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「夜の森で踊りたい」 よさこいで描くふるさとの未来

2018.06.27

チーム富岡さくらYOSAKOI

東日本大震災と福島第一原発事故により全町民が避難を余儀なくされた双葉郡富岡町(2017年4月、一部帰還困難区域を除き避難指示解除)。「チーム富岡さくらYOSAKOI」は2012年4月に、避難により継続できなくなったチームの踊り手たちが演舞する「場」をつくるために結成されました。富岡町出身で、2011年8月からいわき市に暮らす代表・伊藤孝さんを中心に活動中。また、今年の4月に8年ぶりに再開された富岡町の「さくら YOSAKOI」に向けて新たに作られた「よさこい 浜さkoi」でも活動中です。(撮影:橋本栄子)


浜通り合衆国よさこい浜さkoi 20180414 - YouTube
2018年4月14日「富岡町 桜まつり2018」
「さくらYOSAKOI」での「よさこい 浜さkoi」、『夢のチカラ』演舞動画(撮影:two)

8年ぶりに復活した「さくらYOSAKOI」

2018年4月14日、福島県双葉郡富岡町の桜の名所、夜の森(よのもり)。
東日本大震災と福島第一原発事故以来、8年ぶりに「富岡町 桜まつり2018」が開催されました。例年より早い桜前線で、当日にはすっかり葉桜になっていましたが、夜の森の「桜のトンネル」の下では、よさこいチームが集い、演舞を披露する「さくらYOSAKOI」も復活。福島県内外の18チームが、8年ぶりの夜の森で力強く舞い踊りました。

その中でひときわテンション高く異彩を放っていた、海と波しぶきの法被の集団、「よさこい 浜さkoi」。伊藤孝さんは、イベントの運営スタッフとしての役目と同時に代表を務める「チーム富岡さくらYOSAKOI」を率いながら、この「よさこい浜さkoi」の演舞を支えていました。

「さくらYOSAKOI」が始まったのは、2001年4月。当時伊藤さんは、富岡町の商工会青年部として実行委員を務めていました。「さくらYOSAKOI」には、多い年には50以上のよさこいチームが参加する、町の一大イベントでした。

例年通り桜まつりの準備を進めていた2011年3月11日に、東日本大震災が発生。実はこの年の桜まつりで、伊藤さんは実行委員長を務めることになっていました。そのため震災以降、よさこい関係の問い合わせの大部分を伊藤さんが対応することになりました。。

震災復興イベントに富岡町のよさこいチームを、というオファーが相次ぎましたが、どのチームからも全国に避難しているメンバーが集まって演舞するのは難しいという回答。10年もよさこいイベントを続けてきた富岡町の底力を見せたい、との思いから、所属チームを問わずに、踊りたい人が踊れる「場」をつくるため、伊藤さんを中心に2012年に新しく結成したのが「チーム富岡さくらYOSAKOI」でした。

『夢のチカラ』を踊る「よさこい 浜さkoi」と伊藤さん(右)(撮影:霜村真康)

きっかけは震災復興 
だんだんよさこいの力に引き寄せられる

震災前は自身が踊ることはなかったという伊藤さん。「チーム富岡さくらYOSAKOI」結成後も、はじめは「煽り」という、掛け声や合いの手を入れつつ全体を統括する役目に徹していました。ですが、あるイベント直前に踊り手の一人がけがをしてしまい代役を務めたのを機に、自身も演舞に参加するようになりました。演舞に参加していくうちによさこいの魅力にどんどん惹かれていったと言います。

今年の「さくらYOSAKOI」で、掛け声で会場を盛り上げる伊藤さん(撮影:霜村真康)

原発被災地だからって特別じゃない そう思えた「いわき光のさくらまつり」

2012年に、伊藤さんの避難先であるいわき市で始まった「いわき光のさくらまつり」。年末年始にかけて、いわき駅前大通りを富岡町夜の森の桜並木に見立て、桜色にライトアップするイベントです。伊藤さんはそのイベント内で、よさこいイベントのプロデュースを依頼されます。
当時は、避難している双葉郡の人たちと避難者を受け入れているいわき市民の間に軋轢が発生していた時期でした。そのため、富岡町のよさこいチームであることを名乗るのに後ろめたさを感じる場面もあったそうです。

ですが、ともにイベントを作り上げていく中で「富岡町だから」「避難しているから」、ということは関係なく、よさこいを通して誰もがただ一緒に楽しめる場をつくることができる、よさこいにはその力があると思うようになりました。
「今、同じ時代を生きていることは平等だと思えるようになって、だったら立場を気にしてやりたいことを我慢するのはもったいないなと。どんどん意見を出して、一緒にイベントをつくっていきました」と伊藤さん。

力強くインタビューに答える伊藤さん(撮影:森亮太)

「夜の森で踊りたい」という想いを形にしたい

2017年秋、伊藤さんは、福島県浜通り地方などで対話による場づくりを行っている「未来会議」http://miraikaigi.org/が富岡町で開催した、「浜通り合衆国」というイベントに、「チーム富岡さくらYOSAKOI」の代表として参加します。 よさこいの魅力を熱く語り、仲間とよさこい演舞を披露しました。
すると参加者から、「私もよさこいをやりたい、夜の森で踊りたい」、という多くの声が上がります。その声を受けた伊藤さんは、自分のよさこいチームとは別に、新しく「よさこい 浜さkoi」をつくりました。「浜通り合衆国」という場でつながった人たちとなら、今までのよさこいとは違う新しい踊りの輪が作れるのではという想いからでした。初心者でも、ゆるく、楽しんでよさこいを踊ってほしいと、福島県浜通りに関心がある人なら誰でも気軽に参加できるチームです。

「震災直後は放射線量も非常に高くて、また夜の森でよさこいを踊れるようになるとはとても思えなかった。だから今、夜の森が、みんなが『踊りたい!』と思ってもらえる場所になったのがとてもうれしかった」と伊藤さん。みんなの「夜の森で踊りたい」という気持ちを形にするため、翌年4月の「さくらYOSAKOI」に向け、年末から練習会をはじめました。
参加のハードルは下げつつも、よさこいとして恥ずかしくない演舞とするため、時に厳しく、辛抱強く指導に当たりました。「よさこいは、練習も含めてワクワクできる魅力があると思っているので、それが伝わればといいなと思っていました」。

(撮影:森亮太)

よさこいを通して未来を描く 気軽につながれる「場」をこれからも

今年4月に開催された「さくらYOSAKOI」では、総勢40人以上のメンバーが、チーム「よさこい 浜さkoi」として、『夢のチカラ』という曲を力強く踊りました。初めてよさこいを踊るという人がほとんどでありながら、伊藤さんの指導のおかげで本番は見事に踊りが揃い、踊り終わったメンバーには笑顔があふれていました。(当日の様子はページTOPの動画をご覧ください。)

(撮影:橋本栄子)

この日踊った『夢のチカラ』は、「さくらYOSAKOI」で出演者全員が最後に踊る「総踊り」の1曲です。震災後、支援への恩返しと元気を伝えたいという想いから、伊藤さんが震災後のよさこいのつながりの中で出会った恩師ともいえる方に依頼し、つくってもらった曲だそうです。
曲中の「ひとつこの星に生きる」という歌詞には、同じ時代に生きている、だから一緒に楽しみたいという、伊藤さんの思いが込められています。またあえて「富岡町」や「夜の森」という地名を歌詞に入れないことで、自分の住む町で元気を無くしてしまっている人たちへの応援歌としても届いてほしいという願いを込めました。

「震災以降、夜の森では踊れてなかったので、ようやくホームに戻ってきた感じですね」と話す伊藤さんの目は、未来を見つめていました。
「震災直後は、夜の森に『帰る』という気持ちだったのですが、今は夜の森から『明日につなぐ』という想いの方が強いです。今後、自分の故郷である富岡町がどのようになっていくのかはわかりませんが、自分の夢や想いを、踊りを通して表現できるよさこいで、これからもみんなで自由な未来を描いていきたいと思っています」。

「よさこい 浜さkoi」、今後は8月のいわきおどり(いわき市)、9月のふたばワールド(双葉郡浪江町)に参加予定とのこと。この夏、よさこいを通して、福島県浜通りのいまを感じてみるのもいいかも知れません。

「富岡町 桜まつり2018」では、残念ながら桜は当日には散ってしまいましたが、以下のページに満開の桜の「夜の森(よのもり)」をリポートしています。

▼行こう、東北。「住民の帰還が続く富岡町の今」
https://rainbow.nttdocomo.co.jp/tohoku/go/0009.html

チーム富岡さくらYOSAKOI

浜通り合衆国よさこいプロジェクト(よさこい 浜さkoi)
未来会議

URL
https://www.facebook.com/sakurayosakoi/
URL
https://www.facebook.com/groups/u.s.hama.yosa/
URL
http://miraikaigi.org/

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