ドコモ 東北復興・新生支援

笑顔の架け橋 Rainbowプロジェクト

  • HOMEHOME
  • つつじでまちおこし 親子で挑戦する大桑原つつじ園

つつじでまちおこし 親子で挑戦する大桑原つつじ園

2021.05.26

大桑原つつじ園

樹齢300年のつつじをはじめ、約1万株の花が咲く
須賀川市の観光植物園。
例年4月下旬~6月上旬頃に開園し、年間3万人が来場。
現当主の渡邉久記さんは25代目。
息子の優翔さんとともにつつじ園を運営しています。

600年の歴史あるつつじ園がコロナ禍で閉園の危機に

 福島県須賀川市は、大きな牡丹園とつつじ園がある、「花の観光地」です。
 しかし新型コロナウイルスの影響で、開館600年の「大桑原(おおかんばら)つつじ園」(以下、つつじ園)は2020年、
来場者の大幅減少で閉園の危機となりました。
 そんな中、つつじ園の危機を救おうと立ち上がったのが、同園の次期当主である19歳の渡邉優翔さん。
優翔さんと、現当主である父の渡邉久記さんにお話を聞きました。

002_tsutsuji.jpg

大桑原つつじ園のはじまり

 現在、つつじ園として運営している土地は、約300年前、会津藩が参勤交代で江戸から戻る途中に、休憩所として使用したと言われています。その際にお礼として「琉球」という種類のつつじをもらい、それを挿し木して増やしていったのがつつじ園の始まり。つつじ園の入口近くには、周辺の植えてあるつつじが、樹齢300年以上であることを説明する看板があります。
 つつじ園として、入園料を徴収し運営を始めたのは昭和45年ごろで、当初は入口に募金箱を置く形で始めたそうです。

003_tsutsuji.jpg

大桑原つつじ園ツイッターより

東日本大震災とつつじ園

 2011年3月の東日本大震災。須賀川市ももちろん大きな揺れに襲われましたが、つつじ園と隣接する渡邉さんの実家は大きな被害は受けず、水などのインフラも整っていたため避難はしませんでした。ですが翌日に発生した東京電力福島第一原発の水素爆発を受け、1週間ほど屋内退避をしていたそうです。須賀川市は原発から約60キロ、当時優翔さんは小学4年生。久記さんは県外への避難も考えましたが、最終的には避難せずに須賀川に留まりました。

 震災の影響が落ち着いてきたころ、久記さんは土壌や空間線量を測りながら開園準備を始めました。つつじ園内の線量はそれほど高くないこと、そして放射性物質は、食用でない、観賞用のつつじには、大きな影響がないこともわかってきたからです。例年つつじ園の開園は4月下旬。雪のためつつじの開花が遅れたこともあり、震災の年の2011年は、ゴールデンウィーク頃からの開園となりました。

004_tsutsuji.jpg

2019年5月の様子 大桑原つつじ園ツイッターより

 開園してからは、近所の人や須賀川市に避難している人たちがつつじを見に訪れました。また、6月に入ると放射能に関する情報への理解が広がり始め、「福島応援」のために県外から訪れる人も増えてきました。それでも来場者は例年の半分ほどにとどまり、販売用のつつじも余ってしまいました。
 しかし久記さんは、そのつつじで施設のつつじエリアを拡大。秋以降には補助金などもあり、来年への準備を進めていったのでした。「落ち込んでばかりはいられないという気持ちと、まず自分たちが『安全だから来てください』とPRしないと始まらないなと思っていました」、と久記さんは振り返ります。
 当時小学4年生だった優翔さんは、「親が元気ないな」とは思っていましたが、まだ手伝えることもあまりありませんでした。原発事故の影響で、学校では外遊びが禁止されていたため、家の裏山で遊んでいた、と話してくれました。

つつじの魅力とそのやりがい

 つつじは、春になると街角のあちこちで私たちの目を楽しませてくれますが、実はそこまで育てるのに時間と手間がかかる、非常にデリケートな植物なのだそうです。「つつじを育てているのは、選んだわけではなく受け継いだ部分が大きいが、つつじは同じ育て方をしても葉っぱの形も花の形も色も、育ち方が違う。日々新しい発見があり、子どもを育てているようなもの」と久記さん。新しい品種を開発するのではなく、元々あったもの、今ある資源を生かして、年々バージョンアップさせている、と話す園内には、ツツジだけで100種、3500株。ほかに、シャクヤク2000株、シャクナゲ2500株、その他の花2000株が植えられており、面積は約1万坪。園内には東屋や橋などもあり、春の花々をじっくり満喫できる空間となっています。

005_tsutsuji.jpg

大桑原つつじ園ツイッターより

次期当主、優翔さんの想い

 実は久記さんは、優翔さんに後を継いでほしいと言ったことは無かったそうです。「ただ、おじいちゃん、おばあちゃんからは、日ごろから跡を継いでほしいというようなことは言われていました。中学高校はサッカーをやっていましたが、進路を考えたときには、やるしかないかなと思って農業系を選びました」と優翔さん。現在も、東京農業大学で勉強中です。
 優翔さんは高校3年生のころから、つつじ園のSNSの運用も始めました。つつじ園の来場者は中高年の女性が多いため、特にツイッターでは、普段直接かかわらないアラサー、アラフォー世代から、ダイレクトに来場の感想や問い合わせをもらえるので、広報効果が高いと感じたそう。「直にお客さんの声や、自分たちとは違う視点からの声をもらえるのはありがたい」と手ごたえを感じていました。006_tsutsuji.jpg

大桑原つつじ園ツイッター https://twitter.com/tutuzien300/

コロナ禍とつつじ園

 2020年2月、春休みで帰省していた優翔さんは、新型コロナウイルスの流行の兆しで、今年は来場者が減るだろうと予測をしていましたが、4月7日に出された緊急事態宣言の影響は想像を大きく上回るものでした。当時、福島県では感染者はまだまだ少なかったのですが、つつじ園の来場者は関東からの観光客がメイン。ツアーのキャンセルが相次ぎました。緊急事態宣言を鑑み、つつじ園は営業の自粛、初の休園を余儀なくされました。宣言の解除に伴い、5月8日から開園時間を短縮して、2週間限定で開園しましたが、一番の見ごろであり、かき入れ時のゴールデンウィークに休園したことで、来場者は例年の4分の1ほど。2011年の東日本大震災直後の年より少なかったのです。

007_tsutsuji.jpg

ホームページに書かれた、2020年開園の案内

クラウドファンディングに挑戦

 「東日本大震災と原発事故の時は、福島や東北だけが被災地だったので応援を呼びかけることもできましたが、今回は全国なのでどうすることもできなかった」と久記さん。観光施設には、いわゆる支援金や保証がほとんどなかったのです。つつじ園のSNSを担当していた優翔さんは、インターネットでコロナ対策に対応してくれる媒体を探し、久記さんには告げず、自分の意志だけで応募しました。

 クラウドファンディングサイトに無事採択されたあとは、文章やPR方法、リターンなどもすべて優翔さんが考え、久記さんには事後了承を得る、という形で進めていったそうです。「やりたいというのを止める必要もないし、当事者である経営者としては、園の経営が経済的に厳しいということを対外的に発言できないが、子どもなら言えてしまう」と、久記さんはクラウドファンディングに関しては、優翔さんに全面的に任せました。008_tsutsuji.jpg

クラウドファンディングURL  https://camp-fire.jp/projects/view/284218

 クラウドファンディングでは、優翔さんの同級生から全く知らない人まで、多くの人から応援が集まっただけでなく、福島県内の新聞やテレビから取材が入るようになり、近所から励ましや心配の声、手渡しなどでの現金の支援も増えていきました。無事、目標金額を達成したときには、「こんなに多くの人に応援してもらえているんだ」と身の引き締まる思いがした、と優翔さん。「これからどう恩を返していけるのか、助けられた分、今度はこちらが手を差し伸べられるような活動をしていきたい」と決意を固めました。

同じ「つつじ」の町、富岡町での活動

 つつじ園では、2020年6月から、同じ福島県の富岡町で「富岡町つつじ再生プロジェクト」のサポートを行っています。これは、つつじの栽培を通して福島に貢献したいという優翔さんの思いを受けて、県内のNPO法人「元気になろう福島」が主催するものです。
 東京電力福島第二原発が立地する富岡町は、震災から7年間町への立ち入りが出来ず、2017年4月に避難指示が解除されても一部にはまだ帰還困難区域が残されています。町内のJR夜ノ森駅は「花の駅」として有名で、春にはホームに大輪のつつじが咲き誇っていました。しかし、原発事故による除染のため根を残してすべて伐採されてしまったため、2020年3月に常磐線が再開通しても、震災前のツツジの姿には戻っていません。

 「富岡町つつじ再生プロジェクト」は、富岡町内でつつじの挿し木を採取し、それを富岡に住む人たちに苗木として育ててもらい、育った苗木を町内に植える、というものです。優翔さんと久記さんは、その育成の指導をしたり、優翔さんの通う大学の学生や卒業生たちと「つつじのあるまちづくり」のアイデアを提案したりすることで、プロジェクトをサポートしています。

009_tsutsuji.jpg

富岡町民らにつつじを手渡す優翔さん

つつじでまちおこし たくさんの人が来てもらう仕掛けを

 クラウドファンディングで優翔さんが準備したリターンは、「来園チケット」や「園内のガーデニング体験」、「カメラマンが園内で家族写真を撮影」など、そのほとんどが翌年につつじ園に足を運んでもらうためのものでした。「つつじを通して地域を活性化させるために、これからも大学や企業とコラボレーションしたり、情報発信を強めたりして、助けてもらった分、還元していきたい」と優翔さん。

 今年2021年は、コロナ対策を整え、4月20日から開園しているとのこと。つつじ以外にも芍薬や石楠花など、例年6月上旬頃まで楽しめるようですので、コロナの様子を見つつ、お近くの方は感染予防対策をしっかりしたうえでの来園、遠方の方はSNSで発信されているつつじ園の様子をご覧いただき、ともに楽しみましょう。

執筆者:福島県双葉郡在住 フリーライター山根麻衣子(クロスブリッジ)

「大桑原つつじ園」

住所 福島県須賀川市大桑原竹の花13
電話 0248-76-5857/FAX 0248-76-5817
営業期間 4月下旬~6月上旬 ※期間中無休
営業時間 8:00~18:00
入園料 大人(中学生以上):500円、小学生以下無料

ホームページ
http://www.tutujien.net/

このページをSNSでシェアする

関連記事をさがす

トップページへ戻る