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飲んだ人が夢を抱ける『いわき夢ワイン』vol.2

2015.10.23

認定NPO法人みどりの杜福祉会
ハンディキャップのある人々が自立して暮らせるように就労支援を行う、福島県初の認定NPO法人。地元のオリジナルワイン『いわき夢ワイン』のブドウ栽培から加工までを行っているほか、農園では野菜や果樹の栽培・加工・販売も。宅配弁当の製造と販売を行う「未来キッチン」が作るお弁当は、地元の人々からおいしいと評判です。

自分が得意なものを見つけられる場所

宅配弁当もワインづくりも、決して簡単ではありません。そんな作業を、利用者の方々とどのように行っているのでしょうか。今野さんの答えはとてもシンプルで、「適材適所」。利用者一人ひとりの様子を見ていれば、何が得意なのかはわかるというのです。

「たとえば、ワインづくりはブドウの栽培から瓶の洗浄まで、完成までにさまざまな工程があります。それだけ作業の種類があるので、一人ひとりに適した仕事を割り振ることができるんです」

その結果、麻未さんは利用者の方からこんなうれしい言葉をもらったそうです。
「『ここに来てから夜眠れるようになった』という人がいました。特に農園での作業は広々とした場所で体を動かすので、日中動いた分、しっかり眠れるみたいで。ほかにも、瓶のラベル貼りが得意な人は、『ラベル貼りの仕事はまだですか?』っていつも楽しみにしているんですよ」

一緒に働く仲間がいて、得手不得手をわかってくれるスタッフがいて、自分が得意だと思える仕事がある。そんな場所で働けたら、誰だってうれしいのではないでしょうか。

収穫したブドウの選別作業

ワインに夢を託す人々

『いわき夢ワイン』は、たくさんの人々に支えられています。

今年2月、「いわき夢ワインを育てる会」の設立総会がいわき市内で開催され、多くの方が集まり、地元メディアにも大々的に報道されました。地元の飲食店や酒屋さんなどさまざまな職業の方が会員に名を連ね、8月末現在で250人以上の方が会員になるなど、たくさんの方が地元ワインに夢を膨らませています。畑の土に混ぜる貝殻は、いわき市内の割烹や料理店から無償で届けられ、苗木の植樹に必要な炭や木酢液を提供してくれているのも地元の会員企業です。

2014年の夏から麻未さんが始めたFacebookは、今年7月には「いいね!」が1,000を超え、7月にはWebサイト(http://iwakiwinery.com/index.html)も開設しました。「いわき夢ワインを育てる会」会員限定のFacebookページでは、ブドウの生育の様子などが日々アップされ、会員同士の活発なコミュニケーションが展開されています。植樹祭や収穫体験などのイベント告知もこのページを通じて案内され、イベントには多くの会員が参加しました。4月の植樹祭では、今年から栽培を始めた大久圃場に約70人の方が集まり、全員でひとつひとつ丁寧に苗木を土に植えていました。

植樹祭に参加した皆さんで集合写真

9月の収穫体験では、参加した地元の飲食店オーナーが笑顔で語ってくれました。
「昨年はここで収穫したブドウを醸造している様子を見たくて、山梨まで行ったのよ。それが今年からここで見られるようになるなんてとっても幸せ。今から出来上がりが待ち遠しい」

収穫体験イベントに参加した皆さんで集合写真

料理人という立場から、いわきの「物語」をプロデュース

もうお一人。『いわき夢ワイン』を後押しする人物として、外せない方がいます。1日1組限定のレストラン「フランス料理店Hagi」のオーナーシェフ、萩春朋さんです。

萩さんは、「いわき夢ワインを育てる会」で初代会長を務めています。農林水産省が主催する料理マスターズ(農林水産省料理人顕彰制度)の受賞者でもあり、地域の食材を発掘し、広めていくことを使命の一つとして掲げています。

「フランス料理店Hagi」オーナーシェフの萩春朋さん

「福島県の食材は、もともと幅広かった」と語る萩さん。少し前までは、子羊や鶏も地元で育てていたそうです。ところが、その多くが東日本大震災によって失われてしまいました。そんな状況で残ったのが、野菜と果樹でした。萩さんは、この大切な地元の食材を守りつつ、福島県やいわきの宝物となる新たな食材を発掘して育てていこうとしています。

「たとえば、いわきでもう一度子牛を育てようとしている人が出てきて、それじゃあブドウの搾りかすをエサに混ぜよう、という話が生まれて。そこからワインにあった牛肉をつくろうという動きにつながる。これって『物語』ですよね」

萩さんが取り組んでいることは、まさにいわきの「物語」づくりであり、その「物語」のプロデュース。
「いい食材があって、いいワインがあって、それを販売する人たちがいて。だけど、それだけでは『物語』としてお客様に届かない。そこで料理人の出番です。料理人は『物語』を一皿に盛り込み、お客様に直接提供することができる。いわきの『物語』をプロデュースするのが料理人である自分の仕事かなと思い、『いわき夢ワインを育てる会』の会長も引き受けました」

「いわき夢ワインを育てる会」設立総会で講演する萩さん

大切なのは、出処よりも"おいしい"こと

料理人という立場だからこそ、萩さんには大切にしている考えがあります。それは、食べ物は「おいしくなきゃいけない」ということ。

「今、食材を買おうと思ったら2つのパターンがあると思います。一つはモノと価格だけが見える状態で買うパターン。もう一つは、売り場に届くまでの過程が見えるパターン。どちらも間違いではないと思います。ただ、食べ物はおいしくなきゃいけない。出処がどうかよりも、おいしいことが一番大切です」

ワインについても同じです。地元のワインだから、造り手が頑張っているからという理由を超えて、「いわきのワインはおいしい!」と言われるのが一番。今後について尋ねると、「いわきにワイン文化が広がり、『いわき夢ワイン』が日本でも有数のおいしいワインになること。そのお手伝いができればいいなと思います」と語ってくれました。

広々としたキッチンでディナーの準備をする萩さん。新鮮ないわきの野菜をたっぷり使う

時を紡ぎながら深まる「物語」

2015年、前半は気温が高く、梅雨も短い期間だったため、ブドウの生育には最高の環境でしたが、後半になって秋雨が続き、日照時間が短くなった影響を受けました。『いわき夢ワイン』はゆったりとした時間の流れの中で育まれていくもの。良いこともそうでないことも、すべての経験を糧にして、また次の年へつなげていくことでしょう。

これまで、ワイン用のブドウはもとより、生食用のブドウですらほとんど栽培されていなかったいわき市でつくられる『いわき夢ワイン』。多くの人に支えられながら、新しいいわきの「物語」は始まったばかりです。これからどのような時を紡ぎながら成熟していくのか、楽しみでなりません。

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