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北限のゆず生産へ注ぐ愛

2022.12.02

北限のゆず

岩手県内でも気候が温暖な陸前高田市では、安定した量のゆずを収穫できる日本最北端の地域です。陸前高田のゆずは、200年以上前から民家の庭先には、当たり前のように植えられていました。東日本大震災後、陸前高田の復興の象徴として「北限のゆず」の名でブランド化を目指した取り組みを進めています。

支えられてもうすぐ10年を迎えます

陸前高田市のゆずは、他地域のゆずより果皮が肉厚で風味、香りがいいと評価されています。
市内では古くからゆずが生息しており、地域に住む人たちの生活に根付いた柑橘の果物ではありましたが、ほとんど流通はしていませんでした。しかし、震災を機にこの地域のゆずが復興を後押しする特産物としての可能性を感じます。そんなゆずに着目し、2013年6月に発足した団体が生産者らでつくる「北限のゆず研究会」です。

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北限のゆずを使った商品開発や生産量の向上、ゆず狩りサポーターによる収穫体験なども行っています。2021年は、過去最高の10トンを超える収穫となり大豊作の年となりました。また、2023年6月には、北限のゆず研究会が創立10周年という節目を迎えます。

この10年、たくさんの方に支えられてきました。NTTドコモも研究会発足時から、ゆず栽培における日本の北限の地で育成されるゆずへの可能性を感じ、支援してきました。
応援してくれる企業、ゆずを大切に育てる生産者、収穫に参加してくれるボランティアのみなさん。関わり続けてくれる人たちがいるからこそ、北限のゆずは成長し続けられています。

農業を生業として生きるとは

この「北限のゆず」のブランド化を目指すうえで、欠かせない存在が生産者です。
現在、市内で生産者は180名ほどです。その中でも、自らの園地を北限のゆず研究会のモデル園として管理し、特Aランクのゆず出荷者として研究会から表彰歴もある、平坂隆義さんにお話しを伺いました。

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北限のゆず研究会のモデル園として生産と管理を行っている、平坂隆義さん

「最初から研究会に入っていたわけではないんだよ。他の農家仲間が、補助事業でゆずの苗木を普及するために、植栽して育てる場所を探していてね。それから『平坂さん、ゆず植える気ないですか?』と声を掛けられたんだよ。『じゃあ、やってみるかな』と返事して、平成27年に50本植栽して始めたんだよ」。

平坂さんのお宅がある陸前高田市横田町は、山に囲まれ、まちの真ん中には清流気仙川が流れています。気候が安定しており、「育たない作物がない」と言われるほど、農業をするのに適したまちです。
平坂さんも祖父の代から、長年、りんごやなしなどの果物を作って生計を立ててきました。

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「ゆずの生産は初めてだったけど、ずっと果物を作ってきた経験は生かされてるね。剪定や樹高を整えたり、悪いものを摘果して良いものをだけを育てていく。徹底した管理で育てるということは、りんごでもなしでもみんな同じだよ」。
ゆずはデリケートと話す平坂さん。手入れをしたり毎日様子を見に、365日ゆず園まで足を運ぶそうです。

「ゆずは子どもみたいなもんだな」

ゆずや果物の他にも、白菜やにんじん、大根などの野菜も育てている平坂さん。人生の半分以上を農業に捧げ、奥さんと二人三脚でここまでやってきました。その原動力は何でしょうか?

「自分たちでよくやってきたなと思うね。やっぱりね、物を育てるということは、ただ作るだけなら、最初からやらない方がいい。物を売って、お金を得るということは、それなりの責任と良いものを作るという、前向きな考えを持たないとダメだと思うんだ。1つでも立派なものを作って、喜んでもらう。それが楽しみなんだろうな」。

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大きく立派に育ったゆずを、嬉しそうに手にとる平坂さん

それはゆずの栽培でも同じとのこと。平坂さん自身、楽しんでゆずを育てていると話してくれました。

「子どもを育てているのと一緒。花が咲いて、実がなって、毎日成長を見ている。『よしよし、この時期になったら肥料をあげるから』と声をかけたりしてね。そういう気持ちを持つと、可愛いし愛情が沸くよ。ゆずだって生き物だから、健康管理をしたり、愛情を込めていかないと、期待に応えてくれないしね。」

今年の「北限のゆず」の全体の収穫量は、豊作となった去年の半分程度と予想されており、ゆずは1年おきに豊作と凶作を繰り返すと言われています。そんな中でも平坂さん曰く、「去年よりも木が大きく成長し、おおぶりな実が生った」と自信に満ち溢れた表情で教えてくれました。

平坂さんが愛情たっぷりに育てられた、立派な「北限のゆず」は、いま収穫の時期を迎えています。

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ゆず狩りに参加したご家族

ゆずに魅了されたボランティアによる、収穫がスタート!

今年は3年ぶりに、全国からゆず狩りのボランティアを募集して行われています。岩手県内や地元の人たちはもちろん、宮城県や東京都から参加された人もいました。

今回、平坂さんの園地の収穫に参加したのは、浅川さんご夫婦と伊藤さんご一家でした。それぞれ、参加してみての感想を伺ってみました。

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園地に到着してすぐ、もくもくと収穫作業をする、浅川知則さん

北上市から参加した、浅川知則さんと亜紀子さんご夫婦は、今回で6回目の参加です。知則さんのお仕事がきっかけで、ゆず狩りボランティアへ参加したそうです。
「岩手で唯一、柑橘のゆずが採れるのがここ陸前高田だけですよね。とても魅力的だと思います。去年は、義両親も誘って一緒に参加したのですが、とても楽しんでいました。また来年も参加したいですね。」yuzu8.jpg

「この時期が待ち遠しかった」と、この日を楽しみにしていた、亜紀子さん

カゴの中が採ったゆずですぐいっぱいになるほど、慣れた手つきで収穫をする姿が印象的だった、浅川さんご夫婦でした。

次に、山田町から家族4人で参加した伊藤さんご一家。元々ゆず狩りサポーターとして参加していた知人に誘われて、去年初めて2人のお子さんと一緒に参加した、伊藤香織さん。yuzu9.jpg

ずっと笑顔でゆず狩りを楽しんでいた、伊藤香織さん

「平坂さんのゆずの樹は、子どもも採りやすい高さなので、嬉しいですね。私は、このゆずの香りが大好きなんです。去年参加した時に、お土産として頂いたゆずを使って、ゆずジュースも作っちゃいました。車の中で、今年も楽しみだね~と話しながら来ました」。yuzu10.jpg

2人のお子さんも休むことなく、収穫を頑張っていました

今年初めて参加したご主人の佑貴さんは「なかなかできることではないので、いい体験ができました」。と話してくれました。yuzu11.jpg

一つ一つ丁寧に枝の処理をする、佑貴さん

ゆず狩りサポーターの多くは、リピーターでの参加が多いと聞きました。毎年、秋になるとゆずの香りを思い出し、また行きたい!!という思いになると口にしている人もいらっしゃいました。そんなゆず狩りを楽しみに待ってくれている人たちのために、今年から新たな試みとして、「園地でランチ」「収穫UPデイ」「雨天時のコンテンツ」などを実施しています。

「愛情をもって接する」、ただそれだけでいい

平坂さんのゆず狩りが行われた日は、「園地でランチ」の日。
事前に注文を受け、希望者には、研究会で用意をしたお弁当が手渡され、ゆずの香りに包まれながら、園地でお昼ご飯を楽しみます。

午前のゆず狩りを終え、平坂さんのお宅へ一旦戻ると、テーブルいっぱいにたくさんのご馳走が......。yuzu12.jpg

「美味しそう!!」と話しながら、平坂さんの奥様が作ったご馳走を取り分ける、浅川さんご夫婦

お弁当を事前に注文していた浅川ご夫婦さんも、お昼で帰る予定だった伊藤さん一家も目を丸めてビックリしていました。
ゆず狩りをしている間、平坂さんの奥様がお昼ご飯の支度をしてくれていました。尋常ではないおもてなしの量に、驚いているとこれはいつものことと話す平坂さん。yuzu13.jpg

作業を終えた後の団らんの様子。
みんなで美味しいご馳走を囲みながら、会話も弾みます

実は平坂さんのお宅では、震災後に色んなところからボランティアにくる人たちを、受け入れていたそうです。「2011年6月からボランティアさんを受け入れているね。当時は、宿泊施設も被災してないから、せっかくボランティアに来てくれても泊まるところがない状況だったんだね。そこで相談されて、『協力するよ』と言って、隣の長屋を開放して貸していたよ。1回に6~7人、1カ月に3回くらいのペースで来てたかな。多い人だと、今まで30回くらい来てる人もいるよ」。yuzu14.jpg

家中に数えきれないほどの色紙が飾られていました。
色紙には、今まで平坂さんのお宅を訪れた、たくさんの人たちから、お礼のメッセージが記されていました

ここ10年ずっと受け入れをしてきた平坂さん。日本だけではなく、海外からのボランティアの人やお客様も多いとのこと。
「今まで20か国くらいの人がきたかな。言葉が通じなくてもジェスチャーで通じるもの。来た人のことは大体覚えているよ。それだけ、親しみやすく話してくれるし、何より楽しんで帰っていくからね。」

この日、ゆず狩りに参加した人へ帰り際、「いつでも来ていいからね。また会いましょう!」と声をかけていた平坂さん。yuzu15.jpg

また会える日を楽しみに、最後にみんなで記念写真を

育てられたゆずも、そして平坂さんと出会った人たちも、みんな平坂さんから受けた愛情が忘れられず、また実をつけ平坂さんの元に戻ってきたいと思うのだなと感じました。

「北限のゆずって、『岩手でも立派なゆずが作れるんだよ』という意味も込められていると思っているよ。購入するお客さん、ゆずを使う企業やこうやって毎年ゆず狩りに来てくれるボランティアの人たちも。みんな楽しみにしてくれているからね。そういう人たちの期待に応えるためにも、いいものを作らないとね」。

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写真左:ゆず研究会事務局担当の田中大樹さん。
プライベートでも親交があり、移住してきた田中さんをいつも気にかけ、孫のように可愛がっているそうです

野菜でも果物でも、人でも。何に対しても、愛情を込めて接することの大切さを教えていただきました。
北の地で育ったゆずの樹は、平坂さんからあたたかい愛を注がれて、またたくさんの実を付け、育っていくことでしょう。

【取材・記事執筆】
一般社団法人トナリノ 吉田 ルミ子

2021.12.03

北の地で200年の歴史をもつ、「ゆず」を守る

北限のゆず研究会

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