ドコモグループ 東北復興・新生支援

笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト

  • HOMEHOME
  • 日本初! ASC国際認証を取得した南三陸町戸倉のカキ養殖

日本初! ASC国際認証を取得した南三陸町戸倉のカキ養殖

2016.06.23

宮城県漁業協同組合 志津川支所 戸倉出張所

「カキ部会」のメンバーは、20代を含めて37人。震災後「がんばる養殖復興支援事業」に取り組み、2016年3月に日本で初となる二枚貝養殖のASC(水産養殖管理協議会)国際認証を取得しました。(写真左:戸倉カキ部会 部会長の後藤清広さん/右:志津川支所の阿部富士夫さん)

豊かな海を守りながら魚介類を養殖するには

2018年までに、世界で消費される魚のおよそ半分が養殖魚になると言われています。生産効率だけを追い求めると生態系を崩しかねないので、海の恵みを守りながら養殖をするにはさまざまな工夫が必要です。

2016年3月、宮城県南三陸町戸倉地区のカキ養殖場が日本初となるASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)国際認証を取得しました。ASCは、環境や地域社会に配慮した養殖業だけが取得できる国際的な認証です。東日本大震災で特に被害の大きかった戸倉地区で、なぜ日本初の快挙が成し遂げられたのか? 戸倉出張所のカキ部会部会長である後藤さんを訪ねてお話を伺いました。

「収穫量を減らしてでも、養殖方法を根本から変えよう」

「低気圧や津波は、これまでも経験してきました。被害はいつも、だいたい全体の1割から3割程度。それで災害の規模はおおよそわかったつもりになっていたんですね」 ところが、東日本大震災で予想をはるかに超える津波がやってきました。戸倉地区の漁師たちは、資材をすべて失ってしまいます。

recommend_image1.jpg

宮城県漁業協同組合 戸倉出張所 カキ部会 部会長 後藤 清広さん

何とか養殖を再開させようと、5月に海中の調査が行われました。瓦礫だらけの海を想像していましたが、結果は「思いの外きれいだった」と後藤さん。津波は海中にたまったものを外に押し出していたのです。これなら養殖を再開できるかもしれない、と希望が湧きました。

再開にあたり、後藤さんはこれまでのやり方を変えようと決めていました。それは、震災前に戸倉地区が過密養殖で悩んでいたことが起因しています。

「以前は生産量を上げることがすべてで、質より量を目指していました。漁師同士が競うように過剰生産していたので、カキ一つ一つに栄養がしっかり行き渡らず、種付けから収穫までだいたい2〜3年かかっていました。同じ方法で再開したら、カキが育つまでまた2〜3年かかります。震災ですべて失くし、さまざまな支援をいただいてもう一度チャンスがもらえたのだから、無駄にはできない。次は1年で収穫を目指そう。1回あたりの収穫量を減らしてでも、より高品質で、自然に負荷をかけない方法を取ろうと思いました」

recommend_image2.jpg

戸倉のカキ養殖漁場

ライバル同士の漁師たちは互いに手を組めるのか?

戸倉のカキ養殖再開に向けて、漁師たちの話し合いが始まりました。過剰生産をやめて、震災前のおよそ3分の1以下まで養殖いかだを削減し、共同経営という形で運営しよう。環境やカキの品質を思えばこその決断です。この道しかない、と思いながらも、後藤さんには心配な点もありました。

「原型復旧なら国から9割補助が出る。でも、私たちは規模を縮小し、これまでのやり方を変えようとしていたので9割補助の対象からは外れてしまいます。カキ部会でも『1割の負担で原型復旧した方がいいのではないか』という声があがりました。さらに、もともと個人で仕事をしてきて、互いにライバル関係だったわれわれが急に共同経営ができるのか、という不安もありました」

そこで、被災した地域における養殖業の早期再開と生産量の回復を図るために創設された「がんばる養殖復興支援事業(水産庁補助)」を活用することにしたのです。これは、養殖業の共同化を条件に、経営再建に必要な経費を3漁期にわたって国から助成を受けられるというもの。3漁期の間で再建の基盤をつくり、4漁期目からは自立を目指す制度です。助成を受けるためには「共同」が条件なので、後藤さんたちの構想にも合致していました。

後藤さんたちは持続可能なカキ養殖を目指し3漁期の養殖復興計画を策定し、無事に助成の認定を受けることができました。こうして、限られた期間で同じ目標に取り組むことになった漁師たち。「3人や4人でも難しいことを、最後は96人が集まって取り組んだ」と言うから驚きです。

10年、20年先も安定して生産できるよう96人が一致団結し、今までとはまったく違う、新しい取り組みへの挑戦が始まったのです。

recommend_image3.jpg

南三陸戸倉っこカキのポスター。メンバーの団結力が伝わってきます。

認証取得の背景には、エコタウンを目指す南三陸町の協力も

ASC認証の申請には費用がかかります。その申請費を賄えたのは、地域資源が循環する「エコタウン」を目指す南三陸町の協力があったから。費用だけではありません。申請に必要なデータや資料の収集も、町の力なくして揃えることはできませんでした。

こうして、漁業者と町が一丸となって取り組んだ結果、日本で初めてのASC認証取得という快挙に結びつきました。養殖方法を抜本的に変えたことで、カキは1年でしっかり栄養をつけた状態で収穫できるようになり、品質は震災前よりも良くなったそう。入札価格も上がりました。

「生産量を減らしたことで、結果的に労働条件も緩和されました。以前は毎日12時間以上働いていましたが、今は朝の4時から始めて午前中には仕事が終わるようになりました」

recommend_image4.jpg

ASCの認証状。震災によって大きな打撃を受けた南三陸の漁業を復興させる新たな取り組みの証しでもります。

ASC認証によって過去の反省を忘れず、未来へ目を向ける

ASC認証を取得した目的を、後藤さんはこう振り返ります。 「品質も良くなり、入札価格も上がりました。でも、かつての反省を人は忘れてしまうんですよ。だから、ASC認証を取得することで、定期的に第三者に見て評価してもらう機会ができたのはよかったですね」

震災で一度はすべてを失った戸倉地区の漁師たち。後藤さんは、ASC認証取得という大きな挑戦の中で、「カキづくりの原点に戻ることができた」と言います。 「津波や低気圧に対し、これまでは力で対抗してきました。大きい波がくるから太いロープを用意しようとか、より大きいいかだにしようとか。でもそれが間違いだったんです。自然と戦うのではなく、海や山の恵みに感謝して共生していく。そうすることで、カキの素晴らしさを改めて感じることができました」

recommend_image5.jpg

カキの水揚げの様子。大粒の牡蠣がしっかり育っています。

ASC認証を取得したカキは「南三陸戸倉っこかき」として、今年4月からイオングループやイトーヨーカドーの各店で販売されました。ASCの存在を知り、購入したというお客様もいたそうです。また、後藤さんはASC認証の取得をきっかけに、自然の力を生かした漁業を展開していくことが将来の担い手となる子どもたちの未来への投資になるとも考えています。

「消費者の方々が商品を選ぶときは、安くて、新鮮で、身が大きいものがいいですよね。ただ、新鮮な海の幸を安く提供するために、漁業者が無理をしたり自然に負荷をかけたりしているという実態もありました。そんな状況では、若者が漁業を続けるモチベーションも生まれません。震災前は20万人くらいいた漁業者もどんどん人数が減っています。ASC認証取得で、一般の方々にも持続可能な漁業を目指している人たちに投資しよう、という意識で買ってもらって、長期的にカキ養殖が続いていくようにつなげていきたいと思います」

今後は、オリンピックでのカキ提供も視野に入れているそう。日本初のASC認証カキには、戸倉の漁師たちの努力と誇りが詰まっています。

2014.05.16

宮城県奥松島産 極上・旨牡蠣

株式会社 奥松島水産

このページをSNSでシェアする

関連記事をさがす

トップページへ戻る