ほどで復旧すると同時に、高台にあったプレハブで制作を再開した澤井さん。さすがに作業者も増えたこともありプレハブは狭く、宮古市で物件を探すことに。しかし、震災によって人が住めるような状態ではない町で広い場所を確保することは難しいことから現在の盛岡市高松で再スタートをきることとなった。

簪職人の手によって生み出される自然の美しさ

宮古市に思い入れがある澤井さん。特に色がきれいという茂重産のあわび貝は、螺鈿業界でも有名な素材の一つだといいます。あわび貝の貝殻は通常ピンク系統の色なのですが、茂重産のあわび貝は角度によってピンク、ブルー、グリーンと3色に変化するのが最大の特徴です。
その茂重産のあわび貝を糸鋸で小さなパーツに切り分け、ものによっては5000個ほどのパーツをピンセットや楊枝で木地に貼り付けます。そして、その上から高級漆である浄法寺漆を塗っては磨くという作業を20回から30回ほど繰り返し、ようやく完成します。なんと、一つの作品を仕上げるのに、2か月から3か月もかかるのです。
それほどまでにこだわって作られる作品は「いわて特産品コンクール」において4年連続受賞など華々しい功績を誇るほど。
すべてハンドメイドで作られる「螺鈿澤井工房」の作品は関西や関東の物産展での販売がほとんどです。
「物産展に出かけるとその間は作品が作れない。作品を作っていると販売できないのでそのバランスが難しい」と澤井さん。
一方では「自分の持っている技術の使い方によって、まだまだいろんな作品ができるんじゃないかと思っています」と、さらなる可能性も模索しているようです。「まだ試作ですが」といって、いくつかの作品を見せてもらいましたが、すべてが美しく、取材スタッフも恐る恐る手にするほどの素晴らしいものでした。
「螺鈿細工」の美しい輝きは、見る人を虜にさせる魅力を持っています。「螺鈿澤井工房」ではホームページで展示会の情報などを発信していますので、お近くで展示会が開かれる際には足を運んでいただき、ぜひこの美しさを近くでご覧になってみてはいかがでしょうか。

1年半近くかかって仕上げた、棗(なつめ)は5,000個ものパーツで作られています

簪(かんざし)の技法を用いて掘られた細やかな作品はまさに圧巻

螺鈿業界で高級ブランドとされる岩手県宮古市重茂産のあわび貝は色が鮮やか

20回から30回も漆を塗っては削る作業を繰り返すという根気のいる作業

本取材は、2014年2月26日です。
カシオペアFM「三陸さ、あべ!」との共同取材です。(音も聞けます)
http://779.jp/sanriku_reports/2439/

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