ドコモグループ 東北復興・新生支援

笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト

  • HOMEHOME
  • バーベキューで福島の食を発信したい! たっちゃんのLIVE BBQ

バーベキューで福島の食を発信したい! たっちゃんのLIVE BBQ

2018.10.30

たっちゃんのLIVE BBQ

福島県田村市常葉町「川合精肉店」代表の川合達也さんが行っている出張バーベキュー。
本業の肉屋、調理師免許、そして日本バーベキュー協会上級インストラクターの資格を存分に生かし、「美味しい」「楽しい」エンターテインメント溢れるバーベキューの時間を提供しています。
写真:福島県双葉郡楢葉町でのライブバーベキューの様子。(撮影:青木裕介)

バーベキューってこんなに楽しいんだ!

「お肉は、キノコと一緒に入れておくと、焼くときに柔らかくなるんですよ」
「この太いきゅうりは、福島県会津地方の伝統野菜で、焼いてもすごい美味しいんですよ」

実況のように食材の説明をしながら、大きいナイフでかたまりの肉や野菜を目の前で鮮やかにカット。手早く焼いていく川合さんの手さばきに、子どもも大人も釘付けです。
漂ってくる美味しそうなにおい、目の前で焼き色が付き、食べごろになってくるお肉。

「焼き上がりました!」と川合さんが、新鮮な野菜の上に、よく焼けた肉をこれまた鮮やかに並べると、待ってましたとばかりにみんな自分のお皿に取り分け、あっという間に無くなります。吹き出す汗もそのままに、次の食材に取り掛かる川合さん。

「たっちゃんのLIVE BBQ」。福島県田村市の川合精肉店代表・川合達也さんが行っている出張バーベキューは、いま福島県内で引っ張りだこの人気となっています。

(写真提供:福島田んぼアートプロジェクト)

野外焼肉はバーベキューではない

川合さんが本業の肉屋と並行して出張バーベキューを始めたのは、2017年の1月。口コミで広がり、2018年は10月までで50件以上の予約が入るほどの人気です。会社の暑気払いやホームパーティーから、イベントや結婚式の二次会、ダボス会議(※)の若手メンバーが福島県を訪れた際にバーベキューをふるまったことも。

元々アウトドア好きだった川合さんが、ある日ネットサーフィンをして見つけたのが「日本バーベキュー協会」(http://www.jbbqa.org/)。
興味本位で受験したバーベキュー検定試験で、川合さんはバーベキューの持つ可能性に惹かれていきました。
「ただスライスされた肉を焼くだけだったら、『野外焼肉』で『バーベキュー』ではないという概念に衝撃を受けました。バーベキューは、『かたまりの肉をその場でシェア』して、『みんなで楽しく美味しく食べる』こと。そこに共感するとともに、それなら肉屋である自分の立場が大きな強みになると思いました」。

本業が肉屋であり、調理師免許も取得している川合さん。「肉を美味しく食べてもらいたい」という気持ちはあっても、店頭に立っているだけでは販売という一方的な形にとどまり、限界も感じていたといいます。

バーベキュー検定合格後、日本バーベキュー協会認定の上級インストラクターとなった川合さんは、2017年1月に出張バーベキューを始めます。そんな折、川合さんの父が亡くなり、出張バーベキューをしながら、川合精肉店の代表をつとめるという二足の草鞋を履くことになりました。

※世界経済フォーラムが年1回スイスで開催する年次総会で、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会して、世界経済や環境問題、貧困問題など幅広い議題で討議する会議です。

(写真提供:福島田んぼアートプロジェクト)

震災後の町の肉屋として、お店で販売する以外にできること

東日本大震災が発生した2011年3月11日、川合さんは関東で、就職活動をしている時期でした。実家である川合精肉店は、震災の翌日から営業を始めました。多くの方が避難所に身を寄せていた時期でもちろんお客さんは多くなかったものの、避難所では食べられない「あたたかい」「いつもの味」であるお総菜などが喜ばれたといいます。
川合さんは、一旦実家に戻った後、関東と福島で並行して就職活動を続け、内定の出た福島県の地方銀行に就職します。福島に戻りはしたもののすぐに実家を継がなかったのは、震災と原発事故の発生した地元で、個人店特有の事情を、川合さんも実家もよく理解していたからです。

「精肉自体の売り上げが減っている中で、風評被害で福島県産の肉の価格も大きく下がり、7年半たったいまもまだ回復していません。福島県田村市は、原発事故の影響で一部が警戒区域になり、区域外に住んでいても避難した人が多くいました。急速に人口が減っていく中で、町の肉屋だけでは限界を感じ、まず別の業界で勉強しようと思ったのです」。

銀行で3年間働いた後、実家の肉屋を継ぐため、父から精肉店の業務を学んでいく中で、店頭販売以外で肉を美味しく食べてもらう方法として、出張バーベキューに思い至ったといいます。
「店頭で販売しているだけだと、もちろんお客様から『美味しかった』と言われることはあるにしても、それだけなんですね。でもバーベキューでは、自分の店のお肉を、その場で美味しそうに食べている姿を見ることができ、美味しかった!と直接伝えてもらえる。こんなに幸せなことがあるのかと、病みつきになっていきました」。

福島県田村市常葉町「川合精肉店」店舗にて

震災、原発事故を通して気づいた、福島の食の豊かさ

肉屋である川合さんなので、当初はバーベキューメニューも肉が多かったといいます。ところが、様々な場所で開催を続けていく中で、「農家の○○さんの野菜を使ってみたら」「キノコは○○さんのところのが美味しい」と、参加者から教えてもらうことで、福島県内の農家とつながっていきます。
「農家の皆さんとつながることで、今まで意識していなかった福島県産の食材の豊かさに気づきました。せっかく使うなら、福島県産の野菜やキノコを使いたいと思い、可能な限り福島県産にこだわっています。お客さんから肉だけでなく野菜のことも聞かれるので、一生懸命伝えているうちに、『実況のように料理しながら話すってライブみたいだね』『ライブバーベキューだね』って、お客さんの声から『LIVE BBQ』という名前は生まれたんです」。
日本バーベキュー協会認定の上級インストラクターは数多くいますが、「ライブバーベキュー」と名乗ってやっているのは川合さんだけ。第一人者ともいえます。

福島県会津地方の伝統野菜「余撒(よまき)きゅうり」と福島県産水ナス

ライブバーベキューを通し、バーベキューの楽しさ、福島県産の食材の美味しさ・豊かさを伝えている川合さんですが、大震災発生時に福島にいなかったことで、後ろめたさや引け目を感じることもあったそうです。
「実際に物資やガソリンが足りなくなるようなことや、避難を経験したわけではないので、自分は経験が薄いなと思うこともありました。ですが、震災や原発事故後にできた人とのつながりで、本業の肉以外の、地元・福島の食材の豊かさを知りました。福島は山も海もあって、食材も豊かで、それを「ライブバーベキュー」という形で発信していけるというのはすごい感謝ですし、自分にとっても、本業にとっても大きなプラスになっています」。

写真提供:福島田んぼアートプロジェクト

川合さんのライブバーベキューは、ただライブで見ているだけではなく参加型。子どもたちは水鉄砲で炭火の調節をしたり、大人たちもみんなで配膳をします。

「福島の食材の良さを知ってもらう、食を楽しむ機会を増やすのはもちろん、自分のバーベキューのスキルを盗んで、仲間や家庭のバーベキューも楽しいものにしてもらえればいいなと思いますね。バーベキューはコミュニケーションツールだと思うので、それこそ、お父さんがヒーローになれるような、みんなが笑顔になれるような瞬間を、バーベキューでつくることができたらいいですね!」

(写真提供:福島田んぼアートプロジェクト)

このページをSNSでシェアする

関連記事をさがす

トップページへ戻る