どら焼を通して、地域をつくる
2022.11.11

こだまのどら焼
たっぷりの餡にモチモチの求肥(ぎゅうひ)が特徴の「こだまのどら焼」。定番の餅入りどら焼はもちろん、いちごや栗などの季節の素材を使ったものも、軽い口当たりのホイップクリームを使用した生どら焼も、子どもから大人まで大人気。「お菓子づくりで、地域をつくる」と話す、3代目、児玉康さんにお話を伺いました。
求肥入りのどら焼は
仙台市民のソウルスイーツ
甘さ控えめの餡にモチモチの求肥。ボリュームたっぷりなのに、しつこくない甘さ。
仙台市若林区で70年続く「こだまのどらき」の「餅入りどら焼」は仙台のソウルスイーツとして幅広い世代に親しまれています。
仙台市若林区の本店
定番の「餅入りどら焼」。仙台の人は、
どら焼には餅が入っているものだと思っているとか。
それくらい広く親しまれているソウルスイーツです
求肥(ぎゅうひ)とは、米粉を蒸して作られる餅。こだまのどら焼の求肥は、宮城県産の米粉を蒸し、一度冷凍させたもの。この冷凍するプロセスが、独特の柔らかさを生むのだそうです。
今では定番になっているこの求肥入りの餅入りどら焼、実は偶然できた商品なのだそう。創業当時、職人さんが、たまたま工場に残っていた求肥をどら焼に合わせてみたところ、すごくおいしい!となり、すぐに商品化したのだそうです。
これが求肥(ぎゅうひ)。
宮城県産の米粉を蒸し、一度冷凍することで柔らかさをアップさせているそうです
「甘いものは人を幸せにする。初代社長の祖父からそう聞かされてきました」
そう語るのは、3代目社長、児玉 康さん。
「祖父は、甘いものがなくても生きていけるけど、甘いものがあると人は笑顔になるとよく言っていました。小さな頃からそう聞かされてきたので、僕にとってのどら焼は、単なる定番和菓子ではなく、人を幸せにするお菓子。店を引き継いだ今は、その思いがより強くなりました」
3代目社長 児玉康さん。
取材の際、どら焼カラーの黄色の法被を着てくださいました
困難なときこそ、甘いものが活躍する
こだまのどら焼本店がある仙台市若林区は、震災時、津波に被害を大きく受けた場所。店のすぐそばを走る東北道路の向こう側まで津波が押し寄せましたが、道路のおかげで店は被害を免れたそう。それでも、工場内の重い機械が跳ね上がるほどの揺れに襲われ、天井が落ちるなどの被害が。幸い、スタッフの皆さんは全員無事だったそうです。
「当時、ガスや水道はストップしていましたが、たまたま重油ボイラーを使用していたこともあって、まんじゅうなど蒸し物は一部製造できる状態になりました。ただ、商売ができる状態ではなかったので、つくった蒸し物と、店にあったどら焼の在庫を避難所に届けました」
不安な日々を過ごす避難所の皆さんが、こだまのどら焼を見て大喜びしたのは言うまでもありません。そのとき、児玉さんは、祖父から聞かされてきたことをよく理解したと話します。
「避難所のお年寄りや子どもたちがすごく喜んでくれました。大変な思いをして過ごしているのに、うちのお菓子で笑顔になってくれているのを見て、祖父が言っていたことがよくわかりました。この経験をきっかけに、地元を盛り上げたいという思いはさらに強くなりました」
児玉さんは、コロナ禍でも医療従事者に感謝を伝えるため、仙台市民病院に800個のどら焼を寄贈したそう。「疾病退散の気持ちを込めて、アマビエのイラスト入りどら焼もつくったんですよ」と話します。
「アマビエ生ドラ大納言」。軽い口当たりのホイップクリームたっぷり。
冷凍できるので贈り物にも最適です
震災の経験から、児玉さんは、お菓子が笑顔をもたらすものだと再確認。同時に、気持ちや想いを伝えるものであるという思いも強くしました。そこで、どら焼にメッセージを焼印したメッセージ入りどら焼を販売することに。すると、すぐに人気となり、現在は、祝い事や弔事の利用のほか、母の日や父の日、誕生日などの特別な日の利用、日頃の感謝を気軽に伝える際に喜ばれているそうです。
「今、僕たちがやっていることは思い出販売業だなと思います。お客様の思い出づくりのお手伝い。それをやり続けることが、こだまのどら焼のミッションなのかなと思っています」
焼印入りどら焼。特別な日だけでなく、
日頃の感謝を気軽に伝えられる手土産として、大変喜ばれているそう
こちらは、焼印ではなく、フードプリンターでメッセージを
入れる「プリントどら焼」。イラストも一緒に入れられます
地域のコミュニティづくりに貢献。 こだまランド構想も
どら焼を通して、地域のコミュニティづくりに貢献していると話す児玉さん。地元を盛り上げるため、さまざまな活動を行っています。そのうちの一つが、地元のラジオ番組への参加。
「地元の経営者の方々を読んで、経営者の言葉で採用などについて話してもらう番組をやっています。地元の若い人たちって、地域にどんな会社があるのか、あまり知らない。でも、楽しいことをやっている若い社長さんたちは大勢います。まず、そんな人たちのことを知ってもらいたい。もちろん、こだまのどら焼のことも」
そう話す児玉さん。最近は、自分が考えたこと、思ったことを、だれにでも見える形にすることが大切なのだと思っているそうです。
「僕の頭の中は僕にしかわからない。それではダメだなと思ったんです。いろんな人にわかってもらうことが必要。そんな思いから、こだまランドを作ろうかと。まだ構想段階ですが、秋保あたりで展開しようかと計画中です。どんなふうにしようか、日々、ニヤニヤしながら企画を練っています。そんな楽しみをぜひ若い人たちと共有したい。こだまのどら焼を通して、地域にワクワクを提供できたらいいなと思います」

こだまのどら焼
<本店>
〒984-0001 宮城県仙台市若林区鶴代町6-77
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